fixed time 約束の時
第78話 灯僥act.12-another,side story「陽はまた昇る」
今夜が明けてしまう、もう明日だ。
明日なんて来なくていいと願った夜、けれど太陽もう昇りだす。
その明るみ瞑った瞳にも映りこむ、だから披きたくない願いは幼い我儘だ。
そう解っているけれど未練まだ瞳を披けない、そのままに周太はブランケットのなか数えた。
―蒔田さんの部屋で何していたのか聴けなかった、お父さんの日記もお祖父さんの拳銃も…約束も、
みっつ、確かめたくて昨夜はここに来た。
そして約束を確かめたかった、けれど何ひとつ叶わないまま夜は明ける。
こんなふう終わってしまう再会は鼓動ごと抉られて涙あふれてしまう、だって何ひとつ確かめられなかった君の真実は。
―英二、何のためにお父さんのこと追いかけるの?どうして僕と出逢ったの…どうして僕に逢いに来たの?
逢いたかった、そう昨日も言ってくれた。
いくども口説き文句を微笑んだ、けれど本音ひとつ何も聴けていない、体温すら解からない。
唯ひとつ、濡れた半裸のまま抱きしめナイフ取りあげてくれた、あの必死な貌と声だけが昨夜の真実かもしれない。
『お願いだ周太、俺の知らないところで死のうとかしないでよ?逝くなら俺も一緒に逝くから、だから独りでやるな周太お願いだから、』
ねえ英二、あの言葉すべて真実だと信じていいの?
『俺は周太の傍にいくよ?俺には周太しかいない、もう俺から離れられないって諦めてよ、勝手にどこかいかないで周太、なんでもするから傍にいて、』
なんでもするって言ったのに英二、どうして何ひとつ話してくれないの?
林檎ひとつ剥こうとしたナイフを君は自殺と誤解した、あの誤解のまま死んでやると脅せば君は話してくれた?
そうしたら今こんなに泣きたい気持ちも楽だったろうか、それとも全てを聴いたら絶望したのだろうか?
そんな思案めぐらすまま瞑った瞳を披けないベッドに綺麗な低い声おだやかに囁いた。
「…周太、北岳草のこと憶えてる?」
今、なんて言ってくれたの?
いま大切な約束が聞えた、これは微睡みの夢だろうか?
そんな想いに衣擦れかすかに近づいて少し、ほんの少しだけ手に温もりふれた。
―いま英二、僕の手をさわってくれてる?
シーツに置いた手そっと指先の温度なぞらせる。
ふれるだけの小さな温もりは微かで、けれど記憶が知っている。
だって自分はこの指に救われ愛しまれた、あの幸せな時間と同じ声ひそやかに微笑んだ。
「すごいな、周太は…かっこいいよ、」
何をかっこいいと言ってくれるの?
そう訊きたい、約束のことも確かめたい、けれど瞳披いたらもう離れてしまう。
このベッドから起きてこの部屋から出たらもう離れていく、そして自分はどうなるか解らない。
そんな現実に披けない瞳のまま優しい温もりは手にふれる、この小さな温もり離したくなくて身じろぎ掌つかんだ。
「あ、」
ほら驚いたような声、この声がさっき約束もささやいた。
あの約束もう一度だけ聴かせてほしい、確かめさせてほしい、もう一度聴きたい。
今もこの手を愛しんでくれるなら、もう人を傷つけてしまった今でも想ってくれるなら?その願い瞳ゆっくり披いた。
「…えいじ、」
呼びかけた真中で暁の光まばゆく笑顔が遠い。
いま少し目が慣れたら見えるはず、ゆっくり瞬いて見つめて、けれど大好きな声が微笑んだ。
「おはよう周太、そろそろ行くか?」
待って、今すこしだけ。
今は行きたくない、もう少しだけ傍にいて、だってもう逢えないかもしれない。
だって今が最期かもしれない逢えなくなる、それを告げたら君はなんて言ってくれるのだろう?
