たまたま、NHKプレミアムシアターで見たからって、30年前の映画だぜ。それも、ずっと前に録画したままんま、ディーガの中で忘れられ、未試聴消去直前の運命にあったものだ。そんなもん、感想書いてどうする?誰も喜びゃしないよ。なにを今さら、って蔑みの視線を投げてスルーするだけのことだ。まっ、いいさ、バカ臭いてのは確かだ。すでに、評価も定まってる作品だ。アカデミー賞で「ダンシング ウィズ ウルブス」と最後まで競り合って、結局、ウーピー・ゴールドバーグの助演女優賞と脚本賞(ブルース・ジョエル・ルービン)にとどまったってことも見終わった後のウィキペディアで知った。改めて、ここで書く必要性なんてまったくない。
が、やっぱ書こうか、と思ったのは、その前日、「世界の中心で愛を叫ぶ」を見たからなんだ。ほら、地上波デジタルで放送したやつ。いいや、見ちゃいない、途中で耐え切れなくなって離れた。もう、どうしてこんな見え見えの、ありきたりの白血病余命数か月少女物語が大ヒットしたんだよ。いい加減にせえよ!ラジオ深夜放送をネタにした話しの展開とかって、全然工夫感じないし、美しくないし。50年前の初恋、その死んだ恋人の骨を墓暴いて取って来る?ってもう、生理的に無理!だし、その感覚、共感不能!!要するに、̪迫りくる死、逃れられぬ運命に激しく燃え上がる恋心、死んでも燃え続ける愛、これぞ至上の愛!これだろう。もう、どんだけ作られてんだよ。で、いい加減にせえ!
その翌日、録画ビデオの整理を兼ねて見たのが、『ゴースト ニューヨークの幻』。ありゃりゃ、これも死んでも愛する人を忘れません、ものだったか。やれやれ、またか、と思いつつもせめて30分くらいは付き合うか、「世界の中心・・・」は1時間も我慢したんだし。
いや、もう、しつこいんだ、この死人!裏道で強漢に襲われ恋人を守るために撃たれて死ぬんだが、魂の方は抜け出して恋人の回りをうろつき回る。おいおい、そんな付きまとったら、いつかは幽霊のストーカー認定だぜ。と、不安に思っていたら、なんと、男の死も、意図した殺人でどうやら大きな犯罪がうごめいているようなんだ。しかも、生き残った恋人までもが狙われてる。と、なりゃ話は別よ。ガンバレ幽霊!
壁抜け自在の霊魂なんだが、人間相手に言葉が届かない。ここを切り抜けるアイデアが奇抜!いかさま霊媒師を無理やり味方に引きづり込むんだ。そのちょっとだけ霊力有りのインチキ霊媒師を演じるのがウーピー・ゴールドバーグ。この設定もとてつもなく面白いし、何よりウーピーの芸達者にゃ笑いの連続だ。よくぞ、よくぞ!こんな百面相ができるもんだ!もしかして、一部CGで加工してんじゃねえか?って疑っちまうくらい、状況に応じ、時の感情に相応しく顔の造作すべてが伸び縮みするんだ。もう、これだけだって、儲けものだ。
ウーピーの霊媒師を通して、恋人に意志は通じるようになったが、次なる幽霊の限界は、外界に手を出せないことだ。悪人相手に殴ることも出来なけりゃ、ビールの空き缶一つ動かせない。魔の手が迫る恋人をどうやって守りゃいいのよ!?そこで、またまた驚きの返し技!なんと、怒りやら情愛やら嘆きやらの感情ぎゅっと凝縮してそれを念力のエネルギーにすれば、自在にモノとの関りを回復できるってんだ。こう、ぺろっと書いちまうと、インチキだ!なんじゃそのご都合主義は!って思うわな、普通。ところが、その秘伝を伝授される方法が、な、な、なんと!なんだぜ。地下鉄の電車を縄張りにしている霊がいる!って驚き呆然、大爆笑の設定で乗り切っているだ。いやぁ、上手いなぁ!
物語の工夫はそればかりじゃない。ウーピーの霊媒師は詐欺やらなにやらで前科ありとか、400万ドルの不正送金、それを阻む銀行相手の詐欺まがいの預金解約、さらには、追い詰められ復讐の鬼と化した犯人と見えない霊とのアクションとか、もう、息継ぎ不能の急展開のサスペンス!しかも、最後は、羨ましい霊と人間とのラフシーン!
ねっ、映画てのはね、こういう風に作らにゃいかんのよ。「セカチュー」みたいに、最初から先の見えてるお話しなんて、お子様ランチ、いや、ガールズデザート!もっともっと、騙し騙され、欺き、誑かし、ぐりぐり鼻っ面を引き回してくれなくっちゃ。共感し泣きたくて来る人にべったりなんてね。
と、二つの映画への称賛と蔑視、まっ、これが歳をとるってことなんだろうかね。いやいや、若い時に見たって、両者への評価は変わらんぞ。それが、こっちの拙いながも創作の原点ってもんだからな。