映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

風のガーデン

2010年08月12日 | インターバル
風のガーデンにて


           * * * * * * * *

北海道だけではないと思いますが、ガーデニングブームに乗って、
各地で大がかりなガーデンを作って公開していますね。
富良野の「風のガーデン」は、そんな中でも人気のスポットのひとつです。
これは、フジテレビ開局50周年記念ドラマ「風のガーデン」で使用した施設を
一般公開しているものです。


2008年10月よりテレビ放映されていた『風のガーデン』は、
『北の国から』、『優しい時間』に続く“富良野三部作・最終章”として作られました。
富良野を舞台とし広大なブリティッシュガーデンを二年がかりで造成。
主人公の家族が育てたこのガーデンには、
計365種類の花が季節ごとに咲き美しい癒しの風景が楽しめ、
またハウス内はドラマを再現するセットとなっております。





・・・ということになっているのですが、実は私はこのドラマは見ていませんでした。
でも元々ガーデニングには興味があって、
ここにも是非一度行ってみたいと思っていたので、この度、訪れてみました。
北海道の花の盛りは、なんと言っても6月だと思うのです。
放っておいても、いやというほど様々な花が咲き乱れる。
でも、この夏の一番暑い時期に咲く花は、残念ながらやや少ないのです。
ところがこの庭は、この時期でも実に多様な花が咲き乱れていました。




おそらく、どの時期に行っても、遜色なく咲き乱れていることが想像できます。
きめ細かく計算されて設計されているのですね。
こんなお庭が自分の家にあったら、ほんとにステキ・・・、とため息が出ます。



でも実際そうだったら、毎日朝から晩まで、お庭の世話で大変だろうなあ・・・!
今、「北海道ガーデン街道」という7つのガーデンを結ぶ、観光ルートがありまして、
この「風のガーデン」ももちろんその一つですが、どれもステキですよ~。
お花好きの方は是非一度おいでくださいねー。

しかし、実は「風のビアガーデン」ということで、
そこでビールも飲めたら天国だと思う。



風のガーデン
〒076-8511 北海道富良野市中御料
新富良野プリンスホテル ピクニックガーデン内

→北海道ガーデン街道

「ザ・万歩計」 万城目学 

2010年08月11日 | 本(エッセイ)
ユニークな発想力に納得

ザ・万歩計 (文春文庫)
万城目 学
文藝春秋


             * * * * * * * *

万城目学氏のエッセイ集です。
著者の楽しいエピソード満載。

冒頭に、氏が小説を書き始めたきっかけの話があります。

自転車で道を走っていた等、とてもいい風が前から吹いていて、ああ気持ちよいと思った。
そしてこの気持ちを文字に書き残さなければ、と思った。


・・・というと、いかにもあっけないのですが、
実はこのことにはもっと長い前置きがありまして、
思い切りはしょりますが、
つまりは高校二年のとき、現代国語の先生に、
彼の書いた文章が面白いとほめられたことが、きっかけと言えそうだというのです。
それまで、まじめで行儀のいい文章こそ「いい文章」だと思い込んでいたのだけれど、
そのときの自分のどう見ても行儀の良くない文章が認められることで、
「こういうのでもいいんだ」と、目からウロコが落ちる思いがした、と。

実は私、プロの物書きでもないのにおこがましいですが、
文を書くのは好きなんですね。
(だからこそ、毎日こんなことをやっているわけですが)
それというのも、小学校の時に毎日ノートに日記を書いて
担任の先生に提出していたその文章をほめられたことがある。
たぶんそれが作文を書くのが好きになったきっかけであります。
かように、教師にとっては後に忘れてしまうような言葉でも、
子供にとっては一生を左右する大事な言葉であることはあるものです。
人をほめることは大事ですねえ・・・。


