イギリス版「大奥」
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16世紀イングランドの歴史絵巻。
時の国王はヘンリー8世。
しかし、世継ぎとなるべく男子が生まれない。
そこに目を付けたのが新興貴族のトーマス・ブーリン卿。
何とか娘を差し出して、男子が生まれれば、一族は安泰ということです。
その役は姉のアン(ナタリー・ポートマン)が受けるはずでした。
しかし、王が気に入ったのは妹のメアリー(スカーレット・ヨハンソン)。
アンは、これを屈辱と感じ、嫉妬を抱きます。
妹メアリーはどちらかというと凡庸だけれど、大変気立てがいい。
姉アンは、気性が激しく、頭が良くて野心的。
姉妹でありながら、かなり違いますね。
これをこの二人の女優がまた、見事に演じているのです。
共演・・・というよりは競演ですね。
一人の男を挟んで姉妹が嫉妬の炎を燃やす。
しかし、言ってみればこの浮気モノの、いい加減な王が元凶ですよね。
そもそも、妻がいながら、つぎつぎと手当たりしだいに女に手を出す。
まあ、王の特権とはいえ、・・・また、世継ぎのためとはいえ。
そして、そんな移ろいやすいものに、自らの権力・運命をゆだねようとする、
貴族の男たちも、また、情けない。
映画には出てきませんが、このヘンリー8世は、この後、
ほとんど破れかぶれという感じで、結婚と離婚を繰り返すのです。
こんなことのために、数々の女性の悲劇があったわけです。
どこの国にも多かれ少なかれ、こんな話はあるようですが・・・。
しかし、このアンはたくましいのです。
決して王には体を与えず、じらして、
当時カトリックでは絶対にありえなかった離婚をさせてしまう。
これはイングランドがローマ教皇と訣別したことを意味し、
その後のイギリスの歴史に非常に大きな影響を与えることになる。
そうしてついには、王妃の座を得るアンなのですが、生まれた子どもは女子・・・。
結局アンはやりすぎたのですね。
「マリー・アントワネット」でも思ったのですが、
女性は結局「産む機械」としか見られていない、というのが切ないです。
この意志の強いアンでも、その役割に徹するほかなかった・・・。
しかし、一度は愛し、王妃であった人にこの仕打ちとは・・・。
誠に残酷な中世の歴史・・・。
重厚で、じっくり見入ってしまう、中身の濃い2時間です。
この続きは、「エリザベス」をご覧ください・・・というわけですね。
このアンの娘こそがそのエリザベス。
なるほど、・・・すごく納得がいきます。
彼女こそは「産む機械」としての生き方を拒否したわけです。
ちょっと、因縁も感じますね。
同じくアンを主役とした映画で「1000日のアン」というのがあります。
かなり古いですが、見てみたい気がします。
また違ったお家事情がありそうです。
しかし、う~んDVDは出ていないみたいです。
2008年/アメリカ=イギリス/115分
監督:ジャスティンチャドウィック
出演:ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、エリック・バナ、ジム・スタージェス