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深泥丘奇談 (幽BOOKS) 綾辻行人 メディアファクトリー このアイテムの詳細を見る |
「この世にはね、不思議なことがあるものなのです。」
このセリフを読んだら、京極夏彦ファンならきっとにやりとするでしょう。
かの、日本で一番有名な古本屋の主のセリフ、
「この世には不思議なことなどないのです。」
と、真っ向から対決するのが、この本のコンセプトということなんですね。
推理小説、特にこの著者が目指してきた本格ミステリは、論理がすべてだったわけです。
どんな不可思議な事件も、論理によって解き明かされる、と。
しかし、ここでは著者は論理は置き去りにして、
不思議で怖い異次元の京都、
そこでの作家の生活を描いています。
短編集なのかな?と思ったら、これは終始ある「作家」が語る体験談。
時間を追った連作となっています。
この「作家」は推理小説作家ということで多分、著者綾辻氏にとても近いと思われます。
冒頭作から、うっ!と思わせられるのですが、まずは「顔」。
場所は自宅に程近い「深泥丘病院」。
そもそも、この病院が怪しいのですよ・・・。
そっくりな顔の石倉という名前の3人の医師。
いつも手首に包帯を巻いている咲谷という看護師。
いつも何かしら変異に絡んでいる病院・・・。
検査入院をした深夜、彼はかすかな「ちちち・・・」というような音が気になり、その音の出所をさがす。
ようやく見つけた部屋の片隅の壁面。
白いクロスが薄茶色に変色した上、その部分がなにやら奇妙な形に盛り上がっている。
・・・人の顔?!
見てはいけないものを見たような気がして、
それ以上見ることができず、無理に眠り込む。
翌朝になれば、いやな夢を見た・・・そんな程度だったのですが、
その日、胃の検査のため、内視鏡を呑む。
その、モニター映像に写ったものは・・・
昨夜壁にあった人面と同じ・・・。
胃の中にできた人面瘡・・・。
うぎゃ~、こわいですねー。
いやですねー。
何で、こんなこと思いつくんでしょ・・・。
これなど序の口で、悪夢のような薄気味悪い話満載です。
ごく普通の日常に、ぽっかり明いた異次元へ通じる通路。
そんなものでもあるかのような、不安を感じされられます。
でも、この話は映像化しないで欲しい。
これは頭の中で想像するから怖いのであって、
映像に写し出されたら、へんにおどろおどろしすぎて、
逆に笑っちゃうかもしれない。
満足度★★★★