譜めくりの女 デラックス版 ジェネオン エンタテインメント このアイテムの詳細を見る |
漂う緊張感、胸の奥底の悪意
* * * * * * * *
この作品には終始緊張感が漂います。
ピアニストを目指す、少女メラニー。
彼女は肉屋の娘なんですね。
冒頭、彼女のピアノの練習シーンと交互して、
父親が肉の塊を切り分けるシーンが映し出される。
かなりの違和感なのですが、
なにやら、この先の不穏を予感させるシーンでもあります。
音楽学校の入学試験。
彼女があこがれる人気ピアニスト、アリアーヌが審査員の1人なのですが、
彼女の無神経な行動に、メラニーは動揺し、試験に失敗してしまう。
さて、数年後、メラニーはアリアーヌの息子の子守として現れ、
そしてまた、彼女のピアノ演奏の譜めくりの役を務めることになるのですが・・・。
もちろん、アリアーヌはメラニーのことなど、覚えてもいません。
表面上は、実に気の利く良い子守であり、アリアーヌは徐々に信頼を寄せていく。
そしてまた、メラニーは譜めくりとしても、
次第にアリアーヌにはなくてはならない存在となっていき、
果てには、信頼というよりも「愛情」で、アリアーヌをとりこにしてゆく。
メラニーはそっけないほどの無表情。
始めのほうは何を考えているのか、実のところ見ている側も良くわからず、
そこがまた、ミステリアスなのです。
しかし、次第に彼女の胸の奥底の悪意が徐々に見えてくる。
ところが、それに相反して、アリアーヌはどんどんと深みにはまり、
彼女に絡め捕られていくのです。
映画中に流れる静かでやわらかいピアノ曲に反して、終始ある緊張感。
一体どのような展開を見せるのかと、ドキドキしてきます。
結局、肉の切り分けシーンで思い起こされるような流血事件はないのですが・・・。
ここまでの悪意をあのように静かに持ち続け、計算づくで相手を追い詰めるとは。
怖いですね~。
ほんとに、女は怖いですよ。
多分、男性が見たら余計怖く感じると思います。
これ、最後までアリアーヌはなぜメラニーからこんな仕打ちを受けるのか、
全然わからないです。
実際身の回りでこんなことがあったりしたら・・・。
くわばら、くわばら・・・。
2006年/フランス/85分
監督:ドゥニ・デルクール
出演:カトリーヌ・フロ、デボラ・フランソワ、パスカル・グレゴリー