大学時代の旅のこと、
作家を目指して東京へ出たこと、
宿敵ゴキブリのこと、
いつも聞いている噛みまくりのラジオのアナウンサーのこと、
ユニークなエピソードと話題にあふれていまして、
なるほど、こういうヒトが物語を紡ぐと
「鴨川ホルモー」や、「鹿男あをによし」ができるわけか
・・・と、納得してしまいました。

満足度★★★★☆

エネミーオブU.S.A

2010年08月09日 | 映画(あ行)
すべての情報を握るコンピュータが暴走したら・・・

エネミーオブU.S.A [DVD]
ジェーン・ウェスト,エドワード・バーンズ,ヴィング・レイムス,マーティン・シーン,タマラ・フェルドマン
ビデオメーカー



            * * * * * * * *

街中いたる所にある監視カメラ。
すべての情報をひとつのコンピュータが管理し、
そのコンピュータが暴走を始めたら・・・。
これは「イーグル・アイ」にもあったような、
監視社会のちょっと恐ろしいストーリーです。

コンピュータにセキュリティを組む仕事をしているマックスの元に
1台のケータイが送られて来ます。
送り主も解らないそれに、いきなりメールが送られて来る。
そのメールに従い行動すると、次々に大金が手にはいるのです。
いったいだれが何のためにそんなことをするのか。
第一、カジノのスロットやカードの当たりがどうして解るのか?

マックスはカジノでの怪しい行動のため、
カジノの捜査員やFBI捜査官に追われる身になってしまうのですが・・・。
次第にそれは、アメリカの軍事情報システム「エシュロン」が仕組んだことと解ってきます。


あらゆる通信の会話、メール。
ホームページにブログ。
銀行のデータ。
株の取引。
それらの情報がひとつのところに集まるとしたらそれは本当に怖いですね。
監視カメラの映像と当人の持っているケータイがあれば
コンピュータでもリアルタイムに本人の居場所・行動が解ってしまう。
特定の個人が何かの意図を持ってこれら情報を得ようとするのも恐ろしいですが、
コンピュータ自体が何かの意志を持ち始めるとなったら余計怖い。
けれど今の世の中、私たちはコンピュータがなければおしまいです。
お金も使えないし、交通もズタズタ・・・。
仕事もお手上げ。
コンピュータというのは両刃の刃なんですねえ・・・。

けれども、コンピュータに勝るのは人間の機知。
と、映画は締めくくりますが、
本当にそうならいいんですけどね。

ちなみに「エネミー・オブ・アメリカ」(1998年作品)とは別物であります。

2008年/アメリカ/95分
監督:グレッグ・マルクス
出演:シャーン・ウェスト、エドワード・バーンズ、ビング・レイムス、マーティン・シーン

ザ・ロード

2010年08月08日 | 映画(さ行)
崩壊した地上に新たに灯される火



            * * * * * * * *

文明が崩壊した近未来。
ほとんどモノクロに近い映像で、荒涼とした世界が広がります。
わずかに父親が夢の中で過去の妻との生活を思い浮かべるシーンにのみ
セピアがかった色調がよみがえります。
あくまでも現実はモノクロ。
そんな中を父と幼い一人息子がひたすら南を目指して旅をします。



寒冷化し、草木もほとんどなくなってしまった地球。
食料がなくて、人々はわずかに残った過去の食料品を奪い合い、
時には殺し合ってその人肉を食べたりしながらほそぼそと命をつないでいる。
10年ほど前のその異変以前にはインテリであっただろうその父親は、
力で奪い合うこの殺伐とした世界はいかにも生きづらい。
現に妻の方はこの世界に適応できずに消え去ってしまった。
でも、彼をしゃにむに生かしているのは、この子の存在なのです。
この子は文明崩壊後に生まれました。
あふれるようにもののあった文明世界を知らない。
だからこそといいますか、ひどく純粋でまるで天使のようなのです。
盗みも殺人も当たり前、
人肉食も珍しくないというこの世界で
“善きもの”であり続けようとする父子。
彼らは火(=胸に宿る火)を運び続ける。
そこには何か新しい宗教観が見えるような気がします。
たぶんこの子は、もう何年か後に、
生き残った人々を導く役割を勤めることになるに違いない。
そのような予感を覚えるのです。



