ここ数日、寒の戻りもあったが、さすがに4月、春は春だ。
山形青菜漬け、どうする?たっぷり残っちまったぜ。キムチに圧倒されたからなぁ、この冬は。3回も立て続けに仕込まれちゃ、青菜漬けの出番は少なかった。交代要員はおろか、ベンチ入りもままならず、ってところだった。二つ並んだ樽の前に立ちゃ、どうしたって、キムチの蓋開けてしまうもの。
さすがに3月ともなって、発酵一気に進むようになれば、キムチはお役御免。さあ、青菜漬けの季節到来か?っと思ったら、どうも味の方が古びてきてる。それに、もともとの出来も少々筋っぽいこともあって、今度は、赤かぶ漬けに食卓のレギュラーを奪われた。さらに、ラッキョウ漬けなんて伏兵も現れて、とうとう見向きもされぬまま4月突入と相成った。
恐る恐る蓋を取ってみれば、ああ、やっぱり、産膜酵母一面に張ってるし!こうなると味も香りも歯ごたえも急落して、腐敗の数歩手前、もちろん、白く微生物に覆われた株は捨てるしかない。ええいっ、春じゃ新緑、菜もの季節!ひねた漬菜などさっぱり捨てて、芽生えとともに生きようか。重たい樽を抱えて、裏のゴミ捨て場へ。
だが、待てよ。上面にある白くなった株、こりゃ廃棄が相当、でも、その下の連中はまだ生きる道があるんじゃないか?ほれ、高菜の古漬けみたいに。そうだよな、せっかく冬中、食べてもらえるのを楽しみにして?じっと変質にも抵抗してきた青菜たち、そう簡単に捨てちゃ可哀想だろう。よしっ、救出しよう。ごめんな勘弁な、は、上層部だけにして、下積みは先々役に立ってもらおうか。人間もそうありたいもんだがな。
取り出してみればかなりの量がある。30株くらいか?1回や2回、高菜古漬けとして利用しても、とても使い切れる量じゃない。そのまま放っておけば、すぐにかびて来る。味も変わる。うーん、どうする?やっぱり捨てるか?
まあまあ、そう結論を急がずに、まずは利用価値を確認しよう。一株取り出し、水に浸してひねた味と臭いと塩味を抜く。水を変えてもう一度。ぎゅっと絞ったら細かく刻んで、たっぷりのごま油で炒める。砂糖、酒、みりん、醤油。ややこってり味にな。おっと、トウガラシも忘れずに。炒り煮を続け、水分が飛んだら火を止めて、最後のごま油一たらし。できた。
艶やかなこの色気!お味の方はぁぁぁぁ、美味ぇぇぇぇ!滅法美味え。こりゃ行けるぜ。保存性もあるしな。常備菜にゃぴったりの一品だ。これなら春夏通して食卓の一角を陣取っても誰も文句は言わないだろう。豚ひき肉と一緒に炒めて、高菜ラーメン!って手もあるぞ。
となりゃ、残った株は保存しておこう。ビニール袋に小分けして冷凍庫に入れる。すでに満杯に近く、通勤電車のドア閉めのように無理やりお尻を押し込んで残り数十株を庫内に収納した。これで、時折取り出しちゃ、この総菜を作ればいいってことだ。発酵食品だし、野菜だし、栄養価もきっと高いぞ。
よしよし、これで、新緑と古菜のべっ甲色。我が家の食卓もダイバーシティ完了じゃ!