「もの食う話」所収 「群像」昭和37年10月号
非常にエロティックである。うなぎ屋というモチーフも、
見張りの男はいるが、出入り自由なのだが、とらえられて
いるところといい、とても不思議な浮遊感というか、謎め
いた感じと、うなぎが折り重なって、ぬらぬらとしている
感じが、とてもエロくて、ユーモラスでさえある。
うなぎ屋の兄妹の夫婦という、門を閉め切って釘をうってし
まっていて、出前しか取らない、というところ。
とにかく、不思議に満ちている。
それらが、ひとつの作品に収められ、パッケージされてい
ることに、ひとつの吉行淳之介というひとの手腕を見ること
ができる。
父上はモダニズム作家の吉行エイスケ、妹に小説家の吉行
理恵、俳優の吉行和子。
結核の療養中に、芥川賞受賞を知った、とある。
遠藤周作、安岡章太郎らと共に「第三の新人」と呼ばれたと
いう。
(読了日 2022年 10・16 0:40)
(鶴岡 卓哉)