映画と本の『たんぽぽ館』

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夢と狂気の王国

2013年11月25日 | 映画(や行)
ジブリアニメの秘密



* * * * * * * * * *

「エンディング・ノート」の砂田麻美監督による、
スタジオジブリの内幕に迫るドキュメンタリーです。
折しもジブリでは、宮崎駿監督による「風立ちぬ」と、
高畑勲監督による「かぐや姫の物語」の制作が進行中。
作品は約一年、
砂田監督自身がカメラを抱え、
スタジオジブリの宮崎監督のもとに通いつめて撮った映像がまとめられています。


「夢と狂気の王国」とはよく言ったものです。
ジブリアニメはよく「夢がある」といわれますが、
アニメの制作は全く地味で果てしない作業の繰り返し。
夢どころではない、というのが製作者の本音かもしれません。
しかもただストーリーを考えて描けばいいというわけではない。
スケジュールや予算のこと。PRのこと。雑誌掲載やグッズなどの契約のこと。
ありとあらゆる仕事が付随するわけですが、
そういうところを掌握しているのがプロデューサーの鈴木敏夫さん。
この方も、ジブリアニメの制作会見などですっかりおなじみですけれど。
アニメの内容は夢。
しかしそれを実現する現場は修羅場と化し、ほとんど狂気である、
とそう言いたいのでしょう。
(いえ、でも本作中ではジブリ内がさほどの修羅場と化しているわけではありません。)
スタッフの皆さん、とにかくアニメが好きなんだろうなあ・・・と思います。
うんざりして嫌になることもあるでしょうけれど、
好きな事を仕事にできるというのはちょっぴりウラヤマシイ・・・。



本作のポスターに三人が並んで移っていますが、
高畑勲氏と宮崎駿氏が出会ってから50年。
この二人と鈴木敏夫氏が出会ってからは30数年といいます。
3人はアニメを通して、ずっと仕事でつながってきた。
ただ仲が良いというのではなく、時にはぶつかり合い、疎ましく、
そしてライバルでもある。
なんとも微妙な愛憎の感情が伺えるのです。
じっくりと通いつめ、本音を引き出した砂田監督の成果であるのかもしれません。
おじさまたちも、可愛らしい女性には弱いようで・・・


当初、「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」は同時公開の予定だったのですね。
そういえば、制作発表は同時だったような・・・。
しかし、「かぐや」の方は遅れに遅れて、公開はこの11月23日です。
鈴木氏がおっしゃるには、
宮崎さんは、とにかく締め切りに合わせようとしてくれる。
けれども高畑さんは、そんなことはお構いなしだ、と。
二人の巨匠をその気にされる技をきっと鈴木氏はお持ちなのでしょう。
長い付き合いだからこその阿吽の呼吸、と言いたいところですが、
そこがまたうまく咬み合わないというところも含めて、
人と人との関係というのには興味が尽きませんね・・・。



宮崎氏の監督引退会見の直前、砂田監督が窓辺に呼び寄せられます。
窓から見えるのはビルの町並み。
宮崎駿監督はこの光景から、
色々なアニメ作品のなかで主人公たちが、高所をものともぜず、
駆け抜けたりよじ登ったりするシーンを思い浮かべるのです。
すると、このよくあるビルの町並みも、ずーっとむこうまで駆け抜けていけそうな気がしてくる。
こういうイマジネーションが、宮崎監督のアニメの元なんだなあ
・・・と、納得しました。
確かに、私がジブリアニメで好きなのは、
そういう実現不可能にデフォルメされた主人公たちのバイタリティあふれる映像なのです。
これぞアニメ。
こういうことを忘れてアニメを作ってはいけません。



それから私はジブリに住みついている猫、ウシコのファンになってしまいました。
なぜウシコ? 
それはこの猫ちゃんの模様を見ればどなたも納得します。
のんびり外のテーブルの上でお昼寝中のウシコに、
「いいなあ、ストレスなんてほんの少しもないんだろうなあ・・・」
とつぶやく宮崎監督。
確かに、そういうのを見ると私も猫になりたい!!


それから、劇場でこんなものを頂きました!

「かぐや姫の物語プロローグ」。
なんと、ブルーレイとDVDが両方入っています。
それが「かぐやひめ」の予告編と全く同じなので、
なーんだと一瞬思ってしまいましたが、
でも、実はその予告編よりもっと長いのです。
やっぱりお得な特典映像でした!

「夢と狂気の王国」
2013年/日本/118分
監督・脚本・撮影:砂田麻美
出演:宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、庵野秀明、宮崎吾朗
夢と狂気度★★★★☆
満足度★★★★☆