映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あの日あの時愛の記憶

2013年11月23日 | 映画(あ行)
ぎりぎりのところで燃え立つ愛



* * * * * * * * * *

1944年ポーランド。
特に意識したわけではないのですが、同じ時期のポーランドの話が続いています。
ポーランドは二次大戦時、最も受難の大きかった国といえるかもしれません。
描いても描ききれなほどの、数多くのドラマが実際に繰り広げられたのでしょう。

さて、本作、
強制収容所で出会ったハンナとトマシュは恋に落ち、
命がけで収容所を脱出しました。
その後戦争の困難の中で離れ離れになった二人。





それから32年を経て1976年。
ハンナは夫と娘とともにニューヨークで幸せな生活を送っています。
そんな時、ふと観たTVにトマシュが写っているではありませんか。
一度は死んだと聞かされ諦めていたのですが、
ハンナはなんとか彼の居所を探し出して連絡を取ろうとします。



これは実際にあったことの映画化。
映画は、ニューヨークのハンナがトマシュの生存を知り、
心を千々に乱しながら30年前のことを回想していく形で進行してきます。
ユダヤ人として迫害されるハンナ。
国土をドイツとソ連に奪われたトマシュ。
こうした題材は多いのですが、
本作はそれに加えてぎりぎりのところで燃え立つ男女の愛の姿を描いているのが美しいです。
そんななかでも、ユダヤ人の嫁などとんでもないと考える
トマシュの母とハンナの反目がチクリと胸に刺さります。
どんな時代でもどんな状況でも、
人の心のありようは変わらず、美しくもあるけれど醜くもある。
ハンナにとって、実はトマシュとの愛よりもご主人との生活のほうが長かったはず。
でも失った愛のほうが大きく見えるものなのかもしれません。
トマシュがハンナの命を救ったことは事実ですし。
トマシュが共産圏で暮らしていることがまた、
お互いの消息を確かめにくくしていたのかもしれません。
お互いの胸の底で、思いはくすぶったまま封印されてきた・・・。



ラストシーンが心憎いですね。
その後の二人はどうするのか。
熱い抱擁をするのか、単に熱い思いを込めた握手なのか。
それは私達の心に委ねられます。
私なら、幽体離脱(?)した2人の若き日の魂が舞い上がって
手に手をとって浮遊するシーンを付け加えたい。
残された抜け殻の二人の肉体は、
それぞれの家へ帰って淡々とうんと長生きするのであった。
(なんじゃ、そりゃ?)



「あの日あの時愛の記憶」
2011年/ドイツ/111分
監督:アンナ・ジャスティス
出演:アリス・ドワイヤー、マテウス・ダミエッキ、ダグマー・マンツェル、レヒ・マンキェビッチュ、スザンヌ・ロタール
歴史の影のロマンス★★★★★
満足度★★★★☆