―英二、僕は命令違反を2度もしたんだ、だから同じになるかもしれない、
同じになるかもしれない、父や祖父と同じに。
父の殉職、祖父の客死、どちらも事故と病死にされているけれど真実は?
その推定は祖父の小説が事実であるなら「故意」としか思えない、あまりにも出来すぎている。
そうして考えた果てに見えてしまう答えがある、なぜ父と祖父は「故意に死ぬ」ことになったのだろう?
その答えは「あの男」観碕征治への叛意だとしたら?
―僕も殺される、観碕さんの罠で、
だって新宿署管内で起きた発砲事件、あれは本当にあの人が殺害犯だろうか?
『俺を先に撃てたんです、けれど撃たなかった。その隙に振向いた俺と警察官の目が一瞬だけ合いました、それなのに怯えていた俺はそのまま撃って、』
あの店主は過去に暴力団員だった、けれど拳銃の扱いに長けていたわけじゃない。
それは過去の告白から解かる、そんな男が父をあんなふうに狙撃するなど可能だろうか?
この「常識」に推論ひとつ確認を今日したい、もし自分の推論が真実なら痕跡が遺されている可能性がある。
そうして真実ひとつだけでも確かめたい、自責すこしでも軽くしてあげたい、そんな願いに父そっくりの眼差しは暁のベッド微笑んだ。
「周太、今度の夏は必ず北岳草を見せてあげるよ?絶対の約束だ、」
ああやっぱり君は憶えていた。
今でも絶対の約束だと告げてくれた、再会の夏はあるのだと笑ってくれる。
この言葉だけでも聴けたなら昨夜の選択を後悔しなくていい、この約束ひとつで全て報われる。
だって自分には北岳も北岳草も特別で、そして高峰の世界に君と行けることは夢の涯の祈りだ。
―英二、僕の喘息を知ってるのに約束してくれるのは…ね、僕の根性もすこしは認めてくれてるって想っていい?
標高3,193m 北岳、母国第2峰にも登れる自分だと認めてくれる?
そう想ってくれるなら嬉しい、そして願い叶えたいと明日の先も信じたくなる。
それでも自分はこの部屋を出たら確かめに行くだろう、その後は何も解らない。
何ひとつ解らない約束なんて出来ない、それでも信じたい「いつか」に笑いかけた。
「北岳草を僕に見せて、英二…信じるから、」
ほら、もう夜明は近い、今は暁闇に昏くてもいつか君と笑いたい。
唯ひとり君を見つめていられる日を信じていたい、叶わないとしても。
もし叶わないとしても自分は後悔なんかしない、この幸福ひとつ見つめ笑いかけた。
「英二、りんご半分こしよ?朝ごはんには足りないけど医者いらずだから…うさぎさんりんごすきかな?」
この場所に来ることは何ヶ月ぶりだろう?
止まない往来は相変わらず無関心、そして忙しない。
足早なスーツ姿たち、うずくまる浮浪者風、重たい鞄の作業着姿もある。
さまざまに人々は平日の朝を通り過ぎてゆく、そんな人ごみに周太は線路の下ひろがる通路へ踏みこんだ。
―お父さん…場所を教えて?
心問いかけ歩いてゆくガード下は薄闇わだかまる。
ライトは点いて人も多い、それでも暗く感じるのは命消えた墓所だと想うせいだろうか?
そんな思案と歩いてゆく足元から靴音は響き往来に消されて、そして立止りポイント見まわした。
―たぶんこのあたり、だね…お父さん、
コンクリートの壁は蛍光灯どこか冷たく光る、そこから振りむき位置を計測してゆく。
いま往来に遮られる向こうガード下から繁華街は見える、あの地点で振りむいたろう?
それは追いかけてきた声に反応して振り向いた、そのとき立止った目標は今いる辺り。
では、あの場所から発砲したのなら着弾点は?
