映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジャンヌ・ダルク

2016年01月15日 | 映画(さ行)
見たいものだけを見ていたのではないか



* * * * * * * * * *

山岸凉子さんの「レベレーション 啓示」を読んで、興味を持ちました。
実は以前に見たことはあるはずなのですが、
実のところちっとも面白くなかったというくらいの印象しか残っていませんでした。
その理由がこのたびよくわかったのですが、
つまりこの映画も「レベレーション」同様、
ジャンヌの活躍するヒーローもの(ヒロインものというべきか?)ではないのです。
神の啓示に突き動かされて軍を率いる乙女。
しかし、本当に神の啓示なのか。
彼女は自分が見たいもの聞きたいものを勝手に見ていただけなのか。
確かに意思の強い女性ではありますが、
その実、実に危ういという揺れる二面性を描いているのでした。
だから、表面的な派手さはないのです。


英仏100年戦争下のフランス。
小さな農村で暮らす信仰心の熱い少女ジャンヌは、
しばしば何かの兆しのようなものを見ます。
それはまるで祝福されたような幸せな気分をもたらすのです。
ところがある日、イギリス兵が村になだれ込んできて、
隠れているジャンヌの目の前で、
姉カトリーヌが犯された上、殺されてしまうのです。
(いや、実は順が逆で、おぞましい限り・・・)



「レベレーション」では、嫁いだ姉がDVにあった挙句命を落とすことになっているのですが、
本作のほうがその後のジャンヌに及ぼす影響の源として説得力があります。
英国に対する憎しみ、そして性に関する嫌悪・・・。
やがて彼女はシャルル王太子に謁見し、軍を率いることになります。
実は戦い方も何もわかってはいない。
だからこそなのかもしれませんが、彼女は先頭を切り、やみくもに皆を奮い立たせる。
そしてついには奇跡的な勝利。


けれども、勝利したその戦場に横たわる累々の死体を見て、
彼女は呆然とするのです。
これが神の啓示の果てのことなのか・・・? 
彼女の中に登場する謎の人物は言う。

『お前は自分の見たいことだけを見ていたのではないか』

結局は王家の都合のいいように利用され捨てられてしまったジャンヌが、哀れです。
でも、戦いのうちに何人かの騎士が
「奇跡の少女」ではなく一人の普通の少女として
彼女の身を案じるようになるのがちょっと救いでした。


彼女が見る予兆のシーンは殆どホラー仕立てでもアリ、
なかなかよいです。
ということで、「レベレーション」の方ではこの先どのようなものを彼女が見ることになるのか、
余計楽しみになってきました。
いずれにしても、神の啓示を受け、それに突き動かされるように民衆を率い、
けれど挙句には奇跡の力を失い
民衆の目前で残酷な処刑を受ける・・・
つまりはキリストと二重写しの運命をたどるということなのでしょうか・・・

ジャンヌ・ダルク [DVD]
ミラ・ジョボヴィッチ,ダスティン・ホフマン,ジョン・マルコヴィッチ,フェイ・ダナウェイ,ヴァンサン・カッセル
KADOKAWA / 角川書店


「ジャンヌ・ダルク」
1999年/フランス/157分
監督:リック・ベッソン
出演:ミラ・ジョボビッチ、ジョン・マルコビッチ、フェイ・ダナウェイ、ダスティン・ホフマン、バンサン・カッセル
歴史発掘度★★★☆☆
暗黒度★★★★☆
満足度★★★☆☆