そしてこれはまた普遍的な父と息子の物語でもありますね。
父親は命がけで幼い息子を守り育て、自ら生きる規範を示さなければならない。
けれども、時期が来れば
子は父親を乗り越えて独立しなければならない・・・と。



さて、このモノクロの殺伐とした文明の終焉の光景。
どうしても少し前に見た「ザ・ウォーカー」を思い出してしまいます。
スーパーのカートに荷物を積んで押して歩いたり、
壊れずに残っている高速道路を歩いてみたり、その世界観はほとんど同一。
きっとこの物語はあのストーリーと地続きで、
同じ大地をひたすら西へ歩んでいる者があるに違いない。
そういえば、こちらに目の悪いイーライという老人が登場するんですよ。
その意味深長な名前も同じなのです。
思うに、「ザ・ウォーカー」の発想自体がこの原作本にあるのかも知れません。
そう思った方が納得がいきます。
ちなみにこのストーリーの原作はコーマック・マッカーシー。
あの「ノーカントリー」の原作者でもあります。


人肉食というショッキングなシーンがある以外は非常に地味な作品で、
これがヴィゴ・モーテンセンでなければ見なかったかも知れない
というくらいのものなんですが、
でも後になればなるほど、とても象徴的なこの父子のことが
心の中で大きくなっていく気がします。
不思議な作品です。




2009年/アメリカ/112分
監督:ジョン・ヒルコート
原作:コーマック・マッカーシー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、ロバート・デュバル、ガイ・ピアーズ、シャーリーズ・セロン

稲川淳二の怪談ナイト

2010年08月07日 | 舞台
猛暑を吹き飛ばしてクール・ダウン

            * * * * * * * *

8月6日、札幌はこの夏一番の暑さを記録した猛暑の日。
稲川淳二さんの怪談ナイトに行ってきました。
18年連続公演ということです。
私はテレビで時々その断片を拝見するくらいでしたので、
この度初めてですが、ナマでじっくり拝見。
さすがに一人で行く勇気がなくて、娘と一緒でした。
このチケット、よく見ると、怪場18:30、怪宴19:00なんて書いてある。
一瞬変換ミスかと思いましたが、わざとですね。
なるほど、なかなか心憎い。


いくつかの怖い話が紹介されますが、これがだんだんと順を追って怖くなるんです。
初めのうち、ああ、これはたいしたことないんじゃない・・・なんて思っていたら大間違い。


皆さん、こんなアパートがあったらどうしますか?
池のほとりの少し坂を上がったところにある2階建ての古いアパート。
なぜか、入り口のすぐ横の壁に、すぐまたドアが付いていて、
でもそこは鍵がかかっていて開かない。
その壁面の少し奥の足もと、低い位置に何故かガラス窓がついている。
はめ殺しで開くこともできないその窓は、
向こう側は真っ暗でよく見えないのだけれど、
それでもよく目をこらしてみれば、そこには階段があるようだ・・・。
つまり、その開かないドアから地下室に降りられるようになっているらしい。
でも鍵がかかっているので開かずの間となっている。
しばらくそこに住んでいた女性は、次第に無気力になり生気が無くなってくる。
ある夜、自室の下の方からなにやら物音が・・・。
それは靴音のようで、その音が次第にこちらの方へ近づき、階段を登ってくる・・・。
彼女がおそるおそるのぞき窓へ近づき、のぞきこんでみると・・・・!!!

うぎゃあああああ!!!

