この夏、神尾真由子さんが「チャイコフスキー国際コンクール」で優勝!諏訪内晶子さん以来17年ぶりの快挙です。世界三大音楽コンクールの一つといわれているものです。
8月に日本に里帰りした神尾真由子さんに密着取材し、ツアー演奏の1ヶ月を追ったドキュメンタリーが放映されました。21歳という若さにもかかわらず、インタビュアーの質問にも、自分の心を思いをいかに正確に表現するか言葉を捜しながらゆっくりと答えるところに誠実さと正直さを感じました。
10歳でソリストとしてデビュー。シャルル・デュトワ指揮のオーケストラで演奏するかわいい映像も出ました。神童といわれた所以がよく理解できます。
ジュリアード音楽院に学び14歳でアメリカデビュー。特集を組んだ新聞は「正確なテクニック、温かくよく響く音、強靭な表現力」と絶賛したようです。
今回のN響コンサートは、ジェームス・ジャッド氏指揮、優勝曲のチャイコフスキー「バイオリン協奏曲」でした。ジャッド氏の評した「音に誠実さと統一感があり、音楽のページをめくっているような弾き方」は、聴き手にぐいぐいと迫るものがあり、何度も録画を回して見ました。
N響のひとりが『一音一音はっきりと、32分音符の細かいところまでパワーあふれる音色だから、音をつけていきやすい』と感想をもらしていました。
珍しかったのは、神尾さんの楽譜が映し出されたことです。びっしりと印と書き込みがされた楽譜。音色にうるおいと深みがあると評されるためには、自分自身の手で自分自身の想像力で書かないといけないのが分かりました。
神尾さんのコメントで『バイオリンは深い甘い音色というけれど、チェロにはかなわない。チェロの深く温かい低音のメロディーにはかなわない。バイオリンはむき出しの金属音で不快直前の音。美しいだけでなく生生しい感情が出ます。』が印象的でした。
面白かったのは、左の写真。上はチャイコフスキーが作曲したもの。下は名前は忘れましたが他のバイオリニストが書き直したもので、音程をとるのが難しくなるが曲は派手になるそうです。どちらを弾くかは自由だとか。こんなこともあるんですね。(私みたいな素人には、NHKのこんな解説がとても面白く思われました。)
神尾さんは恩師のブロン氏と対立しながらも、コンクールでは下を選んで弾き叱られたとか。もともと自分で考える癖がついているのでと笑っていました。
使用しているバイオリンは企業の芸術家支援活動として貸与されたストラディバリで、6年目だそうです。10代の頃からストラディバリを弾いていたんだ・・・やはりすごいと驚きました。
『どんないい楽器でも最初は弾きにくく、自分とツーカーになるまでには1年はかかる。どんな楽器でも自分の音でしかない』と、さりげない言葉の中に見えない努力を垣間見た思いです。
「いい演奏とは?」の質問に、「弾きながら音楽が聞こえて来たとき。聞けなくなったらおしまいです。」の答え。体力にも精神力にも恵まれている神尾さんに期待が大きく膨らみます。
(文中の写真は、NHKの番組をデジカメで撮ったものを使わせていただきました。)