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「さらば深川 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理

2016年01月03日 | 本(その他)
お文さんが深川を去る日

さらば深川―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
宇江佐 真理
文藝春秋


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「この先、何が起ころうと、それはわっちが決めたこと、後悔はしませんのさ」
―誤解とすれ違いを乗り越えて、伊三次と縒りを戻した深川芸者のお文。
後添えにとの申し出を袖にされた材木商・伊勢屋忠兵衛の
男の嫉妬が事件を招き、お文の家は炎上した。
めぐりくる季節のなか、急展開の人気シリーズ第三弾。


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シリーズ3巻目。
2巻目でその展開に驚いたところですが、
なんの、それはまだ序の口でした。


まず、「護持院ヶ原」ではこのシリーズに珍しく、斬り合いのシーンがあります。
考えてみたら時代物につきもののチャンバラシーンが、本作にはほとんど出て来ない。
やはり著者が女性ということもありそうです。
そしてまた、なんと幻術使いが登場し、
幻術ではありますが、おどろおどろしスペクタクルシーンまである。
そしてまた同心・不破友之進が修験者のような白装束で幻術使いに対戦する!! 
ひゃ~、カッコイイ!!
宇江佐真理さんが楽しんで書いたのだろうなあ・・・と想像してしまいます。
まさか、この物語でこんなシーンが見られるなんて。


そして、「さらば深川」。
本巻の題名にもなっているこの題で、ちょっと嫌な予感がしたのですよね。
深川といえばお文さん。
お文さんが何処かへ行ってしまうのかと。
しかし、そうではあり、そうでもない。
以前からお文さんに言い寄っていた伊勢屋忠兵衛は、
実に「ちいせー」奴でした!! 
そんなこんなで、ついにお文さんのすみかが炎上!! 
お母さんの形見の三味線を取りに戻り、絶体絶命のところを、
駆けつけた伊三次に助けられます。
焼け出されてしまったお文さんは何処へ行く?
・・・そりゃもちろん、伊三次のところなのでした。
こういう「さらば深川」なら、それもいいじゃありませんか。
急展開。
また次巻が楽しみです。


ところで、本巻のあとがきで著者が触れていますが、
伊三次は1巻につき1歳年をとっているのだとか。
ハリーポッターみたいですが。
だから一作目の時が25歳で、本作では27歳。
いや~、まだまだ若いです!

「さらば深川 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★★