映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ウォンテッド

2008年09月22日 | 映画(あ行)

特別見たいと思った作品ではないのですが、都合の良い時間帯では、これくらいしかなかったので・・・。
この監督は大変人気を誇るロシア人監督ですね。
それをハリウッドが引っぱってきて作った作品。
だから映像的には確かにすごかったです。
眉間にタテジワの強烈にクールなアンジェリーナ・ジョリー。
ど派手なカーチェイス。
脅威のスローモーション映像。
これは主人公ウェスリーがアドレナリン大放出で、意識が超人的に早く回転。
結果、動いているものが静止しているほどにスローモーに見える。
こういう映像なのですね。
私は、サイボーグ009が、奥歯の加速装置のスイッチを入れたときのことを連想しました。
(なんてマニアック!!)
弾丸が、カーブ?!
そんなのありかい!
と思いつつ、まあそういう映画なんだから、それも許す。

でも、なんだかこのストーリー自体がどうしても好きになれませんでした。
コミックが原作のようですね。
だからストーリーをせめても仕方ないですが・・・。

主人公ウェスリーはつまらない会社でつまらない仕事をし、
いやな上司に嫌味を言われ、友人には彼女に手を出され・・・、
なんとも冴えない日常。
まあ、「その他大勢」という役どころですね。
ところがある日突然、「フラタニティ」という謎の暗殺組織に呼び出される。
優秀な暗殺者だったウェスリーの父が裏切り者に殺され、
その魔の手がウェスリーにも迫っている。
仲間に加わり暗殺者としての仕事をするように、と。
拷問まがいの特訓を受けつつ、めきめきとその能力を発揮し始め、
生き生きと輝いてくるウェスリー。
この組織は1000年前から続いているそうで、
その暗殺のターゲットを決めるのがなんと、織り機。
「運命を織る機械」とでも言いましょうか、
織られた布に、神の意思が暗号となって織り込まれている! 
(この怪しげな設定は実は結構気に入っています・・・。) 
「1人を倒せば1000人が助かる。」
それが彼らの理論。
それなら、ヒトラーをぜひ倒して欲しかった・・・。

しかし、所詮彼らは暗殺者なのです。
正義の味方ではない。
いわば彼らの内紛のために、列車が谷底に転落したりする。
大惨事ですよ。
しかし、彼らは自分だけ助かって、他の乗客はどうなっても知らんふり。
ウェスリーは任務を果たすために、
彼を助けようとする男に銃弾を打ち込み、もろともに谷底へ落ちることもいとわない。
はあ~? 
それ以前にすることがあるだろー、といいたくなる。
あのハンコックでさえ曲がりなりにも人助けはするのにね・・・。
結局、彼らの暴走により、余計死者が増えている・・・。
ああ、だからこそ、織り機からのあの「指令」が降りていたわけで・・・。
そこのところは妙に理屈にあっていたりする。
だとすると、やはり死ぬべきなのは「彼」なのではないでしょうか。

一番最後にウェスリーが満面の笑みを浮かべますね。
あれは、私には悪魔の笑みに見えてしまったのですが・・・。

結局このストーリーは、毎日がつまらなくて惨めで、
自分の存在価値が見出せない人の抱いた「夢」にしか過ぎない気がします。
やたら出てくる暴力シーンもいただけないし・・・。
これを単に「すごくかっこよかった、面白かった」と言えない自分に、
むしろほっとしている。
こんな映画でこんなことを言うのはヤボと知りつつ、本音でした・・・。

「つぐない」で、あんなにいい演技をしたジェームズ・マカボイに、
こんな役はやって欲しくなかった・・・。

2008年/アメリカ/110分
監督:ティムール・ベクマンベトフ
出演:ジェームズ・マカボイ、モーガン・フリーマン、アンジェリーナ・ジョリー、テレンス・スタンプ

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