映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

神童

2013年11月09日 | 西島秀俊
ピアノの墓場に差し込む光



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これは、さそうあきら同名コミックの映画化です。
あのー、この作品、西島秀俊カテゴリーには無理があるのでは・・・?
いやいや、いいんですよ。
単なる端役ではない。何しろ、主人公のお父さんなんだからさ。
はあ・・・、そうなんですか・・・?


はい、主人公は天才ピアニストの少女13歳、うた(成海璃子)。
彼女はピアノの才能に恵まれながら、その才能を持て余しているんだ。
でもある時、音大を目指しているワオ(松山ケンイチ)と知り合う。
彼は正直、ピアノは下手っぴなんだけど、ピアノが好きな事は人一倍。
うたは、彼との交流を通して音楽の喜びに目覚めていく。
しかし、そのうち彼女は自身にかすかな変調を覚えていく・・・と。


なんといっても、成海璃子ちゃんがよかったよねー。
そうそう、今現在は「ちゃん」付けは失礼かと思うけど、
当時の今作中は「ちゃん」と呼びたい。
感情が激しくて、男の子にも掴みかかっていく乱暴ものでもある。
でも全然憎めないんだよね。
強くしなやかでみずみずしい自分らしさ。
でも、ピアノと共にあることにまだ納得できていない。
まさに、“少女”なんだなあ・・・。
同級の男の子とのエピソードが良かったよね。
うん、つい気になる子を苛めたくなっちゃうのね。
けど、やっぱり男の子でナイトでもあったりする。
たくましく育てよ、少年。って感じ。
クラスの男の子たちは、うたのことを
「口が悪くて乱暴で貧乏だけど、よくみたら美人だ」
なんて言ってた。
確かに・・・!
ワオのちょっと情けない性格も良かったよ。
ワオっていうのは「和音」と書くんだね。
八百屋の息子で、そもそもなぜこういう名前なんだろ。
やっぱりお父さんかお母さんが音楽好きと言うか、
実はその道を目指していたのかも知れない。
もしくはお祖父さんかお祖母さんとか。
だからきっとピアノは小さい頃から習っていたんだろうね。

・・・で、西島秀俊さんは?
うたのお父さんだけど、既に亡くなっていて。
もしかしたら、あの写真だけで終わり?と心配したのだけれど、
ちゃんと回想シーンがあって出演してました!!
お父さんもピアニストで、うたをピアノに導いたのも彼だ。
けど、どうやら彼は自殺したようなのだね・・・。
うたは、音楽の才能とともに不吉なDNAをも引き継いでいるということか。
倉庫に眠る古いピアノ。そこはピアノの墓場だとうたは言うけれど・・・
音楽を失いかけたうたは、自分もそこに眠るピアノと同じだと思ったのだろうか・・・。
でもラストのシーンではそこに光がさし込むでしょう?
そう、決してそこが終焉ではない。
ワオとともに歩む道は、いま始まったところ・・・
うーん、よく練られたストーリーだった。
音楽も良かったけど、色調を押さえ気味の画面も美しかった。

神童 [DVD]
成海璃子.松山ケンイチ
VAP,INC(VAP)(D)


「神童」
2006/日本/120分
監督:萩生田宏治
原作:さそうあきら
出演:成海璃子、松山ケンイチ、手塚理美、甲本雅裕、西島秀俊

芸術度★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★☆☆(出番が少ないので!)
満足度★★★★☆