萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第78話 灯僥act.12-another,side story「陽はまた昇る」

2014-09-25 22:00:00 | 陽はまた昇るanother,side story
fixed time 約束の時



第78話 灯僥act.12-another,side story「陽はまた昇る」

今夜が明けてしまう、もう明日だ。

明日なんて来なくていいと願った夜、けれど太陽もう昇りだす。
その明るみ瞑った瞳にも映りこむ、だから披きたくない願いは幼い我儘だ。
そう解っているけれど未練まだ瞳を披けない、そのままに周太はブランケットのなか数えた。

―蒔田さんの部屋で何していたのか聴けなかった、お父さんの日記もお祖父さんの拳銃も…約束も、

みっつ、確かめたくて昨夜はここに来た。
そして約束を確かめたかった、けれど何ひとつ叶わないまま夜は明ける。
こんなふう終わってしまう再会は鼓動ごと抉られて涙あふれてしまう、だって何ひとつ確かめられなかった君の真実は。

―英二、何のためにお父さんのこと追いかけるの?どうして僕と出逢ったの…どうして僕に逢いに来たの?

逢いたかった、そう昨日も言ってくれた。
いくども口説き文句を微笑んだ、けれど本音ひとつ何も聴けていない、体温すら解からない。
唯ひとつ、濡れた半裸のまま抱きしめナイフ取りあげてくれた、あの必死な貌と声だけが昨夜の真実かもしれない。

『お願いだ周太、俺の知らないところで死のうとかしないでよ?逝くなら俺も一緒に逝くから、だから独りでやるな周太お願いだから、』

ねえ英二、あの言葉すべて真実だと信じていいの?

『俺は周太の傍にいくよ?俺には周太しかいない、もう俺から離れられないって諦めてよ、勝手にどこかいかないで周太、なんでもするから傍にいて、』

なんでもするって言ったのに英二、どうして何ひとつ話してくれないの?

林檎ひとつ剥こうとしたナイフを君は自殺と誤解した、あの誤解のまま死んでやると脅せば君は話してくれた?
そうしたら今こんなに泣きたい気持ちも楽だったろうか、それとも全てを聴いたら絶望したのだろうか?
そんな思案めぐらすまま瞑った瞳を披けないベッドに綺麗な低い声おだやかに囁いた。

「…周太、北岳草のこと憶えてる?」

今、なんて言ってくれたの?

いま大切な約束が聞えた、これは微睡みの夢だろうか?
そんな想いに衣擦れかすかに近づいて少し、ほんの少しだけ手に温もりふれた。

―いま英二、僕の手をさわってくれてる?

シーツに置いた手そっと指先の温度なぞらせる。
ふれるだけの小さな温もりは微かで、けれど記憶が知っている。
だって自分はこの指に救われ愛しまれた、あの幸せな時間と同じ声ひそやかに微笑んだ。

「すごいな、周太は…かっこいいよ、」

何をかっこいいと言ってくれるの?

そう訊きたい、約束のことも確かめたい、けれど瞳披いたらもう離れてしまう。
このベッドから起きてこの部屋から出たらもう離れていく、そして自分はどうなるか解らない。
そんな現実に披けない瞳のまま優しい温もりは手にふれる、この小さな温もり離したくなくて身じろぎ掌つかんだ。

「あ、」

ほら驚いたような声、この声がさっき約束もささやいた。
あの約束もう一度だけ聴かせてほしい、確かめさせてほしい、もう一度聴きたい。
今もこの手を愛しんでくれるなら、もう人を傷つけてしまった今でも想ってくれるなら?その願い瞳ゆっくり披いた。

「…えいじ、」

呼びかけた真中で暁の光まばゆく笑顔が遠い。
いま少し目が慣れたら見えるはず、ゆっくり瞬いて見つめて、けれど大好きな声が微笑んだ。

「おはよう周太、そろそろ行くか?」

待って、今すこしだけ。

今は行きたくない、もう少しだけ傍にいて、だってもう逢えないかもしれない。
だって今が最期かもしれない逢えなくなる、それを告げたら君はなんて言ってくれるのだろう?

―英二、僕は命令違反を2度もしたんだ、だから同じになるかもしれない、

同じになるかもしれない、父や祖父と同じに。

父の殉職、祖父の客死、どちらも事故と病死にされているけれど真実は?
その推定は祖父の小説が事実であるなら「故意」としか思えない、あまりにも出来すぎている。
そうして考えた果てに見えてしまう答えがある、なぜ父と祖父は「故意に死ぬ」ことになったのだろう?