もう、どうしてこんな怖い話をするのよっ、と、腹が立ってくるくらいです。
まあ、ほんとに嫌ならわざわざ聞きに来るなよという話ですが。
この話の怖いところはこれの後日談もあるところで、
そこにはさらなる恐怖が待っていますよ・・・。
ああ、思い出すだけでもトリハダもの。


一通りの話が終わってからは、心霊写真コーナーがありまして、
いくつかの気味の悪い写真が紹介されました。
テレビの納涼特集などでもよくある、
あるべきでないところにぽっかり顔が映り込んでいたりする、アレです。
しかしなんと、こういう顔は次第に変化するというのです。
同じ写真を毎年紹介しているのだけれど、
始め向こう向きだったはずのその顔が年々こちら向き、
つまり正面を向いてきているのだとか・・・。


話の方は多分に脚色があるのだろうと思いますが、
それにしても、世の中理屈では説明出来ない不思議がやっぱりあるのかも知れない・・・。

すっかり体も冷たくなって、(冷房の効き過ぎ?)
帰途についたのでした。
これらの話は、さっさと忘れてしまいたいですう・・・。

ステージを見られない方はDVDでも・・・
MYSTERY NIGHT TOUR 2009 稲川淳二の怪談ナイト ライブ盤 [DVD]
稲川淳二
ビデオメーカー


稲川淳二のねむれない怪談オールスターズ1 [DVD]
稲川淳二,中村豪(やるせなす),山田ルイ53世(髭男爵),杉作J太郎,浜田ブリトニー
キングレコード


「夕映え 上・下」 宇江佐真理

2010年08月06日 | 本(その他)
一庶民から見た明治維新

夕映え〈上〉 (時代小説文庫)
宇江佐 真理
角川春樹事務所


夕映え〈下〉 (時代小説文庫)
宇江佐 真理
角川春樹事務所


           * * * * * * * *

時代物ですが、舞台は幕末です。
「福助」というおでんが評判の一膳飯屋。
女将のおあきさんと、岡っ引きのご亭主弘蔵。16になる娘のおてい。
そして家を飛び出して滅多に帰らない長男良助。
江戸末期から明治にかけて、時代に翻弄されるこの一家の出来事を描き出しています。

幕末。
数々の英雄の活躍する本やドラマは多いですが、
一介の庶民の立場からというのはそう多くはありません。
官軍が意気揚々と乗り込んでくる江戸。
将軍のお膝元の人々は、面はゆく見ているようですね。
でも、結局だれが政権を握ろうとも、
一般庶民は昨日も今日も毎日の生活に精一杯だ。
だから何も影響がないかと言えば、
若者は血気にはやって戦争に加わるなど、やはり動乱の世の影が落ちてくる。
いつの時代も人々は普通に幸せを求めて過ごしていたんだなあ・・・と、
当たり前のことなんですが今さらながらしみじみと思ってしまいます。
親しい人を亡くす張り裂けそうな悲しい思いや、
新しい命の誕生の喜ばしさや・・・。
どんなに文化が進歩しても、基本的に人の心の有り様は同じなんですよね。


さて、ここのご亭主、弘蔵さんは実は元松前藩の武士。
松前藩、というのがやはり宇江佐さんなんですが、
考えてみると道南は官軍と反乱軍の最後の決戦の地、
明治維新を語るには避けられない場所でもあります。
彼は松前藩のお家騒動に巻き込まれ脱藩せざるを得なくなってしまい、
武士を捨てて町人になったのです。
そんな彼だから、この幕末を一歩引いて客観的に見ている。
ちょっといなせでいい男っぽいですー。

ストーリーの合間に当時の世情が結構詳しく書いてありますので、
このあたりの歴史好きの方にはおすすめです。
坂本龍馬は出てこないですが・・・。


2人はたった一度、そろって弘蔵の故郷松前を訪れます。
当時の江戸~松前はとてつもなく遠かったでしょうね。

日は西に傾き、空は鮮やかなあかね色に染まっていた。
紺碧の海は所々、金色に光っている。
「見事な夕映えだな」
「本当に」
「何だかよ、この夕映えが江戸時代は終いになりやしたと言っているような気がすらァ」



