もう平成カウントダウン一色だぜ。新聞はなんかわけわからんカラーページでくるまれて配達されるし、中身も半分以上、さよなら平成で埋め尽くされている。テレビの番組表は、カウントダウン特番の競い合いだ。やれやれ。
まっ、根っからのひねくれ者、大勢が騒ぐものからは目を背ける習慣が染みついているってこともあるが、元号が変わるって、そんなでかいことかい?って疑問もある。例えば、昭和って言ったって、戦争があり、敗戦のどん底があり、どうにか立ち上がった戦後復興はあり、所得倍増、オリンピック、万博もあったけど、学生の反乱なんかもあったりして、とてもじゃないが、昭和とは、なんて一括りにできるもんじゃない。平成は昭和ほどの激変はなかったものの、山あり谷あり晴天あり暴風ありで、とらえどころないはずだ。それに、一人一人の生きて来た道筋によっても、印象はまるで違うだろう。印象操作されちゃならんぜ、ご同輩!
世の中がはしゃぎまくってる天皇、皇室ってものについちゃ、以前は、いらねえんじゃね、共和制で十分だろ、過去の負の遺産引きずってることねえんじゃね、と大いに懐疑的だった。昭和天皇が戦争責任、沖縄責任をあきらかにしなかったってことと、天皇を世相転換に利用しようって奴らの存在が大きいけどね。ほら、今も陰に日向にうごめいてる奴らだよ、日本会議とか。でも、平成天皇の行い見ていて、ああ、これならあってもいいかもって思うようになった。被災者に寄り添う姿勢とか、戦争に対する真摯な反省の行動とか、天皇の由来についての正しい認識とか、数々言われてる通りだ。一生を通して贖罪の意識を持ち続けるって並大抵のことじゃないよ。間違いなく素晴らしい人格だ。ここまで頑張って来た天皇に、ご苦労さん、って気持ちは十分にある。
問題は、周りの有象無象だぜ!天皇の気持ちや考え、しっかり受け止めてるんかい?反戦への強い思いとか、侵略への苦く苦しい反省とか、憲法を大切にしようとの決意とか。天皇のメッセージを有難いと思うから騒いでるようにはとても見えんなぁ。どうもなぁ、平成天皇が、こういう人でなかったとしても、世間は浮かれ騒ぐんじゃねえか?昭和天皇の服喪だって異常な自粛だったしな。
そうなのさ、この全員そろって右向け右!って日本人が嫌なのよ。新聞もテレビも元号代りの原色塗りつぶしって気味わるくないか。令和にケチ付けたからって、歴史学者が吊るし上げられる社会っておっかねえんじゃねえ?こういうの過剰な同調意識って言うんだぜ。忖度の根っこってことでもある。
いろんな考えがあり、いろんな感じ方がある。その一つ一つが大切にされる社会、天皇についてもタブーなく発言できる自由な感覚。こういった民主主義の根幹を度忘れしやすいのが、我が同胞のような気がするんだぜ。
世界はポピュリズム!さよなら平成!こんにちは令和!の大騒ぎ、一か所、ポイントが切り替われば、一気にいつか見た風景、なんてことになりかねない。平成天皇は立派な見識と慈愛に満ちた行動力を持っていたから、良かった。が、この先代々の天皇が、同様の考えを持つとは限らない。伝統回帰に引きずられたり、政権に忖度してしまったりする天皇だって、生まれないとは限らない。利用しようとする側は今にも増して、あの手この手を繰り出すことだろう。攻撃や誘導や脅迫や甘言に、信念を持って立ち向かえる天皇であるとは限らない。意図するにせよ、無意識にせよ、時代の潮流を変化させてしまう力を持った存在、それが天皇だ。その危険性を常に孕んでいるのが、日本の天皇制なんだ。そこの危うさってもんは忘れないで欲しいよな。って、言うか、そんなこと思っても見ないんだろな、観客の皆さんは。
今日明日、いやここしばらくはこの浮かれ騒ぎが続くだろう。そんなもんには、目も耳も口も塞いで、やり過ごそう、そう思っていた。が、異論は異論として、はっきり表立てて行く、ってことも大切なのかも知れないと思ってね、一言、世間の熱気に水滴一滴を注いでおこうって思ったわけだぜ。