映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ペインレス

2016年01月06日 | 映画(は行)
痛みを感じない少年が、殺人兵器に・・・



* * * * * * * * * *

ペインレス、すなわち「無痛」ですね。
自称西島秀俊ファンですので、先のTVドラマ「無痛~診える眼~」を見ていまして、
全然関係ないと知りながら、本作も気になってみてみました。
ところが全く関係なくもなさそうだったのですよ・・・。


時は1930年代、内戦直前のスペインという舞台から始まります。
原因不明の病で、痛みを持たない子供たちが多く生まれた。
しかしこの子供たちは命の危険を知らないがゆえに、
自分自身を平気で傷つける。
そしてまた、もちろん他人の痛みもわからないので、人にとっても大変危険である、と。
ということで、子供たちは人里離れた施設に隔離されてしまうのです。
折しもスペインでは、血で血を洗う内戦が勃発。
また、ナチスドイツが侵攻してくるなど混乱のさなか、
この施設も様々な立場の人々が訪れては殺戮の舞台と化している。
そんな中を、一人の「無痛」症の少年が生き抜き、成長していきます。


さて、このような過去と交互に現代、外科医デビッドのことが描写されていきます。
彼はリンパ腫に侵されており、生き残る唯一の方法は骨髄移植を受けること。
そこでしばらく疎遠だった両親に骨髄の提供を頼むのですが、
実は養子なので無理だと言われてしまう。
そこで実の両親の行方を探し始めるのですが・・・。
行き着いた先は、人里離れた何かの施設の廃墟。
ここで一体過去に何があったのか・・・。



この過去と現在がどうつながっていくのか、興味は深まります。
そんな中で、はっと思わせられたのが、
この一人生き残った無痛の少年、というか青年に成長した彼の姿なのです。
頭髪がなく血管が異様に浮き出ている。
・・・そう、あのTVドラマのイバラくんにそっくり。
痛みを理解できない彼が、恐ろしい殺人兵器と化してしまうというところまで。
でも、この映画は2012年作品。
久坂部羊さんの原作「無痛」のほうがずっと前なので、
どちらかがパクリだという話になれば本作のほうが、分が悪いです。
でもまあ、さほど気にすることもないか。
明らかに別の物語です。


また、本作の舞台が内乱のスペインというところで、
つい目を背けたくなる残酷シーンの数々。
これが物語にいっそうの不気味さと迫力を生み出しているのです。
おそらく、その頃のことを知る人は誰も当時のことを語りたがらないのだろうと、
そんなことまで感じさせます。
デビットは自分の病のために、そんな
ほじくり返してはならない過去を蘇らせてしまったということなんですね。
怖~いストーリーでした。


「ペインレス」
2012年/フランス・スペイン・ポルトガル/101分
監督:フアン・カルロス・メディナ
出演:アレックス・ブレンデミュール、トーマス・レマルキス、イレーネ・モンターラ、デレク・デ・リント、ファン・ディエゴ
サイコ・ホラー度★★★★☆
満足度★★★☆☆