美しい夕映えは、江戸時代の終末をたとえているのでした・・・・


満足度★★★★☆

ソルト

2010年08月04日 | 映画(さ行)
ソルトにとっての真実とは・・・



               * * * * * * * *

レディース・スパイアクション!
アンジーことアンジェリーナ・ジョリーの魅力満載です。

CIAに所属するイヴリン・ソルト。
謎のロシア男性の告白により、
大統領暗殺のために送り込まれたロシアの二重スパイの嫌疑をかけられ、
追われる身となってしまいます。



今時ロシアとのスパイ合戦なんてあり?と思ってしまうのですが、
つい最近現実にそんなニュースもありまして・・・、
あながちなくもないのか・・・と戸惑ってしまいますね。
何しろこのストーリーでは、敵国の要人暗殺要員を育成するために、
子供の時から洗脳し、過酷な訓練をする特殊機関がある、とされています。
そんな要員が、スパイとしてアメリカの主要機関に
何十年も先の任務のために潜伏している・・・。
その何十年もの期間が問題ですよね。
いつの間にか潜伏先にすっかり安住してしまい、
本来の任務を忘れてしまうなんていうことは、いかにもありそうに思えます。
ヒトの気持ちなんてそんなに確固としたものかなあ・・・と。
そこが子供のうちから・・・というのがミソなんでしょうね。

男性顔負けのソルトですが、彼女の行動はやはり女そのものという気がします。
男性は社会の中の自分を意識します。
だから、そう簡単に寝返らないのでしょうね・・・。
でも女性の行動原理は感情なんですよ。
だから私は意外とすんなり納得できてしまうのですが・・・。
皆様はいかがでしょうか。




さて、しかしこのストーリー自体は
そんなドロドロした感情など目もくれません。
ソルトは彼女自身の「真実」に従い、突っ走るのみ。
私は実のところ、スパイものは苦手なのです。
小難しい政治的かけ引き・・・というようなことになるとなおさら。
けれども、この作品、実に痛快に楽しめてしまいました。
要は小難しくなく単純だから、なのであります。
ソルトにはもう、イデオロギーはどうでもいい。
彼女にとっての「正義」は私などにも非常にわかりやすい訳です。

それに加えて、スタントなしという迫力のアクション。
疾走中のトラックの屋根から屋根へ飛び移り・・・、
護送中の車の中から両脇の男性を突き落として脱走。



お色気もたっぷりなので、男性もお好きでしょうけれど、
女性から見ても何ともかっこよくてあこがれます。
男装もステキですねー。
この作品についてはリアリティの欠如・・・とか何とかというのはヤボというものでしょう。
ソルトの真実はどこにあるのか、
本当の黒幕は誰なのか。
それを想像しつつ、アクションをたっぷり楽しみましょう。

2010/アメリカ/105分
監督:フィリップ・ノイス
出演:アンジェリーナ・ジョリー、リーブ・シュレイバー、キウェテル・イジョフォー、ダニエル・オルブリフスキー

ルーキー

2010年08月03日 | クリント・イーストウッド
イーストウッドと組むルーキーの死亡率?

