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「さんだらぼっち 髪結い伊三次捕物余話」 宇江佐真理

2016年01月22日 | 本(その他)
「子ども」にまつわるあれこれ

さんだらぼっち―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
宇江佐 真理
文藝春秋


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芸者をやめたお文は、伊三次の長屋で念願の女房暮らしを始めるが、
どこか気持ちが心許ない。
そんな時、顔見知りの子供が犠牲になるむごい事件が起きて―。
掏摸の直次郎は足を洗い、伊三次には弟子が出来る。
そしてお文の中にも新しい命が。
江戸の季節とともに人の生活も遷り変わる、人気捕物帖シリーズ第四弾。

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本巻全体を流れるテーマはズバリ、子どもです。


まず冒頭「鬼の通る道」では、不破友之進の長男龍之介くん。12歳です。
勉強よりはどうやら、剣術の稽古の方が好きなようですが、
そろそろ親のあとを継ぐ準備もしなければなりません。
母・いなみが教育熱心で、不承不承、塾に通わされることに。
・・・などという設定がちょっぴり微笑ましいですね。
ところが、ある日突然塾へ行きたくないと言って、熱まで出す始末。
そんな時、伊三次が、ちょうど探っていた事件と、龍之介の不登校(?)の関連に気づくのです。


「さんだらぼっち」は、子どもへの虐待を取り上げています。
今時多い話題ではありますが、何時の世にもあったのでしょうね。
お文さんがある時、早苗というまだ幼い女の子と知り合いになります。
いかにもあどけなく可愛らしい。
ところが後日、早苗は悲惨な事件により亡くなってしまったことを知るのです。
そんな時、お文の隣の家でも幼い女の子が
母親に虐待されているのを見てカーッとなったお文さんは・・・!!
いや、気持ちはわかりますが、ちょっとやり過ぎました。
急にこの長屋に居づらくなったお文さんは、家を飛び出してしまいます。
あらら、はやくも伊三次と破局?
いやいや、それもほんのいっときでした。
お文に長屋暮らしは無理だと観念した伊三次は
ついに一戸を構えます。


最後の「時雨れてよ」では、九兵衛という少年が登場。
なかなか義侠心のある良い子です。
この少年が、いろいろとあった末に伊三次の髪結い業の弟子入りをすることになる。
そして、ついにお文さん、ご懐妊です!!
・・ということで、伊三次は何かと物入りで大変そうですね・・・。
頑張ってください・・・。


と、これでシリーズ4冊目なのですが、全体に物語が時を追って流れて行くので、
全然飽きずに楽しみに読めているのです。
本巻はせっかくのお文さんの懐妊で、おめでたいところなのですが、
ラスト、お文さんの心境はちょっと暗い。
でも、大丈夫。
次巻を乞うご期待!!


「さんだらぼっち 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★☆