映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

人生の約束

2016年01月19日 | 映画(さ行)
立山連峰、曳山まつりの光景はピカイチ



* * * * * * * * * *

富山県射水市新港の曳山祭りを背景とした人間ドラマ。
中原祐馬(竹野内豊)は、新興IT企業のCEO。
会社拡大のことしか頭になく、ワンマンで冷酷、逆らうものは容赦なくクビ。
そんなある日、元共同経営者で親友でもあった航平から、
無言の電話が何度も入ります。
胸騒ぎを覚えた祐馬が航平の故郷、富山県新湊を訪ねてみると、
ちょうど航平の葬儀が行われていた・・・。
航平の親族は、会社から彼を追い出すような仕打ちをした祐馬を激しくなじるのですが、
航平の忘れ形見である少女・瞳は、あることを祐馬に頼みます。
「四十物(あいもの)町の曳山を取り戻して・・・」
航平は最後まで代々伝わる四十物町の曳山のことを気にしていたのです。
なくなった航平や、瞳、この町の人々の熱意にふれ、
次第にこのことに関わっていく航平。
しかしそんな時、会社の不正が明るみに出て、祐馬は会社も何もかも失うことになってしまう・・・。



何と言っても、この街から眺めた立山連峰の雄大な風景に目を奪われます。
そして、江戸時代から350年続いているという曳山まつり。
都会でささくれだった心を癒やす町の風景としてはもう満点です。



でも、共同経営者の親友を追い出すまでに強引で冷酷なやり方を貫いた人物が、
こんなに簡単に気持ちが切り替えられるものなのか。
この風景で割り引いても、安直さが感じられてしまいます。
実は本作には「航平」が登場しません。
シルエットで、祐馬と言い争うシーンがあるのみ。
だからなのかどうか、どうも航平と祐馬の「絆」がどんなものだったのか、ピンときません。
どれだけの付き合いで、どんな諍いがあって決裂しなければならなかったのか。
そもそも、祐馬は航平に娘がいたことも知らなかったようですし。
だからどうにも、祐馬がここまで曳山に関わろうとする根っこのところが曖昧なんですよね・・・。
もしかして、会社がダメになったことからの逃避のようにさえも見える。
いい話ではありましたが、イマイチのめり込めなかったという感じでした。



「瞳」役の高橋ひかるさんは新人で、美少女コンテストグランプリ受賞者だとか。
なるほど~、カワイイというよりキレイな感じでちょっと透明感があっていい感じでした。
ただし作中彼女は亡き父親のことを「あの人」と呼ぶ。
作中で語られる航平は、優しく人情味あふれる人物。
どうもその人物像と、娘が感じる父親像が一致しないというのも、本作の弱点です。



「人生の約束」
2016年/日本/120分
監督:石橋冠
出演:竹野内豊、江口洋介、松坂桃李、優香、小池栄子、西田敏行、ビートたけし、高橋ひかる
町の風景★★★★★
人生の再生度★★★☆☆
満足度★★★☆☆