ルーキー(Blu-ray Disc)
クリント・イーストウッド,チャーリー・シーン
ワーナー・ホーム・ビデオ


             * * * * * * * *

えーと、この作品、ちょっと順番が狂いまして、本当は「ホワイトハンターブラックハート」と「許されざる者」の間に入ります。

クリント・イーストウッドはかなり荒っぽい捜査をするタフなベテラン刑事ニック、ということで、ダーティハリーの設定にとても近いですね。
うん、それで、冒頭で初っぱなから彼の相棒が捜査中に殉死。
相変わらず、彼と組む相棒の死亡率はとても高いなあ・・・。
そこで、次に彼と組む相棒が、ここで言うルーキーのデイビット・アッカーマン(チャーリー・シーン)なんだね。
そう、だから彼に与えられた命題は「死なないこと」と言ってもいいわけだ。
その通り。
ただし、この作品はやはり「ルーキー」なので、彼の内面を重視しているんだね。
デイビッドは上流家庭の出なんだけど、子供の頃、転落死した弟のことに責任を感じていて、
それが大きなトラウマになっているんです。
そのことがあって、父親ともしっくりこないし、大事なシーンで何か自信なさげなんだ。
2人は、大がかりな自動車窃盗団を追うのだけれど、大事なところでデイビッドのミスによって、ニックが一味にとらえられてしまう。
そこで彼自身も銃撃され、ひゃ~、やっぱり死んじゃうの??と思わせるのだけれど・・・
そこはまあ、それではストーリーが続かないので・・・。
デイビッドはしかし、そこからきっぱり気持ちが切り替わって立ち上がるわけです!
そうです、ロッキーのテーマを流したくなる感じ。
その後の彼の行動はもう、ニック顔負けの荒っぽさ。
おお、それでこそ一人前の彼の相棒!!
1人の青年の心の成長劇、ということで、なかなかいいですね。


上流家庭の品の良さが見え隠れするデイビッドがいい感じ。
本来なら、刑事なんぞになるような身分ではない、ということね。
父親への反抗もあって、こういう職業に就いたというようにも思える。
スーツを着込んだ彼にニックが言うんだよね。
「もっと身軽で動き安い、私服を着ろ」って。
しかし、「僕にはこれが、そうなんです」とデイビッド。
きゃー、ニクいねえ。そんなこと言ってみたい。


それからちょっとドギマギする大人のシーンがありましたねえ・・・。
ああ、あの一味のボスの愛人ね。
お色気むんむんでありながら武術の達人!
なんと、捕まって後ろ手に縛られたニックに色仕掛けで迫ってしまう。・・・これって、強姦?
しかもそのシーンをビデオ撮影しちゃうんだから。
すごい大人のシーンだ・・・、イーストウッドには珍しいな。


まあそのあたりも、後の方ではジョークでかわす。
だからいいんだよね。
この作品、車ばかりか飛行機まで炎上させちゃう。
相変わらず過激なイーストウッド刑事でした!

1990年/アメリカ/120分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、チャーリー・シーン、ラウル・ジュリア、ソニア・ブラガ、トム・スケリット


「ちょんまげぷりん」 荒木源 

2010年08月02日 | 本(その他)
江戸時代からタイムスリップしてきたお侍が、プリン作り?!

ちょんまげぷりん (小学館文庫)
荒木 源
小学館


          * * * * * * * *

意味不明ですが、思わず微笑んでしまいそうなかわいいこの題名。
江戸時代のお侍が現代にタイムスリップ。
何とも興味深い内容に惹かれて読んでみました。
現代から過去へのタイムスリップは結構ありますね。
でも逆パターンはそれほど多くはない。


きっかけはごく何気ないのです。
シングルマザー遊佐ひろ子が、
たまたま家の近所で困っているお侍の格好をした謎の男を気の毒に思い、
家に置くことになってしまった。
それだけでお人好しの彼女の性格がわかる気がしますね。
そのお侍は木島安兵衛。
どう見てもそのチョンマゲは本物。
信じられないけれど、本当に江戸時代からタイムスリップして来たとしか思えない。

家においてもらって恩義を感じた安兵衛は、
ひろ子が仕事に出ている間、家事をすることに。
しかし、その仕事は半端なものではありません。
もちろん初めてのことで、初めのうちはぎこちなかったのですが、
慣れてくれば掃除、洗濯、そして料理、すべて完璧。
仕事を持つひろ子にとっては理想の「主夫」。
おまけに保育園児の息子友也もすっかりなついて、
寂しさからか情緒不安定だった子が安定してくる。

そんなある日、安兵衛はテレビの手作りケーキコンテストに出演するのですが、見事優勝。
そのすばらしいお菓子作りの腕と特異なコメントで、話題となり、
あれよあれよという間に大人気。
お金も入るし、超多忙で、とうとうひろ子の家を出ることに。

