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悩む力 (集英社新書 444C) 姜尚中 集英社 このアイテムの詳細を見る |
情報ネットワークや市場経済の拡大。
世界のありようが大きく変わってきています。
こんな中で多くの人々は何を信じていいのかわからず、大変なストレスの中にいる。
この本では悩みを解消するというよりは、
「中途半端でなく、とことん悩んで突き抜けろ」といっています。
今、身の回りにあふれかえる様々な情報。
私たちはお金さえあれば何でも手に入るし、自由。
確かに、私たちはそう思っています。
しかし、昔はそうではなかった。
宗教や身分、親から受け継ぐ職業・・・そういうものにがんじがらめで、
その中で何とか生きていくほかなかったんですね。
でも、今は、そういった縛りから解き放たれ、「自由」。
でも、この自由というのが曲者で、
まるで、広い野原の真ん中に1人で放り出されたよう。
どっちへ行ってもいいよって、一体どっちへいけばいいの???となってしまう。
だから悩んで悩んで、方向を決めればいい。
むしろ、悩まない方が変だとすら思えてきますね。
・・・ちょっと、能天気な自分を反省したりもします。
『何のために「働く」のか』という章にはこんなことが書いてありました。
何のために働くのか。
もちろんお金を得て生活するため、ではあるのですが、
自分が生きている意味を確かめるため、そんな意味もあるようです。
人は、他者とのつながりの中で始めて生きていけるんですね。
人と何のつながりもない、何の役にも立っていない、という思いは、
ひどく孤独感や無力感を生みます。
働くことで、人と人とのつながりができ、ほんのちょっとでも誰かの役に立っている、
そういう実感が持てたら、生きていく張り合いになる。
だから働く。
・・・なんだかとても納得できます。
また、悩みぬいて、老いたなら、
今度はうんと横着になって、夢を果たせといっています。
「最高の人生の見つけかた」という映画は、
ガンを宣告され、残されたわずかの時間で、やりたいことをするという話でしたが、
この本では、老いを生きるために、
夢を持ってやりたいことをしよう、というのです。
なんだか、勇気がわきます。
年をとるのがちょっぴり楽しみになってきますね。
この本では、100年前、夏目漱石やマックス・ウェーバーが、
今の私たちと同じ壁にぶつかっていたとして、
この二人の著書などにも触れています。
マックス・ウェーバーはともかく、夏目漱石は、名前だけは馴染み深いですが、
恥ずかしながら、いい年をして私はあまり読んでいません。
学校の国語の授業のおかげで、「文学」に拒否感。
で、もっぱらB級(?)読書の道を歩んでしまったんで。
でも、ちょっと今回読んでみたい気になりました。
最後に年表があって、これを見ると夏目漱石は慶応3年の生まれ。
って、つまり江戸時代ですね!
意外な気がしますが、別に意外でもなんでもない。
そのすぐ後に明治維新なんですから。
確かに、それは激動の時代でありましょう。
また、ロンドン留学までした知識人ですから、
世の中のいろいろなことが見えすぎてしまって、
本当に生き辛かったのだろうなあ・・・と、思うわけです。
時代が変わっても、人の悩みは変わらないのですね・・・。
むしろ悩みのタネは現代の方が格段に多い・・・。
若いときは悩んで悩みぬいて、そして穏やかで楽しい老後。
・・・と、書きながらつい思ってしまったのですが、
生活費用の面でいうと、
若いときは働いて働きぬいて、そして貧乏で切ない老後。
これが現実だったりして・・・。
余計な話でした・・・・・・・・・・・・・・・・・
満足度★★★★☆