御手洗潔対シャーロック・ホームズ (創元推理文庫 M つ 5-1) 柄刀 一 東京創元社 このアイテムの詳細を見る |
「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」 柄刀 一 創元推理文庫
この本を見るとまず、あれ?と思いますね。
御手洗潔はおなじみ島田荘司の人気NO.1キャラ。
対するのがシャーロック・ホームズでは時代が全く違います・・・。
しかも、見れば作者は柄刀 一。
これは、柄刀氏が島田荘司に奉げるパスティーシュだったのです。
パスティーシュとはすなわち・・・
広い意味でのパロディ :文体や雰囲気など、先駆者に影響を受けて作風が似ること。
御手洗潔と石岡和己の名コンビのストーリーを、その作品世界を損なわないように柄刀氏が描く。
・・・いやはや、まさに、島田氏の作品世界そのものでした。
スタイルを真似するだけではダメで、
その作品自体きちんと読み応えのあるものでなければならない、というところもきちんと押さえられています。
特に、御手洗シリーズの方は、脳科学やイギリスの伝承を下敷きとしたストーリー、
いかにも島田氏が書きそう・・・というところで、感動します。
「シリウスの雫」で語られるイギリスの古代遺跡。
そこで描写される雄大な自然がもたらす奇跡の映像・・・。
ロマンです。
そして、シャーロック・ホームズとワトスン。
なぜかこの二人は時空を通り抜けて現代の日本に現れたりする。
それがなぜか東京の街を馬車で移動したり・・・。
いや、これはぜひ横浜を舞台にして欲しかったですね。
これぞ馬車道ということで・・・。
あ、馬車道は御手洗の方でした・・・。
いつものシャーロック・ホームズの名推理、ということで、
ホームズが階下から登ってくる人の足音を聞いただけで、その人がどんな人なのかを推測します。
「身長は190センチ以上、体重80キロ、いささか運動不足の肥満した体型の男性。
自尊心が強く、やや意地っ張りなタイプ。」
さて、当人が現れてみれば、
------黒いドレスで身を包み、4・5歳ぐらいと思われる体の大きな子どもを腰のあたりに抱えている若い婦人で、
高々と30センチほど髪を結い上げ、かかとの取れたハイヒールを履いていた------
と、大外れだったりするのがとてもおかしい。
最後の中篇「巨人幻想」では、ついにこの二組のコンビが合い間見え、
推理合戦を繰り広げるという贅沢な趣向です。
さらに、この本のおいしいところは、
巻末になんと、本家島田荘司氏の特別寄稿として、
「石岡和己対ジョン・H・ワトスン」というのがある。
この二人の手紙のやり取りになっていて、始めはとても丁寧、紳士的なやり取りが、
次第に辛辣な揚げ足取りになっていく・・・というもの。
まあ、柄刀氏自身も言っているので、言っちゃいますが、
この本ではここのところが一番面白かったりする・・・。
まあ、御手洗ものが好きな方にはお勧めです。
満足度★★★★