映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

この森で、天使はバスを降りた

2008年08月26日 | 映画(か行)
この森で、天使はバスを降りた

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(DVD)
まさに、ヒューマンドラマです。
ドラマとはこうあるべき、の見本みたいな。
主人公は5年の刑期を終え、出所した若い女性パーシー。
メイン州のさびれた町に降り立ちました。
そこで、ハナの営む小さなレストラン”スピットファイア・グリル”に職を得ます。
小さな町なので、よそ者でしかも前科ものということで、なかなか町の人に溶け込めません。
彼女自身も、ついとげとげしい態度になってしまっていたのですが、それでも少しずつなじんでいきます。

彼女の犯した罪は傷害致死ということなのですが、
一体誰をどうしてそのような状況になってしまったのか、
それは最後に明かされます。
これには大変痛ましい事情があって、単に殺人犯と、呼べるものではないんですね。

この作品ではいくつかの気になる事象が同時進行していくのです。
レストランの裏庭に、缶詰など食料を置いておくと、夜中に誰かが人知れず持っていく、という謎。
ハナの甥、ネイハムの高慢な性格。初めから、パーシーに敵意を抱いている・・・いやな予感。
店を売りに出すためにはじめた作文コンクールの行方は?
ハナの一人息子イーライは、ベトナム戦争で戦死したというのだが・・・?

これらが、終盤一気にからみあって謎がとけていく、ここが見事です。
しかし、そのためには一つの大きな犠牲が必要でした・・・。
まさか、このようなラストとは思わなかったので、これもまたショック。
とにかくいろいろな面で揺さぶられてしまう作品なんですね。

こんな中で、ネイハムの妻が、いつもネイハムから無能扱いされているけれども、
レストランを手伝うようになり、自信を取り戻していく。
ここのところはとても好きでした。
そして、パーシーがつらい出来事を乗り越えて、前向きに誠実に生きようとするその姿勢も、もちろん。

また、ここに出てきた「作文コンクール」というのには興味を惹かれます。
たとえば、売りたい店、売りたい家があるとして、
でもなかなか買い手が見つからない。
そんなときに、「作文コンクール」として、作文を募集するのです。
最優秀者には賞品として無料でその店を譲る。
ここで、ミソなのは、応募料金として、一人につきいくらか必ず出してもらうということ。
この映画では100ドルでした。
およそ1万円くらい、とすれば確かに高いですけれど、
うまくすればそれだけで店が一軒手に入っちゃうということなので、応募する人は多いはず。
人数分の儲けはあるわけです。
すごく面白いシステムだと思いました。
日本ではあまり聞いたことがありませんね?

1996年/アメリカ/116分
監督:リー・デイヴィッド・ズロートフ
出演:アリソン・エリオット、エレン・バースティン、マーシャ・ゲイハーデン、ウィル・パットマン