映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ラストシーン

2013年11月03日 | 西島秀俊
古き良き“映画界”に捧ぐ



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またもや何の予備知識もなしに見ましたね。
うん。そして、初めの方でこれはホラーだったのか!!と驚いた。
「リング」や「仄暗い水の底から」の中田秀夫監督だもんね。
それにしてはバックの音楽とか色調や画質がなんだか古めかしいなあ、一体いつの作品?
と思い始めたところで種明かし。
実はここのところは1965年という設定で、
三原健(西島秀俊)が出演するホラー映画の一シーンだったというわけ。
だから、今作自体がホラー作品というわけではないんだ。
ほんのちょっと、そういう向きもあるけどね。


東京オリンピックの翌年。
テレビが普及して、日本の映画界に翳りが見え始めたという頃。
三原はいつもコンビを組んでいた女優が引退するということで、
彼まで役を降ろされてしまった。
彼自身は大スターのつもりでいたけれど、二人セットでなんぼという。
まあ、ほんの一時はもてはやされもしたけれど、あとは下降一方というところだったわけだね。
そんな彼は、珍しく撮影所を訪ねてきた妻に、八つ当たりしてひどいことをいってしまったりする。
けれど実はその時、妻はすでに事故で亡くなっていた・・・というのはまあ、中田監督らしいオチかな。


・・・というのが、本作の前段。
舞台は一気に35年を経て2000年。
同じ撮影所で、人気TVドラマ映画化作品の撮影が行われています。
そこへ、ある老人が代役を務めるためにやってくる。
それが35年ぶりにここへ来たという三原なんだ。
西島秀俊さんがどんな老けメイクで出てくるかと思ったら・・・・
残念ながら、別人でした・・・・
なーんだ、結局西島さんの出演は、あの前段だけだったということだったのね。
トホホ・・・。
まあ、そう言わないで。結構いい話だよ。
この三原老人、65歳、すっかり痩せさらばいてはいるけれど、
眼光鋭くちょっと怖いくらい。
あのあと役者をやめて一体どういう人生を歩んだのかなあ・・・。
奥さんも失くしちゃったわけだし。
そういうことには触れていないよね。
けどまあ、あまり幸福ではなかっただろうと想像はつくけどね。
しかし彼は、子役の頃から映画に出演していて、
古き良き“映画”界の体験者としてここに登場したわけ。
けれど、彼にはここで思いがけない出会いがあったりするところがミソだね。
結局、本作は、映画を愛する人々の物語なんだね。
昔も、そして今も。
色々な役割の人たちが虚構のために必死になって働いている。
それは傍から見ると滑稽ですらあったりするけれど、
一つのものを創りあげようとする気持ちは一つ。
・・・そういうことなんだろうなあ。
ところで、この撮影中の映画、ドクター鮫島は、チャラすぎでしょう。
こんな医者にはかかりたくないなあ・・・。
だね(^_^;)

ラストシーン デラックス版 [DVD]
西島秀俊,若村麻由美,麻生祐未,ジョニー吉長,生瀬勝久
ジェネオンエンタテイメント


「ラストシーン」
2001年/日本/
監督:中田秀夫
出演:西島秀俊、岩村麻由美、麻生祐未、麻生久美子、ジョニー・吉長

ノスタルジー★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★☆☆
満足度★★★☆☆