―もし逸れるとしたら発砲の反動から考えて、
発砲の反動といわれる動きは本来、弾丸が発射される方向と逆向きへ水平方向に働く。
これが反作用といわれる力だが構造上、銃を支えているグリップ部分が反作用の働く位置より下になるため、そこが支点となる回転運動が起き銃が上を向く。
こうした銃口の跳ね上がりを防ぐためには水平方向に銃を保持して反動に耐えるか、肘全体を後方にスライドさせ反動を逃がす。
けれど14年前の発砲者は混乱していた、そして銃を撃つことも初めてだった、その不慣れから答えは見えてくる。
『俺を先に撃てたんです、けれど撃たなかった。その隙に振向いた俺と警察官の目が一瞬だけ合いました、それなのに怯えていた俺はそのまま撃って、』
年始1月の弾道調査ファイル、あのデータと14年前の心理状態そして物理的法則に導かれる着弾点は?
「ん…、」
見あげた先、昏い天井に一点なにか光って見える。
あの鈍い輝きは銃を持つごと見覚えてしまった、その見慣れた光に携帯電話のカメラ向けた。
かしゃん、
機械音かすかに撮られて画面を確かめる。
同じように新宿署の廊下でも撮影した、あれと同じよう天井の一点も鮮明に写る。
こんなふうに工学部で学んだ技術は役に立つ、その確認と現実にため息ひとつ添付ファイルで送信した。
―これで僕のパソコンに入った、ね、
新宿署の映像もパソコンへ転送してから媒体に保存してある。
だって携帯電話いつ取りあげられるか解らない、その可能性に保険は掛けておく。
こんなふうに地道に自分は欠片ひろい集めるしかない、そんな一つ終えた安心に肩ひとつ敲かれ呼ばれた。
「湯原、来い、」
低く透る声、この声を自分は知っている。
もう振り向かなくても解かる声、その理解ままにダッフルコートの腕は捕まれた。
(to be continued)
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第78話 灯僥act.12-another,side story「陽はまた昇る」
今夜が明けてしまう、もう明日だ。
明日なんて来なくていいと願った夜、けれど太陽もう昇りだす。
その明るみ瞑った瞳にも映りこむ、だから披きたくない願いは幼い我儘だ。
そう解っているけれど未練まだ瞳を披けない、そのままに周太はブランケットのなか数えた。
―蒔田さんの部屋で何していたのか聴けなかった、お父さんの日記もお祖父さんの拳銃も…約束も、
みっつ、確かめたくて昨夜はここに来た。
そして約束を確かめたかった、けれど何ひとつ叶わないまま夜は明ける。
こんなふう終わってしまう再会は鼓動ごと抉られて涙あふれてしまう、だって何ひとつ確かめられなかった君の真実は。
―英二、何のためにお父さんのこと追いかけるの?どうして僕と出逢ったの…どうして僕に逢いに来たの?
逢いたかった、そう昨日も言ってくれた。
いくども口説き文句を微笑んだ、けれど本音ひとつ何も聴けていない、体温すら解からない。
唯ひとつ、濡れた半裸のまま抱きしめナイフ取りあげてくれた、あの必死な貌と声だけが昨夜の真実かもしれない。
『お願いだ周太、俺の知らないところで死のうとかしないでよ?逝くなら俺も一緒に逝くから、だから独りでやるな周太お願いだから、』
ねえ英二、あの言葉すべて真実だと信じていいの?
『俺は周太の傍にいくよ?俺には周太しかいない、もう俺から離れられないって諦めてよ、勝手にどこかいかないで周太、なんでもするから傍にいて、』
なんでもするって言ったのに英二、どうして何ひとつ話してくれないの?
林檎ひとつ剥こうとしたナイフを君は自殺と誤解した、あの誤解のまま死んでやると脅せば君は話してくれた?
