私は、虹に腰掛けて見てるよ
* * * * * * * *
文字通り、「気持ちは若い」平均年齢80歳のコーラスグループのドキュメンタリー。
米マサチューセッツ州の小さな町、ノーサンプトンで活動している”ヤング@ハート”
驚くことに、彼らのレパートリーはロックにR&B。
イギリスの取材チームがコンサート前6週間、彼らに密着し、
リハーサルの様子やプライベートを追っています。
彼ら一人ひとりに聞くと、
意外にも、好きな音楽はクラシックやオペラというんですね。
指導者のボブが新曲のCDを流してみれば、
そのやかましさに、顔をしかめたり、耳をふさいだりしてる。
歌詞はなかなか覚えられないし、どうもリズムにも乗れない。
でもなぜロックなのか。
それは楽しいから、そのことに尽きると思います。
これは歌う方が楽しいだけじゃなくて、聞く方も、老若男女楽しめてしまう、
ここがいいのだと思います。
実際ロックに親しんでいるのはもう少し後の年代ですね。
日本で言えば団塊の世代・・・、ちょうど今60歳くらいあたりかな?
だから、これからは世界中のお年寄りたちが平気でロックをやりますよ。
多分ちっとも珍しいことではなくなるでしょう。
今でも、もとロッカーの”おじさんバンド”は、結構ありますしね。
まあ、それはさておき、このお年寄りたちのパワーは圧倒的。
彼らには「生活」しなければならない、ということから離れたゆとりがあるような気がします。
そして、これまでの経験による人生の厚みがある。
だから、多分技術的なことをいえば、
そんなにレベルは高くないのだろうと思うのですが、
言葉一つ一つにこめられた感情に、感動させられるのです。
老いも若いも関係なし。
楽しくて好きなことをやればいい。
若者には若者なりのよさ、
そしてお年寄りにはまた別のよさがあるんですねえ。
気持ちの上でのゆとりと深み。
ここが、若者の及ばないところなのかもしれません。
この撮影中の6週間で二人ものメンバーが亡くなってしまいました。
とにかく生きているぎりぎりのところまで彼らは歌い続けるので、
こんなこともめずらしくはないようなのです。
グループの最高齢の女性は言います。
「もし、私が舞台でたおれたら、舞台のすそによけて、歌い続けて欲しい。
私は、空の虹に腰掛けて見てる」と。
刑務所で行われたライヴでは、友を送る意味をこめた歌に、
受刑者たちも涙を流します。
もちろん、私も・・・。
以前、札幌で行われたニューヨークのゴスペルグループのコンサートで、
かなりお年を召したと思われる黒人の女性が1人、
イスに腰掛けたままで歌っていたんです。
本当に、日常の一部として楽しくて歌っているんだろうなあ、と感じられ、
すごくいいなあ・・・と思いました。
今、なかなか時間のゆとりがなくてやめているんですが、
やっぱりまたゴスペルを歌いにいきたいなあ・・・と思います。
身内の話ですが、こんなグループもあります・・・。
札幌シルバリー男性合唱団
2007年/イギリス/108分
監督:スティーヴン・ウォーカー
出演:アイリーン・ホール、スタン・ゴールドマン、フレッド・ニトル、ドラ・モロー