その答えは「あの男」観碕征治への叛意だとしたら?

―僕も殺される、観碕さんの罠で、

だって新宿署管内で起きた発砲事件、あれは本当にあの人が殺害犯だろうか?

『俺を先に撃てたんです、けれど撃たなかった。その隙に振向いた俺と警察官の目が一瞬だけ合いました、それなのに怯えていた俺はそのまま撃って、』

あの店主は過去に暴力団員だった、けれど拳銃の扱いに長けていたわけじゃない。
それは過去の告白から解かる、そんな男が父をあんなふうに狙撃するなど可能だろうか?
この「常識」に推論ひとつ確認を今日したい、もし自分の推論が真実なら痕跡が遺されている可能性がある。
そうして真実ひとつだけでも確かめたい、自責すこしでも軽くしてあげたい、そんな願いに父そっくりの眼差しは暁のベッド微笑んだ。

「周太、今度の夏は必ず北岳草を見せてあげるよ?絶対の約束だ、」

ああやっぱり君は憶えていた。

今でも絶対の約束だと告げてくれた、再会の夏はあるのだと笑ってくれる。
この言葉だけでも聴けたなら昨夜の選択を後悔しなくていい、この約束ひとつで全て報われる。
だって自分には北岳も北岳草も特別で、そして高峰の世界に君と行けることは夢の涯の祈りだ。

―英二、僕の喘息を知ってるのに約束してくれるのは…ね、僕の根性もすこしは認めてくれてるって想っていい?

標高3,193m 北岳、母国第2峰にも登れる自分だと認めてくれる?

そう想ってくれるなら嬉しい、そして願い叶えたいと明日の先も信じたくなる。
それでも自分はこの部屋を出たら確かめに行くだろう、その後は何も解らない。
何ひとつ解らない約束なんて出来ない、それでも信じたい「いつか」に笑いかけた。

「北岳草を僕に見せて、英二…信じるから、」

ほら、もう夜明は近い、今は暁闇に昏くてもいつか君と笑いたい。

唯ひとり君を見つめていられる日を信じていたい、叶わないとしても。
もし叶わないとしても自分は後悔なんかしない、この幸福ひとつ見つめ笑いかけた。

「英二、りんご半分こしよ?朝ごはんには足りないけど医者いらずだから…うさぎさんりんごすきかな?」




この場所に来ることは何ヶ月ぶりだろう?

止まない往来は相変わらず無関心、そして忙しない。
足早なスーツ姿たち、うずくまる浮浪者風、重たい鞄の作業着姿もある。
さまざまに人々は平日の朝を通り過ぎてゆく、そんな人ごみに周太は線路の下ひろがる通路へ踏みこんだ。

―お父さん…場所を教えて?

心問いかけ歩いてゆくガード下は薄闇わだかまる。
ライトは点いて人も多い、それでも暗く感じるのは命消えた墓所だと想うせいだろうか?
そんな思案と歩いてゆく足元から靴音は響き往来に消されて、そして立止りポイント見まわした。

―たぶんこのあたり、だね…お父さん、

コンクリートの壁は蛍光灯どこか冷たく光る、そこから振りむき位置を計測してゆく。
いま往来に遮られる向こうガード下から繁華街は見える、あの地点で振りむいたろう?
それは追いかけてきた声に反応して振り向いた、そのとき立止った目標は今いる辺り。

では、あの場所から発砲したのなら着弾点は?

―もし逸れるとしたら発砲の反動から考えて、

発砲の反動といわれる動きは本来、弾丸が発射される方向と逆向きへ水平方向に働く。
これが反作用といわれる力だが構造上、銃を支えているグリップ部分が反作用の働く位置より下になるため、そこが支点となる回転運動が起き銃が上を向く。
こうした銃口の跳ね上がりを防ぐためには水平方向に銃を保持して反動に耐えるか、肘全体を後方にスライドさせ反動を逃がす。
けれど14年前の発砲者は混乱していた、そして銃を撃つことも初めてだった、その不慣れから答えは見えてくる。

『俺を先に撃てたんです、けれど撃たなかった。その隙に振向いた俺と警察官の目が一瞬だけ合いました、それなのに怯えていた俺はそのまま撃って、』

年始1月の弾道調査ファイル、あのデータと14年前の心理状態そして物理的法則に導かれる着弾点は?

