空の中 (角川文庫 あ 48-1) 有川 浩 角川グループパブリッシング このアイテムの詳細を見る |
この本は、有川 浩、まだ初期の作品ですね。
そのせいか、なんだかまだ完成されていない気がしました。
空中2万メートルに、謎の巨大生物「白鯨」がいる。
その単体生物は、人類の歴史よりはるか以前からそこにいるらしい。
自衛隊機が立て続けにその生物と接触し、事故を起したことで、ようやくその存在が発見された・・・、と、この想定はとても面白かった。
これって、なんだか、少し前に読んだ「深海のYrr」に似ています。
そちらは海底で独自の進化を経て、人類とは全く別の「意識」を持つようになった、これも単体生物で、時には無数に分裂も・・・。
海と空の違いはあれど、良く似ている。
しかし、スケールが、やはりあちらの方がすごいですけど・・・。
ここには二組の男女が主な登場人物となっていまして、
片や、女性パイロットと航空技師。
こちらが、「白鯨」本体であるディックと交信。
もう一方が、この「白鯨」から剥がれ落ちた小さな個体フェイクを拾い、世話をする高校生の男女。
彼らがまた、反発しあいながらも、お互い意識して、ベタ甘な関係に・・・
と、まあ、それはいつものことなのでいいのです。
そこが、この著者のいいところなわけで・・・。
そして、登場人物の論議の応酬。
まあ、これもいつものことではありますね。
でも、ここに出てくる瞬という少年は、主人公に据えるにはあまりにも未熟。
私はもともと、こんな論議のための論議は苦手ですけどね。
この子が、未熟な青臭い論理を抱えて、そのまま行動しちゃうところが、なんだか気になってしまって・・・。
その、成長を描いた、なんていったら、怒ります。
初めから、間違いと自分でわかっているのだから、そこで正せば良し。
これを最後まで引っ張るのはどう考えても不自然。
論理以前の問題のような気がする・・・。
材料が良かっただけに、この展開が、なんだか残念でした。
満足度★★★