「僕の妻はエイリアン」 泉 流星 新潮文庫
「高機能自閉症」の妻との結婚生活を綴ったノンフィクション。
「妻」とはしばしば会話がかみ合わなく、よく喧嘩になる。
「個性的」を通り越し、周囲の目を忘れたかのような独特の行動。
まるで地球人に化けた異星人のよう。
やがて、「妻」はアスペルガー症候群であることが判明。
疑問は氷解したものの・・・。
アスペルガー症候群とは。
知的障害がなく、言葉も良く使えるけれど、自閉症独特の特徴を持っている人。
その自閉症独特の特徴とは・・・
★社会性の問題
(社会の中でうまくやっていくことが困難)
★コミュニケーションの問題
(人と心を通わせ、スムーズに意思疎通をすることが困難)
★こだわりや、常同行動
(特定の物事に強い執着を示し、常に一定の行動パターンを守った生活を好む)
これは生まれつきの脳の仕組み、働きで生じること。
彼女は知能はむしろ通常より高いくらいですが、
子供の頃から、変わった子・わがままな子と言われ、いじめられたこともあったとか。
そもそも、当時このような「高機能自閉症」等という言葉もなかったわけです。
それが結婚生活もあまりにもうまくいかず、アルコール依存症にまでなったりする。
彼女は自分自身、この違和感の正体を突きとめるべく、
さまざまな本や資料を読みあさり、高機能自閉症という症状に自分がぴったり重なることを発見する。
専門科医に詳しく検査してもらって、ようやくそのことが確認できた。
・・だからといって治療法があるわけではありません。
けれど、どうしても人とうまく付き合えないのは、
自分がわがままだとか、ダメな人だからではなくて、
脳の仕組みが一般の人とは違うからなんだと、
そう思うことでずいぶん楽になったそうです。
さて、この本は、自閉症の妻を持った夫が書いたという想定になっているのですが、
実は、妻本人が夫の視点で書いたというややこしい話。
それが、最後の方の後書きで判明して、私は驚いてしまいました。
だって、人の気持ちを推し量ることができないのが、自閉症の特徴でもあるわけなんですよ。
それが見事に、夫の立場に成りすましていて、私はぜんぜん気付かなかった。
これは彼女のとてつもない努力の成果のようなのです。
エイリアンが地球人のなかで摩擦を起さないで生活するために、
必死で彼女は学習し、努めている。
文章自体はユーモアにも満ちていて、すごく読みやすいですし。
こういう形の障害もあるということを、多くの人が知っておいた方がいいと思いました。
こういうことを知っていれば私たちも、もっとうまく彼ら、彼女らと付き合えそうな気がします。
アスペルガー症候群を扱った映画で「モーツァルトとクジラ」というのがありまして、
この本を読んでからなら、よりいっそう理解が進むと思います。
アスペルガー症候群の青年のちょっぴりせつないラブストーリー。
お勧めですよ。
満足度★★★★★