映画と本の『たんぽぽ館』

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悪党たちは千里を走る

2008年11月19日 | 本(ミステリ)
悪党たちは千里を走る (集英社文庫 ぬ 1-3)
貫井 徳郎
集英社

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「悪党たちは千里を走る」 貫井徳郎 集英社文庫

トントンとテンポもよく、キャラクターも魅力的なコメディ仕立てのコン・ストーリー。
高杉と園部はしょぼい仕事で暮らしを立てる詐欺師コンビ。
ある日、徳川氏の埋蔵金の話を持ち込んだ先で、
これまた別の美人詐欺師、菜摘子と出会う。
この3人がなぜか手を組み、ある資産家の飼い犬の誘拐を企てた。
ところが、なぜかそこにその家の息子巧が現れ、
犬なんかより、僕を誘拐してくれと言う。

巧は生意気な小学生なんですが、彼らでも舌をまく頭の良さ。
この四人の会話は辛らつでありながら、ほんわかしてくる、いい感じです。
なんだかんだといいながらも、次第に信頼感ができてくるんですね。
でも、まあ、ここまではありそうな話。
狂言誘拐。
ところがここにはさらに意外な展開が待ち受けていまして、
彼らがその狂言誘拐を開始するより先に、
巧が何者かによって、本当に誘拐されてしまった!

普通こういうストーリーでは、
真犯人はそれ以前のストーリーの中に必ず登場しているんですね。
いきなり、全く知らない第3者を犯人に仕立てるというのは、あまりない。
それで、これってやっぱり、はじめから巧君が仕掛けた罠???とも思えたり。
でも、それにしては巧君はいい感じすぎて、そういうワルにはやはり見えないし、
そうであって欲しくない、という気持ちが強くなってきます。
心配するうちに、巧君の視点の描写が始まり、
とにかく、未知の犯人に本当に誘拐されてしまったことがわかり、ほっとする。
(ほっとしてる場合じゃないって!)

しかーし、さらに読み進めばやはり、定石どおり。
真犯人はすでに登場していた!!
ほとんど忘れ去っていた人物ではあるのですが、
いわれてみれば、そう不自然でもない。

いや~、実に面白い!
そして、ヘタレに見えた高杉は、
最後に巧のために必死に頭を回転させ、アクションする! 
痛快です。
普段あまりミステリを読まない方にもこれはお勧めできます。
死体は出てきませんし・・・。

満足度★★★★★