そうしたら今こんなに泣きたい気持ちも楽だったろうか、それとも全てを聴いたら絶望したのだろうか?
そんな思案めぐらすまま瞑った瞳を披けないベッドに綺麗な低い声おだやかに囁いた。
「…周太、北岳草のこと憶えてる?」
今、なんて言ってくれたの?
いま大切な約束が聞えた、これは微睡みの夢だろうか?
そんな想いに衣擦れかすかに近づいて少し、ほんの少しだけ手に温もりふれた。
―いま英二、僕の手をさわってくれてる?
シーツに置いた手そっと指先の温度なぞらせる。
ふれるだけの小さな温もりは微かで、けれど記憶が知っている。
だって自分はこの指に救われ愛しまれた、あの幸せな時間と同じ声ひそやかに微笑んだ。
「すごいな、周太は…かっこいいよ、」
何をかっこいいと言ってくれるの?
そう訊きたい、約束のことも確かめたい、けれど瞳披いたらもう離れてしまう。
このベッドから起きてこの部屋から出たらもう離れていく、そして自分はどうなるか解らない。
そんな現実に披けない瞳のまま優しい温もりは手にふれる、この小さな温もり離したくなくて身じろぎ掌つかんだ。
「あ、」
ほら驚いたような声、この声がさっき約束もささやいた。
あの約束もう一度だけ聴かせてほしい、確かめさせてほしい、もう一度聴きたい。
今もこの手を愛しんでくれるなら、もう人を傷つけてしまった今でも想ってくれるなら?その願い瞳ゆっくり披いた。
「…えいじ、」
呼びかけた真中で暁の光まばゆく笑顔が遠い。
いま少し目が慣れたら見えるはず、ゆっくり瞬いて見つめて、けれど大好きな声が微笑んだ。
「おはよう周太、そろそろ行くか?」
待って、今すこしだけ。
今は行きたくない、もう少しだけ傍にいて、だってもう逢えないかもしれない。
だって今が最期かもしれない逢えなくなる、それを告げたら君はなんて言ってくれるのだろう?
―英二、僕は命令違反を2度もしたんだ、だから同じになるかもしれない、
同じになるかもしれない、父や祖父と同じに。
父の殉職、祖父の客死、どちらも事故と病死にされているけれど真実は?
その推定は祖父の小説が事実であるなら「故意」としか思えない、あまりにも出来すぎている。
そうして考えた果てに見えてしまう答えがある、なぜ父と祖父は「故意に死ぬ」ことになったのだろう?
その答えは「あの男」観碕征治への叛意だとしたら?
―僕も殺される、観碕さんの罠で、
だって新宿署管内で起きた発砲事件、あれは本当にあの人が殺害犯だろうか?
『俺を先に撃てたんです、けれど撃たなかった。その隙に振向いた俺と警察官の目が一瞬だけ合いました、それなのに怯えていた俺はそのまま撃って、』
あの店主は過去に暴力団員だった、けれど拳銃の扱いに長けていたわけじゃない。
それは過去の告白から解かる、そんな男が父をあんなふうに狙撃するなど可能だろうか?
この「常識」に推論ひとつ確認を今日したい、もし自分の推論が真実なら痕跡が遺されている可能性がある。
そうして真実ひとつだけでも確かめたい、自責すこしでも軽くしてあげたい、そんな願いに父そっくりの眼差しは暁のベッド微笑んだ。
「周太、今度の夏は必ず北岳草を見せてあげるよ?絶対の約束だ、」
ああやっぱり君は憶えていた。
今でも絶対の約束だと告げてくれた、再会の夏はあるのだと笑ってくれる。
この言葉だけでも聴けたなら昨夜の選択を後悔しなくていい、この約束ひとつで全て報われる。
だって自分には北岳も北岳草も特別で、そして高峰の世界に君と行けることは夢の涯の祈りだ。
―英二、僕の喘息を知ってるのに約束してくれるのは…ね、僕の根性もすこしは認めてくれてるって想っていい?
