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ラン・ローラ・ラン ポニーキャニオン このアイテムの詳細を見る |
疾走する女、そして進化するストーリー
* * * * * * * *
恋人のマニから電話を受けたローラ。
今から20分以内に10万マルクを持っていかないと、命が危ないという。
「私がなんとかする!」電話を置いた彼女はそのまま家を飛び出し、
全速力で走りはじめる。
とにかく、ローラが疾走しまくります。
このシーンはアニメからスタートするのも楽しくて、ユニーク。
真っ赤な髪(いわゆる赤毛じゃなくて、本当に染めた赤!)で、
ベルリンの街を駆け抜ける彼女の姿はとてもインパクトがあります。
このときの音楽がまたいいのですね。
走り続ける躍動感をそのまま表現したような、緊迫感あるリズムを刻む音楽。
自転車じゃだめなの~?、と、私は思わず突っ込みを入れてしまったのですが、
映画の中でも、自転車に乗った青年が、自転車を貸そうかと申し出ても(有料!)、
彼女は無視して走り続ける。
まあ、これは走ればこそのインパクトなんですよね。やはり。
そこでまた面白いのは、このストーリーは進化するのです。
はじめ、彼女は銀行に勤める父親を頼って銀行に行くのです。
そこで父親は愛人と密な話の真っ最中。
そををジャマされた父親は逆上のあまり、
お前なんか本当の娘じゃない!と今まで告げていなかった真実を言ってしまう。
無論お金を借りられるはずもなく、
ショックを受けつつ、気丈にも彼との待ち合わせの場所に行けば、
彼は気がはやってスーパーの強盗をしている・・・。
そこに飛び込んだローラは彼の手伝いをする羽目になり・・・。
悲劇です。
言ってみればゲーム・オーバー。
さて、すると今度はまた、先ほどの自室でマニからの電話を置いたところに場面が戻る。
再び部屋を飛び出し駆け出すローラ。
やはり同じ町並みです。
しかし、わずかながらタイミングがずれていて、
微妙に始めとは違った様相が見えてくる・・・。
でも、これまた失敗に終わります。
さて3度目、やはり同じように部屋を飛び出した彼女ですが・・・。
これは、ゲームのリッセット感覚なのでしょうか。
ゲーム・オーバーの後はリセットして、前と同じ失敗を繰り返さないよう、やり直し・・・。
もしくはちょっと、バタフライ・エフェクトを思い出しました。
蝶の羽の羽ばたき一つの違いでも、その後の世界は違った様相を示すという・・・。
微妙にタイミングがずれたことで、
その後の出来事が変わってくるその有様を3つ描いたのか・・・。
いずれにしても、このユニークなストーリーはその差異を考えながら見るだけでも、楽しめます。
そして、うれしいことに3番目は意外にもラッキーな物語なのです。
それで、見終わった後の印象もなんだかハッピー。
うーん、映画の面白さって、いろいろですね。
だからやめられない。
この監督、なんだか聞いたことがあると思ったら「パフューム」でしたか・・・。
もちろん話はぜんぜん異なりますが、
なんだか、他の映画とは一味違う、そういう印象ですね。
1998年/ドイツ/81分
監督:トム・ティクヴァ
出演:フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライトロイ、ハーバート・ナップ、ニナ・ペトリ