「ん…、」

見あげた先、昏い天井に一点なにか光って見える。
あの鈍い輝きは銃を持つごと見覚えてしまった、その見慣れた光に携帯電話のカメラ向けた。

かしゃん、

機械音かすかに撮られて画面を確かめる。
同じように新宿署の廊下でも撮影した、あれと同じよう天井の一点も鮮明に写る。
こんなふうに工学部で学んだ技術は役に立つ、その確認と現実にため息ひとつ添付ファイルで送信した。

―これで僕のパソコンに入った、ね、

新宿署の映像もパソコンへ転送してから媒体に保存してある。
だって携帯電話いつ取りあげられるか解らない、その可能性に保険は掛けておく。
こんなふうに地道に自分は欠片ひろい集めるしかない、そんな一つ終えた安心に肩ひとつ敲かれ呼ばれた。

「湯原、来い、」

低く透る声、この声を自分は知っている。
もう振り向かなくても解かる声、その理解ままにダッフルコートの腕は捕まれた。



(to be continued)

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山岳点景:北郷の空、水鏡

2014-09-25 21:00:00 | 写真:山岳点景
青色の輝度×緯度



山岳点景:北郷の空、水鏡

ノルウェーのフィヨルドで撮った空×水鏡です。
コンデジなので画質イマイチなんですけど、緯度の高い空に特有の金属的ブルーがきれいでした。



北欧は建築から家具・カトラリーあれこれ好みなので行ったんですけど、
水道水がフツーに飲める+魚介類・果物が豊富で美味しい+自然も街も綺麗です、笑
行ったのは6月上旬で白夜すぐ前、夕暮が23時ごろなので夜空は滞在中に全く見ませんでした。

で、ソンナ23時は↓こんな感じです、雪山のアーベンロートが綺麗で寝るの勿体なくて困ります、笑



夜明も早いので朝の散策が愉しいんですけど、
ノルウェーは生垣にライラックをよく見ました、で、花盛りでびっくりするほど綺麗でした。
街でも郊外でも日本の桜みたいな感覚であちこち見ましたけど、薄紫と緑のコントラストは北国の初夏に映えます。



あと、カモメがやたらフレンドリーです、笑

空と雲 41ブログトーナメント



Aesculapius「Chiron21」校了しました、雅樹と光一の夜明ひと時です。
第78話「灯僥12」もう少しで校了します、周太@新宿の朝2幕ってカンジです。
このあと短編連載かなんかUP出来たらなって思っています、そのあとAesculapiusの続き予定です。

夜取り急ぎ、



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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚220

2014-09-25 00:44:00 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚220

土曜夕方から御曹司クンと横浜にて呑んで、

「あのさ、連泊で出張に行くことになりそうでさー…二人で行くんだけど、」

なんて業務連絡を御曹司クンがくれたんだけど、
その正体は連泊=二人旅行→ときめいちゃうかもドウシヨウ?っていう話だったから、

「で、お相手がイケメン君なんだろ、誰?笑」
「城戸さん(仮名)だよ、」

坊ちゃんクンと城戸さんは顔タイプが似ている=どっちも野球少年系=日焼肌×二重目×太眉凛々しいタイプ

だから御曹司クンの好みが解かるなって納得したから、
オマエああいう顔好きなんだねーなんて気楽に言ったら言われた、

「だから俺おまえは本気だって自覚させられるんだよ、おまえアアいう顔と違うタイプじゃん?」
「吊橋効果っぽいよね、おまえがゲイ寄りバイだって解かっても否定しないの嬉しくて、緊張と不安が消えたコト恋愛ごっちゃにしてるカンジ、笑」
「そういうこと言うとかってホントSだ、もうさー…そんなに俺がおまえ好きなことって否定したい?」

なんて感じにいつもの堂々巡りな質問やってきて、で、言ってみた、

「自分のこと好きでもナンの発展性も無いだろ、不毛なコト拘ってんのモッタイナイよ?笑」

ほんと時間と精神力の無駄遣いモッタイナイだろう?
そう想ったまんま言ったら言われた、

「俺にはもったいなくない、おまえを好きでいない方がもったいないもんね、」

なんて言ったら良いのやら?笑

こんなこと言ってくるアタリある意味途方にくれさせられる、
だって議論になりもしないだろう?そんな相手に言ってやった、

「花サンに向きあわない方が余程モッタイナイと思うけどね?おまえ結婚して子供ほしいとか言ってたじゃん、笑」

人生設計があるんならソレに合う選択しないとね?
こんな当り前を言ったんだけど御曹司クンは言った、

「希望はそうだけどさ、好きになったら仕方ねえじゃんかー…ってかホント俺さあ、出張でドウなるか自信無い、おまえの所為だからな?」

なんで自分の所為なんだ?って想ったから言ってみた、

「おまえの恋愛事情をコッチの責任にしないでくれる?そういう乱暴は嫌いだよ、笑」
「責任っていうかオマエのこと好きだから寂しくなるんだってば、」

すぐ言い返してくる言葉になんだかなって想った、
確かに恋愛って幸福感と孤独のリンクなとこあるだろう、でもソレを理由に「ドウなるか自信無い」なんて知るかってなる、笑
で、そう想ったまんま言ってやった、