標高3,193m 北岳、母国第2峰にも登れる自分だと認めてくれる?
そう想ってくれるなら嬉しい、そして願い叶えたいと明日の先も信じたくなる。
それでも自分はこの部屋を出たら確かめに行くだろう、その後は何も解らない。
何ひとつ解らない約束なんて出来ない、それでも信じたい「いつか」に笑いかけた。
「北岳草を僕に見せて、英二…信じるから、」
ほら、もう夜明は近い、今は暁闇に昏くてもいつか君と笑いたい。
唯ひとり君を見つめていられる日を信じていたい、叶わないとしても。
もし叶わないとしても自分は後悔なんかしない、この幸福ひとつ見つめ笑いかけた。
「英二、りんご半分こしよ?朝ごはんには足りないけど医者いらずだから…うさぎさんりんごすきかな?」
この場所に来ることは何ヶ月ぶりだろう?
止まない往来は相変わらず無関心、そして忙しない。
足早なスーツ姿たち、うずくまる浮浪者風、重たい鞄の作業着姿もある。
さまざまに人々は平日の朝を通り過ぎてゆく、そんな人ごみに周太は線路の下ひろがる通路へ踏みこんだ。
―お父さん…場所を教えて?
心問いかけ歩いてゆくガード下は薄闇わだかまる。
ライトは点いて人も多い、それでも暗く感じるのは命消えた墓所だと想うせいだろうか?
そんな思案と歩いてゆく足元から靴音は響き往来に消されて、そして立止りポイント見まわした。
―たぶんこのあたり、だね…お父さん、
コンクリートの壁は蛍光灯どこか冷たく光る、そこから振りむき位置を計測してゆく。
いま往来に遮られる向こうガード下から繁華街は見える、あの地点で振りむいたろう?
それは追いかけてきた声に反応して振り向いた、そのとき立止った目標は今いる辺り。
では、あの場所から発砲したのなら着弾点は?
―もし逸れるとしたら発砲の反動から考えて、
発砲の反動といわれる動きは本来、弾丸が発射される方向と逆向きへ水平方向に働く。
これが反作用といわれる力だが構造上、銃を支えているグリップ部分が反作用の働く位置より下になるため、そこが支点となる回転運動が起き銃が上を向く。
こうした銃口の跳ね上がりを防ぐためには水平方向に銃を保持して反動に耐えるか、肘全体を後方にスライドさせ反動を逃がす。
けれど14年前の発砲者は混乱していた、そして銃を撃つことも初めてだった、その不慣れから答えは見えてくる。
『俺を先に撃てたんです、けれど撃たなかった。その隙に振向いた俺と警察官の目が一瞬だけ合いました、それなのに怯えていた俺はそのまま撃って、』
年始1月の弾道調査ファイル、あのデータと14年前の心理状態そして物理的法則に導かれる着弾点は?
「ん…、」
見あげた先、昏い天井に一点なにか光って見える。
あの鈍い輝きは銃を持つごと見覚えてしまった、その見慣れた光に携帯電話のカメラ向けた。
かしゃん、
機械音かすかに撮られて画面を確かめる。
同じように新宿署の廊下でも撮影した、あれと同じよう天井の一点も鮮明に写る。
こんなふうに工学部で学んだ技術は役に立つ、その確認と現実にため息ひとつ添付ファイルで送信した。
―これで僕のパソコンに入った、ね、
新宿署の映像もパソコンへ転送してから媒体に保存してある。
だって携帯電話いつ取りあげられるか解らない、その可能性に保険は掛けておく。
こんなふうに地道に自分は欠片ひろい集めるしかない、そんな一つ終えた安心に肩ひとつ敲かれ呼ばれた。
「湯原、来い、」
低く透る声、この声を自分は知っている。
もう振り向かなくても解かる声、その理解ままにダッフルコートの腕は捕まれた。
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