(DVD)
実は何も内容を知らないで見始めたのですが、これって結構掘り出しものでした。
アメリカに住むユダヤ人青年、ジョナサンは、幼い頃から家族にまつわるいろいろなものを黙々と収集してきていました。
ある日祖母が亡くなる前に、一枚の写真を渡されます。
それは亡き祖父が若い頃、故郷のウクライナで、命の恩人の女性とともに写った写真。
彼はウクライナへと旅立ち、その、トラキムブロドという村を訪ねることにしました。
さて、こちらはウクライナ。
アメリカ人の観光客を案内している一家。
ブロークンな英語通訳の青年アレックスと、
その気難しい祖父、そして、一匹の凶暴な犬。
この3人と一匹のロードムービーが始まります。
なんともユーモラスで、とぼけた味がある。
・・・この軽妙な珍道中を描く作品かと思ったら、
ところが終盤、ドンと核心を突く重いテーマが待ち受けていまして、感動します。
まず、めざすトラキムブロドが見つからない。
地図にも載っていないし、近辺と思われる土地の人々に聞いてもわからない。
それは、今はもうなくなってしまった村・・・。
かつてユダヤ人の村で、ナチスドイツにほぼ全員虐殺されて消えてしまった村だったのです。
今は石碑が残るだけのその村。
それは、ようやく探し当てた写真の女性の姉によって語られます。
広大なひまわり畑の中に一人住む老女。
彼女はその村の思い出の品をを大切にコレクションしていました。
ジョナサンのコレクションのルーツがここにあったという驚き。
このひまわり畑が、なんともいえませんね。
花自体は明るいのですが、かつてあった不幸な歴史を思うと、なんともいえない切なさがある。
ソフィア・ローレンもちょこっと思い出したりして。
あれはまた別の哀愁。
これは「さとうきび畑」の歌の感慨に近いでしょうか。
広い畑に、今もなくなった大勢の人々の悲しい思いが漂っているような・・・。
そしてまた、さらに、もう一つの大きな驚きがあるのですが、これはネタばらしなしにしておきましょう・・・。
この作品の監督リーブ・シュライバーは俳優さんですね。
割といい感じの俳優なんですよ。
主役以外、あまり名前を覚えられない私ですが、なぜか印象に残っているという・・・。
それから、この映画は、イライジャ・ウッド主演ということで、
どうも「ロード・オブ・ザ・リング」を意識しているようです。
「第一章 旅の始まり・・・」(すみません、実際の題名はよく覚えていないので、インチキです)なんて章立てがあったり、
「この指輪があなたたちを呼んだのです」なんて、セリフがあったり。
そういうことを踏まえて見ても、楽しい作品です。
2005年/アメリカ/105分
監督:リーブ・シュライバー
出演:イライジャ・ウッド、ユージン・ハッツ、ボリス・レスキン、ラリッサ・ローレッド