ステージおきたま

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『ウィスキー・ウーマン』女たちがウィスキーを支えて来た!

2021-12-16 10:40:38 | 本と雑誌

 久しぶりに本についてだぜ。いや、読んでなかったってわけじゃない。加藤陽子さんの『戦争の日本近現代史』なんて、すっごく刺激的だったし、ためになった。歴史を見る目が上書きされるくらい衝撃的だったなあ。どっちかって言ったら、保守派と自任する人たちにはしてやったりの内容も多く、どうしてこの人を学術会議問題で任用拒否したのかまるで分らない。きっと、読み取る力がなかったんだよな、当時の内閣官房副長官杉田和博には。菅なん読んでもいないかも。ただ、なんとなく左寄りらしい?とか、戦争に批判的だ?くらいのことで、ええい一緒に拒否ちまえ!ってところだったんだしゃないの。加藤陽子さんが、拒否された後、一人沈黙を守っていたのも、私なの?って、不可解さを感じてたんじゃないのかねぇ。まっ、彼女の著作数冊程度読んで勝手に推測するのも雑だけど。

 『モサド・ファイル イスラエル最強スパイ列伝』マイケル・バー=ゾウハーなんて本も面白かった。小説的なノンフィクション、イスラエルの諜報組織モサドの活躍?を丹念に追った本だ。政治の表舞台の陰で、ありとあらゆる陰謀、謀殺、拉致、破壊が行われていたのに目を開かせられた。そうなんだよ、普段目にはつかないが、各国の諜報機関やスパイやテロリストや愛国者や陰謀家が常に暗躍しているのがこの世界なんだ。

 どちらかって言うと、これまでイスラエルは闖入者でパレスチナの人たちへの同情の気持ちが強かったんだが、無理に割り込んだから仕方ないにしても、イスラエルもその国土と自国民を守るために大変な苦労をしてきたってことも理解できた。東欧やアフリカに散らばるユダヤ人をそのコミュニティごと内密でイスラエルに脱出させるなんてこともしていたんだ。もちろん、活動の主体は反イスラエル活動、とりわけテロに対する戦いなんだけど。

 実は、スペインドラマ『ジャガー』、スペインのフランコ独裁政権下匿われる元ナチ高官たちを私的に追跡・糾弾する者たちの活躍を描いた素晴らしい作品、から興味持って、ナチスの残党の執拗な追及の実相を知りたいって思って読み場始めたんだけど、これはこれで手に汗握ったものの、話の中心は対エジプトやイラク、イラン、シリア、それとパレスチナの反イスラエル組織との対峙だった。

 で、そろそろ読み終わりそうなのが、『ウィスキー・ウーマン』フレデリック・三ニックだ。酒がこの世に生み出されてから現在に至るまで、どんだけ女たちが酒作りに貢献してきたかが延々と、ダラダラと書き連ねられている。そう、まず読みづらい本だな。とことん網羅主義なもんだから、短い紹介が次々と連なっている。その都度、関連した人物の名前だろ、土地だろ、醸造所だろ、銘酒名だろ、もう矢継ぎ早過ぎて、とてもウィスキー片手に楽しんでる暇なんってない。

 なんとかかんとか読み通して、分かったことは、酒造りに女は欠かせない!さすがに日本の口噛み酒の話しは出てこないものの、ウィスキーでは女たちの地道な努力が今のブームに繋がっていてるってことだ。アイルランドやスコットランド、それからアメリカのバーボン。聞いたことのある銘酒の数々が、女性経営者やブレンダー、あるいはイベント主催者にの努力によって確立されて来た。

 が、どれもこれも安いもので5,6千円、高いものなど数十万円の酒の話しばっかり聞かされても、出るのはため息ばかり、涎さえ出やしない。まっ、知識として、頭の片隅に入れておこうか、って程度がほとんど、読み続けるのも1日数ページってところで、やたら手間取ってしまった。

 そんな中、一番興味を惹かれたのは、アメリカで禁酒法を先導した女たちのことだ。うはっ、酒の発展妨げた連中じゃん!?何が面白かったか、って、彼女らの活動がとてつもなく暴力的だったってことなんだ。斧持って酒場や蒸留所に乗り込んで、酒樽を次々と叩き割って行ったんだぜ!すげぇぇぇぇ!この直接行動主義。しかも時代は20世紀初頭、女性の選挙権さえ認められていない頃のことだぜ。

 あれっ?この時期って、イギリスのサフラジェットが女性参政権反対派の有力者の店のショーウィンドウ叩き割ったり、郵便ポストに放火したり、果ては首相の別荘を叩き壊したりしてたのと同じ頃じゃないか!うーん、時代の風のようなものが吹いていたのかなぁ、世界規模で。日本じゃどうだ?大正モダン華やかなりし頃、確かに価値破壊的だ。女たちが目覚め始めた時ってことだ。

 禁酒運動って女権拡張とは真っ向の主張のように見えるが、男たち、この場合酔っ払いのぐうたらたちをこのまんまのさばらせておくわけにゃいかないよ、って男社会への強烈なアンチだったって見れば、やはり当時の女性覚醒の風を背に受けての行動だったんじゃないかとも思えるよな。で、この禁酒法制定運動に立ち向かったのも有力な女たちだったてのも、とても面白い。

 そう!もはや女たちの力なしに社会は進まない、って薄っすらと自覚した時代、それがこの第一次世界大戦前の時代風潮なんだろうぜ、きっと。そして、大戦勃発、総力戦が必至となって、銃後の生産はもちろん、戦線においても女たちの力は存分発揮されて行く。もはや、揺り戻しなど不可能となって行く。これがウィスキーの発展、隆盛に結びついて行ったわけだ。

 うーん、興味深い時代だなぁ。ただ、日本では、この自由奔放な女たちの活動は文芸運動とか一部知識階級の葛藤の域を出なかった。モラルの面では、幾つかの破壊が行われたが、直接行動となって世の中を揺り動かしたのは、アナーキスト金子文子くらいのもんだものなぁ。ここでも、やはり、後発性ってことが足を引っ張ったってことなんだろうぜ。

 さぁて、つっかえながらの辛い読書も終わった。次はもっとすらすらと読み進めそうな本を選ぼうぜ。そうだなぁ、宇都宮健児さんお薦めの『閔妃暗殺』なんかいいかも。角田房子さんの書いたものだし。

 


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