頬の暖かさで炎を感じる時
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ある日突然、1人の男が目の前が真っ白になり失明。
それはたちまち人から人へ感染し、多くの人々が収容所に隔離されてしまう。
閉鎖された極限の状況で、問われる人間性。
この映画は単にパニック物かと思ったら、それだけではないのでした。
人間性、というか人と人とのつながりというものが問われていたように思います。
人間性といえば、感染者は勝手に自滅せよ、とでも言わんばかりに、
収容所へ放り込む人々の人間性のほうが問題なような気がしますが・・・。
すべての人が盲目と化したら・・・。
ありえないことかも知れませんが、想像すると本当に怖ろしいですよ。
これまで築いてきた人類の文明が、一瞬にして水泡に帰す。
パソコン、車、道路・・・、全く意味を成しません。
見えないことの不安は、不便というだけでなく、「孤独」にもあるのではないでしょうか。
触れ合ったり、声を聞いたりしなければ、
この世に自分がたった一人のような気がしてしまうのでは・・・。
だから、盲目の彼らは、お互いより添って温もりを確かめ合いながら生活する。
多分たった一人で生きていくことはとても難しい。
なんだか、これって、原始の人間が生活を始めた頃の原点のような気がします。
お互い助け合い温もりを感じながら、小さなグループで一体となって生きていく。
でも、それは他のグループとの争いを予感してもいるのですが。
なんだかこの物語は、そういう家族に限らない人と人とのつながりの原点を振り返ってみよう・・・、
そんなことを言っているように私には感じられました。
それなので、ここは人種も、年齢も、職業もバラバラの人たちが家族のようになっていきます。
たった一人、目が見えるジュリアン・ムーアの役どころは、さまよい惑う人々の母。
やっぱり優しさと強さを持つ女性のイメージですね、彼女は。
しかし、そういう立場はまた孤独でもあるわけです。
時には先頭に立って自ら闘うことも辞さない。
目が見えないと、他のいろいろな感覚が敏感になってくるようです。
目が見える彼女が食料を持ち運んでいると、
その音やにおいで食料品を運んでいるとかぎつけ、襲ってくる盲人たち。
まるでゾンビの群れのよう。
感覚だけが怖ろしく鋭いって、ちょっと怖い。
しかし、日本人夫が、炎を明るさでなく頬に当たる熱気で感じる、
そんなシーンでは、目が見えないことのリアルな感覚が実感として感じられました。
ガエル・ガルシア・ベルナルは、あんな役でもかっこよかったです・・・。
日本人夫婦の日本語の会話にも字幕が出ていたのが、ちょっと楽しかった・・・。
2008年/日本、ブラジル、カナダ/121分
監督:フェルナンド・メイレレス、
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介、木村佳乃、ガエル・ガルシア・ベルナル