この辺の展開がスピーディーで目が離せなくて、
私は止められず寝不足になってしまいました・・・。

ひろ子はひろ子で、
安兵衛が家事を引き受けてくれることで安心して仕事に打ちこめるようになり、
出世をして、大事な仕事を任され、こちらも超多忙となっていくのです。

結局、置き去りにされるのは友也くん。
でも、ひろ子はこんな状態は良くないとちゃんと気づく。
けれども、生き甲斐を見つけ超多忙な安兵衛とは気持ちがすれ違い・・・


さてさて、どうなりますか。
実に読ませるストーリーです。

では何故に今、江戸時代の侍なのか。
安兵衛が語る言葉には、
現代人が忘れてしまった、根源的に大事なものが多々あるんですね。

「家事に心をもっぱらにせず、
アレもしたいこれもしたいと、
夢みたいなことばかり考えてえねるぎーを浪費しておるらしいのは看過できぬ。
人には分というものがござる。
分をわきまえて生きるのを、まことの人の道と申す。」


一見男尊女卑かとも思える言葉でもあるのですが、
つまりは自分に与えられた役割を全うせよと、そう言っているわけです。
子供に対しても、
きちんとお手伝いはさせるし、わがままはダメ。
いいことはいい。
ダメなものはダメ。
実にきっぱりとしている。
ああ・・・うちにも1人こんな人が迷い込んで来ないかしらん・・・。


最後にはちゃんとタイムスリップものらしいオチもあります。
変な恋愛ものに進展しないところがまた、爽やかで
私としてはポイント高いです。

錦戸亮主演、中村義洋監督による映画も公開中。
あんまり気に入ったので、私はきっと見に行くことになりそう。

満足度★★★★★


必死剣鳥刺し

2010年08月01日 | 映画(は行)
自分らしく生き、死のうとする武士の生き様



           * * * * * * * *

藤沢周平 隠し剣シリーズの中のひとつ。

冒頭、桜の舞い散る能舞台。
非常に美しいのですが、なにやら妙に緊迫感。
なんとその直後、主人公三左エ門(豊川悦司)が、
自分の主君の愛妾を刺し殺してしまうのです。
どうしてそんなことになってしまったのか、というのも問題なのですが、
ここで本当は三左エ門は死ぬつもりだったのですね。
切腹かもしくは打ち首の罪になるだろう・・・と。
しかし、何故か思いの外処分は軽く、
一年の蟄居の後、またお役に付くことを許される。
これは情が厚く面倒見の良い中老(岸部一徳)のおかげ・・・?
の様に見せかけておいて、実は大変な罠であったのです。




これ以上言うとネタバレなので止めておきますが、非常に、キタナイ!!
無能な藩主と、
しかし、その藩主の元で藩をもり立てていかなければならないという制約の中で、
仕組まれた悲劇。
そんな中で、自分らしく生き、死のうとする武士の生き様をえぐり出すように描いています。
非常に言葉少な。
武士。
男。
そういう渋い、かつての時代劇のイメージたっぷりです。



ラストのどしゃ降りの中の殺陣のシーンは壮絶でした。
あえて、踊るように流暢な殺陣にはしなかったと言います。
泥臭いですね。
斬りかかる方も、傷つきながらも受ける方も。
人と人が切り合うというのは本当にこんな風なのかも、と思わせます。

そして、「その秘剣が抜かれるとき、遣い手は半ば死んでいる」
という三左エ門の「鳥刺し」。
まさに必死剣なのでした。


三左エ門にそっと心を寄せる里尾(池脇千鶴)の存在がわずかな心の救いでしたー。
それがなければ、あまりにもしんどい。



苦み走ったいい男、帯屋隼人は藩主の命を狙う三左エ門の敵。
でも、こんなばかな藩主になど従えないというところでは
実は一番近いところにいるのではないでしょうかね。
なのに、敵対しなければならないというのも、この時代のかなわぬところ・・・。


2010年/日本/114分
監督:平山秀幸
出演:豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、戸田菜穂、関めぐみ