映画と本の『たんぽぽ館』

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裸足の1500マイル

2008年11月01日 | 映画(は行)
裸足の1500マイル

アット エンタテインメント

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民族の誇りと自由をかけて

             * * * * * * * *

舞台は1931年、オーストラリア。
オーストラリアでは、先住民アボリジニの混血児を家族から隔離し、
白人社会に適応させようとする隔離・同化政策が採られていました。
これが70年代まで続いていたというのは驚きです。

14歳モリーとその妹8歳のデイジー、そして従姉妹の10歳グレイシーが、
強制的に母親の元から引き離され、寄宿舎に入れられてしまいます。
寄宿舎とは名ばかりで実のところ、収容所。
キリスト教を強いられ、英語を強制される。
決して家に帰ることは許されず、逃亡には罰が下される。

なんというか、この白人だけが優秀であるとでもいうような、
ナチスめいたその考え方には怒りを感じてしまいます。
白人の文化だけが貴重なもので、アボリジニの文化など取るに足りない野蛮なもの・・・そういう押し付けにも。
今、こんなことをいう人がいたら、一斉非難を浴びますけどね。
そうしてみると、社会はほんの少しずつでも、良い方向に向かっているのでしょうか・・・。
確かに、意識的な差別は少なくなっては来ているのでしょうが、
経済的な格差はちっとも縮まりません。


さて、本題に戻りまして、この3人はある日脱走を図ります。
目指すは故郷の母の元。
しかし、距離にして1500マイル。
すなわち2400キロ。
といっても、実感がわかないので、地図を眺めてみました。
北海道の北端稚内の宗谷岬あたりから、
ぐいーっと、鹿児島県の南端、佐多岬あたりまで直線で結ぶと考えてください。
なんと、その長さがおよそそれくらい・・・。
日本列島の長さ?!
オーストラアって広いんですね!
それを知ると、この逃避行の大変さが胸に迫ってきます。

子どもだけで何の装備も持たず、果てしない荒野を、歩き続けるしかないのです。
しかも、彼らを連れ戻そうと、追っ手も迫ってくる。
三人を率いるのは年長のモリー。
この子がまた、「生きる力」に満ちている。
挑むようなそのまなざしが印象的です。
オーストラリアの広大な台地に、ウサギよけのフェンスが縦断して作られている。
それに添ってゆけばたどり着ける。
大変頭の良い子なのです。
時には足跡を消す工夫をし、
時には地元のアボリジニに食料を分けてもらいながら、歩き続けて90日。
終始続く広大な荒野の光景が目に焼きついています。
彼女らは単に母の元を目指したのではない。
民族の誇りと自由をかけて歩き続けたんですねえ・・・。
これはまた、彼女たちが、アボリジニの村に生まれ育ったからこそ、
このようなたくましさを身に付けていたわけです。
白人の子なら、こうは行きません。
そしてもちろん、日本に住む私たちも・・・。

今は昔の物語ですが、語り継がねばならない物語でもあります。
エアーズロックで愛を叫んでる場合じゃないですよ。
このような歴史も知っていなければ・・・。

2002年/オーストラリア/94分
監督:フィリップ・ノイス
出演:エヴァーリン・サンピ、ローラ・モナガン、ティアナ・サンズベリー、ケネス・ブラナー