「寂しいのはオマエのメンタル問題だろが?出張フタリキリどうなるとかも全部おまえの責任だよ、ヒトの所為にするとかミットモナイね?笑」

ほんとミットモナイそういう責任転嫁は、笑
だから言われる分だけ冷める、で、自分の貌もソレナリ冷静すぎたらしく言われた、

「おまえの今の笑顔なんか冷たい、俺のコトほんとミットモナイって蔑んでるんだろ?」
「ある意味そうだね、笑」

ってカンジに素直に応えたら言われた、

「ほんと俺だって自分でミットモナイの解ってるし、さー…でも俺ほんと一緒にいたい、嫌いにはならないでよ?」

嫌いにはならないでよ?なんてお願いされても正直困る、
だって嫌うようなコトされたら嫌うのが当り前だ、そんな当然を笑ってやった、

「コッチが嫌いになるような事されたら嫌いになるの当り前だろ、おまえ既に花サンのコトで嫌われて当り前って解ってるよね?」
「…わかってるからココンとこ電話とか我慢してたし、さー…」

言いながら御曹司クンはグラス口つけて、
ノンアルコールのはずなのに酔っぱらったみたいな目で言った、

「出張、再来週から1週間だけど忘れる良い機会だっても解ってるから、」



昨日もバナー押して頂けたのでUPします、そういう反応がもらえること感謝で、笑

Aesculapius「Chiron智者の杜21」加筆校正まだします、
終わったら第78話の続きor短編連載を予定しています、

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山岳点景:晩夏初秋

2014-09-24 23:14:02 | 写真:山岳点景
最高峰×百名山



山岳点景:晩夏初秋

上は富士山の紅葉、標高2,000m超えたあたりです。
森林限界超えるちょっと下、この辺りは花畑があります、



藤袴と薊、紫のコントラスト群落です、



上は花の径が5~10cmある富士薊、葉の棘も凄くて武器になりそうだなと、笑
下は里でもよく見るんですけど、下界より花も葉も大きいカンジでした。



なんて書くと藤の花は大きいのかなとか思いますけど。
下は秋の麒麟草、コレは普通のサイズでした。



上は富士山の秋の麒麟草ですけど、下は櫛形山で咲いていたものです、



櫛形山は初夏の菖蒲が有名な百名山、
秋は↓山鳥兜の薄紫が森あちこち群落をつくっています、



櫛形山は薄紫あわい風情ですけど、
富士山だと↓青紫が濃いツクバトリカブト(たぶん)が咲いていました。



で、秋と言えば茸シーズンですが、櫛形山は茸アレコレ生えていました。
富士山でも地元の方が茸狩りしていましたけど、櫛形山はどうも毒キノコが多い印象かなと。



これ↑はハナビラタケかと思われます、苔緑に映えて可愛かったです。

下は猛毒茸のハナホウキタケ=かなりヤバい毒茸、
見た目は珊瑚みたいに綺麗ですけど苦い×下痢などひき起こす危険度高なんだとか。



菌類あまり知らないので名前よく解らないんですけど、
櫛形山はとにかく茸は種類も豊富で少なくても10種は見ました、調べるともっと種別多いかもしれません。

9月の風景 3ブログトーナメント




Favonius「少年時譚42」+第78話「灯僥12」校了しました。
Aesculapius「Chiron智者の杜21」草稿UPしてあります、倍くらい加筆の予定です。
で、加筆しながら短編かナンカUPしようかなって考えています。雑談ぽいやつ日付変わるころUPの予定です、

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short scene talk ふたり暮しact.70―Aesculapius act.83

