(DVD)
ショコラはもともと大好きな作品。
フランスの片田舎の村に、北風と共に、風変わりな母子がやってきた。
母、ヴィアンヌは、そこにチョコレートの店を開きます。
冒頭、その村の情景は、かわいらしい家が寄り添う、おとぎ話のよう。
まさに、このストーリーは一つの寓話というか、ファンタジーなんですね。
その村は、村の戒律を厳格に守ろうとするレノ伯爵という人物が村長で、
村は彼がほとんどを取り仕切っている。
彼は、結婚もせず私生児を連れているよそ者が、気に入らない。
一方、ヴィアンヌは、人々の悩みや苦しみを見抜く洞察力をもっていて、
彼女のそっと差し出すチョコには、苦しみを癒す力があるらしい・・・。
初めは怪しみ、近寄りたがらなかった村人が
少しずつ、彼女と彼女のチョコレートに魅了されていく。
村の因習、つまり古い概念を象徴するのが、この、村長レノなんですね。
ヴィアンヌは、そこに、新しい風を吹き込み、古い概念を打ち破っていく。
さて、そこに登場するのが、また更に流れ者のジプシー、ルー。
ジョニー・デップファン必見のこの役。
ここでは奇人変人でない彼。
しかし、ご他聞にもれず、どこかアウトローな彼。
そしてセクシー。よいですよ~。
ルーと親しくなることで、また村人に疎まれてしまうヴィアンヌ。
ついには、いつも彼女の力になってくれた老女アルマンドの死、
そして、ルーの船の火災という事件が発生。
これまでは、ヴィアンヌは、常に村人に勇気と安らぎを与えるたくましい女性のイメージを通していたのですが、
ここでとうとう、彼女自身の弱さをさらけ出すことになるのです。
これまでも行く先の村で溶け込めず、転々と渡り歩いてきた。
それを彼女は「自由」と強がっていたのだけれど、実は「逃げ」であったわけです。娘、アヌークも実は流れ歩くことを嫌がっており、
そのことにも彼女は傷ついている・・・。
しかし、そのような彼女を支えるのは、彼女が勇気づけた村の人たち。
このあたりにやはり、ラッセ・ハルストレム監督のいつもの「家・家族」のテーマが垣間見えます。
理解しあえる人たちが集まればそれが家族、そこが安らぎの家。
この作品中には、多くの人たちが自己の再生を成し遂げます。
自己のプライドを守り通すことで実は自分自身を苦しめていたレノ伯爵。
夫の暴力に、ただ耐えることしかできず、精神を壊しかけていたジョセフィーヌ。
伯爵の言いなりで、いつもびくびくしていた牧師の青年。
孫ともろくに会わせてもらえないと嘆く、孤独な老女アルマンド。
厳しい母親に反発して、ダークな性格になりかけていた少年。
そして、脚の悪いカンガルーと一人遊びする娘アヌーク。
何かも、うまく行き過ぎるのは、これがファンタジーだからです。
ファンタジーはやはり、めでたし、めでたしで締めくくらなくてはね。
2000年/アメリカ/121分
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、レナ・オリン