中学の時の美術の先生は実技の指導も熱心だったが、教科書以外の画集を使って美術史の入門的な授業をしてくれたのは、今思い出してもありがたかったな~と思う。
地方住みの中学生にとってはなかなか世界の名画のホンモノを見る機会がなかったが、その小さな画像の中にも心ときめかせる絵画は存在したもんだった。
長じてフランスだのイタリアの美術館でそれらを見る機会にも恵まれたがそのたびに(あっ I先生の授業で習った)とより印象が強くなるのはあの感受性の豊かだった頃、心に刻まれて奥底に潜んでいたものが表面に浮かび上がってキラキラするような いわばフラッシュバックなんじゃないかと思ったりする。
そう思うと幼い頃~思春期での経験って色々させといた方が後の人生が彩豊かになるんじゃないかとも思うんですよね。
その中でワタシが一番印象に残った絵が これだった ↓
「通りの神秘と憂鬱」1941年 デ・キリコ作
この絵を見て どこかで見た不安な夢を思い出されるような ぞわぞわしながらも目を離せないような感覚がかきたてられた。
それ以来機会があったら作品を見たいと思う画家になった ジョルジュ・デ・キリコ
4月から始まっていた美術展だったが やっと今日行けました。
今日はちょっと暑さもおさまり美術館日和だった上野界隈であります。
都美術館です。2時半くらいに着くように行ったら入場待ちもなく入館してからもちょうどいい混み具合。
こういうのは一人で見るのがいいですね。音声ガイドも借りてじっくり見た。
ピカソもその生涯の「時代」によって作品の雰囲気が異なるが この人も時代によって違うんですね~
作品展では
形而上絵画の時代(遠近法を無視したような広場やマヌカンを登場させた絵画)
→古典絵画への回帰(ティッツィアーノなどルネサンス期の古典絵画やルーベンスなどのバロック期の作品にひかれて伝統的な表現の研究や実践をしていた時代)
→新形而上絵画(再び形而上絵画に取り組み 以前の街やマヌカンといったモチーフに太陽や月などが組み込まれた新境地)
こういった変化をいっぺんに見ることができて非常に興味深かったのであります。
館内写真はダメだったので(ちょっと残念だけど絵の前に立ちはだかって何枚も写真撮る人がいないってのはいいもんですね 自分も鑑賞だけに集中できるし)
以下は複製が飾られたフォトスポットのもの
オデュッセウスの帰還 1968年
不安を与えるミューズたち 1950年
バラ色の塔のあるイタリア広場 1914年
白鳥のいる神秘的な水浴 1958年
予言者 1914年
時代もバラバラに上げてしまって申し訳ないですね。
このフォトスポットにはなかったが
この古典絵画への回帰的作品もあるのよ
風景の中で水浴する女たちと赤い布 1945年
少女の肖像 1920年
難解といえば難解なんだけど その時代の変化をナチュラルに受け入れて自分なりの鑑賞を楽しめればいいんだなと開き直る
もう晩年に近い頃の作品 「オデュッセウスの帰還」がワタシは好きだな~
トロイア戦争のあとまっすぐ故郷に帰ればいいものの あちこちほっつき歩いていたオデュッセウス その旅、大海原と感じて動いていたのは自分の部屋だったのでしょうか?
この絵はカーペットの海原でボートを漕ぐオデュッセウス(キリコ自身?)
正面と左右には彼のモチーフにもよく使われていたタンスと椅子があり、左の壁にはイタリア広場の画が窓からはギリシャ風の神殿が見える。
さまざまな変遷を経て集大成みたいな絵。で、人生経験と達観みたいのが感じられて余裕とユーモアみたいなのを感じる。
あまりにも気に入ったので絵葉書と飾る枠を買ってきた。
あ~ 面白かったな~と満足だった美術展でした。
広場で下町ハイボールのフェスをやってて心惹かれたが寄らずに真面目に帰って来ましたよ。