すべては、この日のために積み上げて来たんだぜ。秋の燻炭焼き、いいものたくさんできた。雪降る前のボカシ積み、その後1か月以上の切り返し作業。種もみの塩水選に温湯殺菌、そして浸漬20日間。同時進行で、ボカシを篩い、用土を篩い、燻炭を仕分けし、すべて小屋に運び込んで、やっと種蒔きにたどり着いた。ふぅ、どうだい?手間暇かかるもんだろうが。
今年の改善点は幾つもあるが、超目玉は、播種機をついにリースに代えたこと。もう、堪えられない、あの30年もののポンコツには!途中緊急停止すること一度ならず、しかも土の転圧ポイントがずれていて種がポットに中に埋め込まれない。いくら厚く覆土しても水撒きすると種が浮いて出る。当然、発芽不揃い!もう、丸一日悪戦苦闘して、その後も落胆の連続、もう嫌だ、高いリース代払ったって、最新型でストレスフリーで行きたい。
機械では、土混ぜ機も新しい中古が来た。一緒に作業するTさんが機械屋さんから譲り受け長期貸し出ししてくれる。この良い点は、コードが長いので、播種作業の場所で土混ぜができるようになったこと。これで、一手間、二手間省けた。土作りも細かいながら、ボカシの作り方も配合比も変えて、去年の肥料不足に対応した。
これだけ気使って、準備した来たんだ、お天道様だって、その努力、見そなわして、ほぉぉぉれ、天気最高だぜ。
箱送りの部分が欠けたポット苗箱が引っ掛かってすったもんだした20分を除けば、機械は順調、って言いたいところだが、種の乾かし方が不十分。所々種の落ちない。もう、仕方ねぇ、チャップリンのモダンタイムスさながら、流れる苗箱を必死で追いつつ種をつまみ入れる難行をこなした。それでも、最新型の威力は大!1時過ぎは種まきは完了。丁寧にハウス内のプールに並べた。
さっ、これで、大きな一山を超えた。シートを被せた苗箱を見ながら、順調な発芽と健やかな生長をお祈りした。ほんと、手を合わせたぜ。この先、天気の具合を見ながら、シートをはぐったり、かけたり、水をやったりと細やかな気遣いが続く。土の中で種もみがどんな風に動いているか、それは、見えない。でも、頭の中じゃ常に芽は動いてる。水を吸い込み、ゆるゆると根を出して、真っ白な新芽が土を掻き分けて行く。その健気な様子が見えている。そうやって、土の中の種と頭の中の種はシンクロしつつ育って行くんだ。期待と不を抱えながら常に寄り添う気持ち、作物を育てた人間じゃなきゃわからんさ。
翌日は曇天。でも、気温は高い。ああ、種もみの心地よいつぶやきが聞こえて来るぜ。