映画と本の『たんぽぽ館』

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あの日の指輪を待つきみへ

2008年08月16日 | 映画(あ行)

北アイルランド、ベルファストの丘で、50年以上前に墜落死したアメリカ軍航空兵の結婚指輪が見つかった。
このことが以前実際にニュースとなって流れたそうです。
この映画は、これをもとにして、作られたストーリー。

時は50年ほど前にさかのぼります。
アメリカの航空学校の親友同士の三人。
テディ、ジャック、チャック。
彼らはそれぞれ美しいエセルに思いを寄せていたのですが、ハートを射止めたのはテディ。
ジャック、チャックは二人を祝福します。
しかし、3人は航空兵として戦争へ向かう。
テディは言うのです、もし、自分に万が一のことがあったら、エセルを頼むと。
・・・そうして、実際、テディは事故で亡くなってしまう。
テディに指名されていたチャックが、エセルと結婚することになるのですが、
一生テディを愛すると誓ったエセルは、チャックを受け入れられない。
娘マリーが生まれても、愛情がわかない。
同じくエセルを愛していたジャックは、
彼がテディに指名されなかったことに傷ついていて、でも、エセルを見守り続けます。
結婚は何回かしたけれど、どれも長く続かない・・・。

誰も悪くはないのに、それぞれ満たされず傷ついている。
なんて切ないのでしょう・・・。
50年前に亡くなった一人の青年のために、誰もが運命を狂わされているかのよう。

ある日、アイルランドから50年前の指輪が見つかったと、エセルに知らせが入ります。
娘マリーは、このことでこれらのいきさつをはじめて知り、ショックを受ける。
亡くなった父も、自分も、母には全く愛されていなかった。
薄々は感じていたものの、このような事実を突きつけられては・・・。
エセルは、若き日の悲恋に決着を付けるべく、アイルランドに旅立つのですが・・・。

私は、このなかで、チャックが一番気の毒な気がしてしまって・・・。
実際彼はエセルを愛していたのですが、はなから、エセルの気持ちが自分にないことを知っている。
そんな妻と人生の大半を過ごし、亡くなったのです。
ただ、娘ができたことだけが救いだったのでしょう。
妻の関心が子供に向かない分、彼が娘を愛し尽くしたようです。
こんな人生って・・・。
好きな人を妻としてずっとそばにいられたことは、幸せといっていいのでしょうか。
全く愛されていないとわかっていても。
でも、テディとの約束があるので、逃げ出すこともできない。
これって残酷ですよね。

それぞれがつらい思いを抱えている中、このストーリーの救いは、ジミー青年かな。
彼が、指輪の発見者であり、わざわざ、エセルに指輪を届けに来るのですが。
彼の、まだ子供っぽい好奇心や屈託のなさが、全体の雰囲気を和らげています。
北アイルランドの紛争も、ちょっぴり勉強になりました・・・。

50年のときの流れは残酷ですね。
あの美しいエセルや青年たちが、50年経ったら見る影がない。
(無論、映画は別人が演じているわけですが)
50年経ったら、永遠の愛も恋もあったもんじゃない・・といってしまったら、ミもフタもありませんかね。
でもこの映画のように、気持ちはそのままなんですね。
これくらいの年になると、それは良くわかります。
いくつなっても、初恋の思い出はやはり甘く切なかったりしますもんねえ。

2007年/イギリス・カナダ・アメリカ/118分
監督:リチャード・アッテンボロー
出演:シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、ミーシャ・バートン

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