田んぼの水見に回ったら、人だかり。
「ほれ、アイガモ!」と、移動魚屋のTさん。
「1週間前から、ここらの田を動き回ってんなよ。」「田の草きれいにしてくれてありがたいばりなんだけど、」田んぼの持ち主Kさん。
でも、田んぼの方は除草剤ばっちり利かせてて、アイガモのえさになりそうな雑草や虫など見当たらない。が、生き物が寄って来るってのは、やはり気持ちを和やかにするんだろう。
「どこからきたんだか?」
ここらでアイガモ農法を実践する農家は2軒、そのどちらかだろう、としか考えられないが、どちらの家も一向探してる素振りがない。もう、田の草の季節も終わり、そろそろ穂が出る時期だ。お世話になったカモたちには田から上がってもらわんと、今度はイネの穂を食べ始めちまう。逃げたところで、実害なし、ってことなのか。
田んぼでの役割果たしたアイガモは、飼育小屋でたらふく食わせて太らせ食肉用へと用途を変える。ずいぶん効率がいいと言うか、とことん利用し尽くすって言うか、どこまで行っても家畜は家畜、人間様は人間様ってことだ。
そんな行く末を感づいての逃亡か?このアイガモたち、この先どう生き延びて行くんだろう。飛べない身、よちよち歩きの水鳥、田んぼに水があるのもあと1か月だ。
「なんか獣に食われちまうだろうな。」
「カラスなんかも襲うから。」
まあ、そうだろう。が、できれば、どこかの水辺とかに隠れ家を見つけて、ひっそり次の世代を育てたりできればいいが、なぁんて、そんなの甘くも身勝手な空想だぜ。
逃亡・流浪のアイガモの明日は、限りなく暗い。すまん!身勝手人間様の一人として、役にも立たぬ謝罪・合掌。