ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

嘘をつくのは難しい!高校演劇大会置農作品

2016-09-12 08:01:34 | 劇評

 残念だったなぁ、置農久しぶりに県大会出場を逃した。結果を聞いてからずっと腹の底の方で、得体の知れないわたがまりが居座り続けている。辛いんだよ。苦しいんだよ。自分のすべてが否定されたようで、悶々とするんだよ部員たち、そして、顧問。僕も経験がある、それも2回も。あまりに悔しくて、単独公演の可能性を必死で探ったりもした。結局、時の流れに癒されるまで待つしかない。ただ一つだけ、アドバイスするなら、悲しみをやり過ごすには、何かに打ち込むこと。無ければ作ってでも公演にこだわることかな。幸い、置農演劇部には敗北に沈んでる暇はないはすだ。コントとか、子どもミュージカルとか、演歌ショーとか、みんな待っている。気落ちして下を向いてる暇があったら、辛い心を封印して、明日の行事に我を忘れよう。

 結果が残せなかった彼らに、感想を伝えるのは傷口に塩を擦り込む技とも思えるが、次に生かすためだ、敢えて聞いてくれ。

 気になった点は少なからずあった。装置も整理されていなかったし、照明の扱いにも手が回っていなかった。例えば、ピンスポの上下の大きさの違いとか光量不足とか。でも、そんなこたぁ大したことじゃない。多くの観客が感じた一番の違和感はジイサン、バアサンの役作りじゃないかなぁ。確かに今どきのシニアは昔風のジジババとは違う。服装も洒落ていたり、美魔女と呼ばれそうな若すぎる?人もいたりする。菜の花シニア団のメンバーを手本に作ったから、なおのことその傾向が強かったんだと思う。でも、年寄りは年寄りなんだよなぁ。話し方であったり、姿勢やちょっとした仕草であったり、若い人たちとはどこか違う。Tシャツにジーパン姿でも、シャツは裾を入れてたり、股上が深いジーパンだったり、よく見れば、やっぱ、ジイサンだよなぁ、って見透かされるところは多々ある。女性の服も、シャレてはいても、若者向きのものとは、本質的に違う方向のはずだ。外観ばかりじゃない。話し方もあまりに早口で、演じてる高校生が透けて見えていた。シニアが活躍する芝居だったから、ここは致命的だったかな。

 でも、僕が感じた一番の違和感は、劇の構造だった。いつも一緒に行動していたお祖母ちゃんが、実はすでに死んでいた、少女はその幻想から離れることが出来なかった。それが最後の最後に明かされて、現実に独り立ちしていく。まっ、この形は高校演劇ではよくあるパターンなので、この構造自体が不自然と言うつもりはない。ミステリアスな展開を持続させ、最後に一気にどんでん返し、決まれば、合わせ技1本!以上の効果的技法だ。ただ、この方法は諸刃の剣で、見終わった観客が、騙されたことを爽快に感じるのか、、なんか不快感、不消化感で席を立つのか、二つに一つ、なかなか難しい技法なんだ。

 今回のこの芝居では、残念、後者の失敗例だったかな。えっ、そんなぁ!それずるいでしょ!無理あるでしょ!なんか勝手に引きずり回された感じが強くした。じゃあ、なぜそうなったか?って考えると、それは伏線の有無ってことなんじゃないだろうか。ミステリーの作法と同じだ。事前のヒントや伏線なしにどんでん返しの結末を持ってきたら、観客・読者は納得しない。所々に、完全に気取られない程度に、あれっ、そのセリフなんか意味あり気?とか、あっ、なんかありそうだぞって部分を挟んでおくことが、フェアな作り方なんだと思う。それがなかったから、あるいは、潜り込ませていたのだとしても、伝わらなかったから、唐突などんでん返しに不愉快さを感じたんだと思う。そう、相撲取ってたはずなのに、巴投げされたようなもんだ。

 それと、もう一つは、技の切れ味てことかな。得意技を決めたたことで、それまでの状況が一気に白日の下に晒される、その明快感、これが必要だ。技の解説や技に至る過程をクドクド説明してるようじゃダメなんだ。一発決まればすべてはわかる、参りました!と行くような万人納得の切れ味が必要なんだ。これが不足すると、その技、強引過ぎ!掛かりっこないぜ!ってことで、審判の手は上がらない。今回の作品では、母親との関係でも、シニアたちとの付き合いでも、詐欺の扱いでも、あまりに強引な力技の連続だったと思う。突拍子もない設定を置いても悪くはない。でも、最後はきっちり回収できるってことが大切なんだなぁ。

 舞台の嘘は、つかれた人も嬉しくなるようにつきたい。騙されて幸せになるような嘘をつきたい。これは僕が目指しているものでもある。騙し討ちはご法度だ。お互い、心戒めようじゃないか。て、ことで、コント大会、待ってる。もっと、笑い取れるように演技力磨くのも君たちの課題だ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする