喘息に見る心との相関関係 2020/7/7
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先回からの続きです。
池見博士の担当したぜんそく患者の第二例が次である。
* 45歳女性 幼少期に喘息の症状。 小学生ごろから次第に症状が消える。
* 現在の状況は、受診の一年ほど前から再度発作がみられるようになった。
なおらないので、最近では副腎皮質ホルモンを使用するようになる。
肺機能はやや低下、気管支炎などの呼吸器の合併症は見られず。
アレルゲンの皮肉テストは陰性。
血液中の免疫グロプリンEの濃度は低いのでアレルギーの素質は少ない
と考えられる
*心因的因子)
①患者は末っ子でおばあちゃん子。
②思春期以前に両親と死別
③前回発作が出たと言う女学校時代に、甘えさせてくれたおばあちゃん
が亡くなった時期と重なる。
④約1年前の再発時期はご主人の病気や失業があり、将来の生活不安
を感じていた
*治療方法)
腹式呼吸と自律訓練法、 タンの出やすい姿勢の取り方の指導、
面接による心理療法
*所見)
患者はこどものころに両親を失い、その後、祖母も失い、
甘えられない寂しさともっと甘えたいという気持ちが強くあり、
結婚後はご主人にそれを求めたが、甘えさせてくれなかった。
そこで、御主人を怒らせ突き放さなされないよう、顔色を
見ながら生活を送っていた。
その状況自体がすでに発作がおこりやすい体の状態をつくっていた。
そこでご主人に対するそれまでの態度を変えてみると、
御主人の方も変わり、思いつめず、オープンに客観的に
自分の心の中を見ることで、現状を変える貴重な体験を
患者はすることができた。
ご主人との関係がよくなるにつれて、ほかの人たち
との人間関係も楽になっていき、発作が起こる回数も
目に見えて減った。
こうした背景をふまえて、池見博士の一般的な所見を
次のように述べている。
”現実生活での適応が困難な状況におかれると、子供の
ころのやり方として、自分の欲求を自分で満たすのではなく、
人に頼って満たしてもらおうという甘えた態度を取る。
それがうまくいかないと、相手に不満や怒りを抱くと
いったような身勝手な反応をする。
しかもそうした感情を表に出すのは大人げないことに
気がついて、感情を押さえてしまう。
そうした心理状態が発作を起こりやすくする状態に
関係していることが多分にある”
(引用終わり)
喘息と心の関係はこのように顕著に出てくる場合もあり、
喘息に限らず、池見博士は私たちに次のようなアドバイスをしている。
①自分自身が’治療’というドラマを進めて行くうえでの主役
であり、医師や介助するひとたちはあくまでも脇役に過ぎない
という、主体的治療を意識してほしい。
②喘息の場合は特に、発作のきっかけが風邪、アレルゲン、
埃 などという外的状況ばかりに注目するのではなく心身
の状態がよく整えられていれば、たとえ、外的条件が
加わっても、発作は起こらずに済むということをよく
理解してほしい。
③自分の内面をみつめ、発作がおこりやすい状態、起こり
にくい状態を理解して、自発的に
起こりにくい状態を保つように努力してほしい。
喘息を治すということは、体質を根本的に変えてしまうと
いうより、できるだけ、発作が起こりにくいように心身の
バランスを調整しながら発作を予防していく~ということが
大切だ。
以上は患者側へのアドヴァイスだが、家族や職場の人たち
には次のようなアドバイスをしている。
①患者の気持ちをよく聞いてあげて欲しい。
喘息がなおりにくい患者の中には、周りに気を使い、
普通は言ってもかまわないようなことでも言えないで、
我慢している人が多いから。
②発作にくるしんでいるのを助けようと、むやみに助言は
控えること、たとえば、’あんなことをするから発作が
起こるのだ’とか’そんなことをしたらまた、発作が起こる
からやめた方が良い’ とか、患者が何かをしようとした
とき,禁止する言葉を簡単に出さないで欲しい。
なぜなら、治りにくい患者に共通している問題点は、あまり
にも消極的で、自発性がないという性癖が多いから。
むしろ、それができるようになるために励ましたり、
力を貸したりする方が、有効性がある。
③治療期間が長引くほど、患者は心が弱くなりがちなので、
精神的にくずれないように、
温かい精神的な指示や寄り添う心持が何よりも大切になる。
(引用終わり)
*引用箇所:
*1~”ストレス健康法”
池見酉次郎著 昭和50年発行 潮文社
*2~診断書というのは、
医師はできれば遠出してほしくないものの、
もし、万が一、喘息発作など危険な時を配慮して、
その際は自己責任で対処してほしい
という言葉を添えて、この診断書を持たせて
くれた~とその方の弁である。