甲子園には『魔物』が棲んでいる・・・とよく言われる。きょうの高校野球選手権決勝はまさにその典型だったかもしれない。
４対０とリードしてきた広陵にとって、８回裏は球場のあちこちに魔物が棲んでいたとしか言いようがない。
試合の終盤、劣勢だった佐賀北はあっという間に満塁のチャンスを得た。それも１アウトで。そこで押し出し四球で１点を得た。このあたりから形勢が変わってくる。
『まさか』はあった。佐賀北のバッターは副島。実力のある副島が思いっきりバットを振る。白球が空高く放物線を描きレフとスタンドに吸い込まれる。劇的な満塁ホームラン。テレビを見ていた人、甲子園の５万人の観客、だれもが想像もしていなかったあっという間の逆転劇だった。
それはドラマだ。筋道のないドラマだった。タイトルをつけるとすれば「奇跡」ともいえるミラクルドラマの高校野球決勝戦だった。
佐賀北百崎敏克監督「７回の２点で、もうダメだなと。８回９回は選手たちに、高校３年間のすべてをぶつけろと話していました」の言葉に、大観衆も大きな拍手を送っていた。
試合に勝ち負けは必ずあるもの。敗れた広陵の野村投手は打たれた瞬間、白い歯を見せていた。「やられた」という爽やかな笑顔だったような気がする。
あの、８回に魔物が集中したのかもわからないが、広陵ナインはそのほかのイニングでは本当によく頑張った。
佐賀北ナインへ、君たちはほかのチームより多くの試合を戦い（延長再試合あり）こんなチームは滅多にないだろう。これは君たちの野球に賭ける情熱に甲子園の勝利の女神が微笑んでくれた結果だ。君たちの努力はもちろんあったが、人生はこれからだ。この優勝をきっかけにこれからの長い人生を間違えないようにより一層、謙虚に努力してほしい。
初優勝おめでとう佐賀北野球部
