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ジェシー・ジェームズの暗殺

2008年11月14日 | 映画(さ行)
ジェシー・ジェームズの暗殺 特別版(2枚組)

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ヒーローを殺した男・・・疑心暗鬼から破滅へ

                  * * * * * * * *
    
ジェシー・ジェームズというのは強盗犯ではありますが、
庶民を食い物にする鉄道会社のオーナーや銀行を狙うロビン・フッドのようなイメージを持たれ、
いわばヒーロー視されていた実在の人物です。
この伝説的英雄に起った悲劇の真相を掘り下げた作品となっています。

彼は南北戦争後、兄フランクと共に強盗集団を組んで
数々の実績(?)を揚げていくのですが、
どうも、この戦争で受けたPTSDの影響が感じられます。
感情の起伏が激しく、今笑っていたかと思えば次には激怒する。
人を信じられず、簡単に人を殺す。

1880年。
新聞や本などで、ジェシー・ジェームズ(ブラッド・ピット)にあこがれていた青年ロバート(ケイシー・アフレック)は
ある日、念願かなって、ジェシー・ジェームズの一味に加わることができました。
はじめのうちは有頂天だった彼も、
気まぐれで残忍な現実のジェシー・ジェームズを知るに連れてまた、気持ちがゆれてくる。
しかし、ジェシーが持つカリスマ的魅力にも抗えず、そこを去ることもできない。
お互い信頼できず、いつどちらが裏切って、殺されてもおかしくないような緊張感が漂い始めます。
2人の男の交わす視線、片言の言葉、沈黙・・・。

結局、耐えられず先に折れてしまったのは若いロバートの方でした。
打たれると知りつつ彼に背中を向けたジェシーに向けて、ロバートは弾丸を放つ。

この映画は非常に長いのですよ・・・。
この二人の緊張感を生んでゆく部分が特に・・・。
それで、ついにジェシーが撃たれたところでやっと終わると思ったら、
なんとそこからがまたストーリーなんです。
ここは、その後のロバートの運命もまた合わせて語られる歴史的事実なのですね。

世間的にヒーローとしてもてはやされたジェシー。
その彼を裏切り、背中から撃った卑怯者、というレッテルが彼に貼られてしまいました。
まさに皮肉な運命ですが、その果てにまた・・・。

終始、静かな色調とトーンで描かれるこの作品。
興味深くはありますが、下手をすると寝込む恐れも多分にあると思われます・・・。
この半分狂っているとも思われるジェシーを演じるブラピは、さすがに迫力。
ここは見所ですね。
ケイシー・アフレックの、はじめは能天気な青年が次第に疑心暗鬼に陥り、
ついには自らの破滅へ進んでいく、この演技も良かった。

2007年/アメリカ/160分
監督:アンドリュー・ドミニク
出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、メアリー=ルイーズ・パーカー