「週刊小説」72年2月
7Pの掌編小説である。ニ十分くらいで読み終わってしまった。
熊大の浪人生が隣りのアパートの一室に住んでいて、クワイ河
マーチと言う、ぼくの知らない曲を下手くそに吹いているそうな。
焼き芋とか果物とか、失踪した弟に似ていたことから、差し入れを
していたが、また、今年も受験を失敗して、恥ずかしかったらしく
礼も言わず、ある日、引っ越してしまった。縁談があり、相手は
妻と死に別れて二人の子持ちという、どう生きても倖せになれない
と悟った彼女は、よろしくお願いします、と手紙を書く。その翌日
福岡で北朝鮮に逃亡するというハイジャック事件が起き、その犯人
の写真の中に、弟に似た浪人生の顔を発見する、という筋立てだ。
さすがなかなかよく出来た話であり、その小さな世界に引き込まれ
てしまった。……合掌。
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