2014-09-24 21:58:01 | short scene talk
二人生活@帰省10蒲団
Aesculapius第5章act.20-21の幕間※すこし微妙にR18(露骨な表現皆無)



short scene talk ふたり暮しact.70―Aesculapius act.83

「っ…こうい(ああ帯解かれた脱がされる光一こんな照×萌×期待)」
「ん…雅樹さん、ずっとまってたんだから…して?(艶笑顔×眠)(ずっとまさきさんとしたかったんだもん)こんやはお休みまえだもん…ね?(ぬがしちゃえ)」
「あ、光一(照×どきどき)(ああ光一なんだかすごく色っぽい貌になってるあ)あ、っ(浴衣はだける)光一まって(とか言いつつ期待してる僕ったら照)」
「まさきさん…きれい、べっぴんだね?(嬉×艶笑顔×眠)(ほんと雅樹さんのヌードは別嬪だね押し倒しちゃえ)まさきさん、」
「あ、(光一そんな脱がされて抱きつかれるなんて僕ほんと妄想の現実化みたいで萌×照×期待ってあああ混乱してきた僕どうしよ)」
「まさきさん…えっちな貌になってる、きれい…きすして?(艶笑顔×眠2乗)(まさきさんぬーどでいろっぽいねそそられちゃう)」
「うん…光一、(照萌×艶笑顔)(ここまでされて応えないのは不甲斐無いな僕こそほんとはもう照×悶々期待)」
「ん、まさきさん…(笑顔×眠3乗)(まさきさんのきすうれしいねぜんぶぬがしちゃ…このまま…)」
「…光一、ほんとにいいの?(照萌×艶笑顔)って、あれ?(光一もしかして)」
「…ん…(墜落睡眠)」
「光一、眠っちゃったんだね?(笑顔×残念凹×萌2乗)(あんなに迫ってすぐ寝ちゃうなんて可愛いなほんとまだ子供なんだ萌×無限大)」
「ん…まさきさんだいすき…(無邪気笑顔×睡眠)」
「…寝てても好きって言ってくれるの、光一?(幸笑顔)(眠っていても大好きなんて嬉しいな萌幸×照)」
「…ん…(無邪気笑顔×睡眠)ん、」
「あ、(照×幸笑顔)(光一また首のトコおしゃぶりしてくれるんだ可愛いまだ赤ちゃんのままなんだね萌)」
「…佳い夢見てね、光一?(幸笑顔)(くっついて眠ってくれるの可愛いなでも僕これだと寝間着まったく直せないどうしよう照×困)」


気分転換に会話短篇UPしました、第5の20・21幕間より雅樹と光一@蒲団その後です、笑

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚219

2014-09-24 00:57:09 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚219

歯医者と呑んだ翌々日かつ花サンと夕飯した翌日の土曜、
昼寝して夕方に御曹司クンと横浜駅にて待ち合わせして、
で、御曹司クンの運転する車内にて質問一発ぶつけてみた、

「おまえさ、本気で花サンに愛されたらどうしたい?」

私にとって御曹司サンって幸運のキッカケくれた人ってことだよね?それなら本気になっちゃうのも仕方ないのかな。

そんなふうに花サンは言っていた、あれは本気になる可能性は80%以上ってことだろう?
それくらい想ってくれる女性は御曹司クンにとって稀有だ、それもホントのコト知っているなら尚更に。
だって御曹司クンは限りなくゲイよりなバイセクシャル=男に本気恋愛する男をマトモな恋愛相手にしようなんて女性は稀だろう?
そんな稀有を引き当てたとしたらドウスルのか、その問いかけに御曹司クンは言った、

「大事な人だっては想うよ、俺がバイだって知っても本気で恋愛してくれるなんて無いしさー…女では一番大事な人だけど、」

大事、そう想ってくれるダケでも今は進歩だろう?
きっとこういうのは「普通」のこと、だけど御曹司クンにとったら普通じゃない、
そういうコトほんとは本人が一番解かっている、だからトヤカク言うよりただ笑った、

「だったら大事にしなね、笑」

ほんと大事にしてくれたらいいなって思った、
このまま二人いわゆる相思相愛になってくれたら幸せかもしれない?
そんな期待があった、これまでの御曹司クンを考えると簡単にはいかないだろって解ってはいたけど。

で、そんな「簡単にはいかない」現実の端っこを御曹司クンは言った、

「おまえがソレ言うのってS通り越して残酷だって解ってくんないの?」

やっぱりそういう反応しちゃうんだ?
こんな反応されても何も応えられない、そのままを笑った。

「最初から意地悪Sだよって言ってるだろ、なんの期待してるワケ?笑」
「あーもー…解ってるクセにそういうこと言う、」

ため息吐きながらハンドル捌く貌はフロントガラスに映っていた、
また泣きそうな貌、だけど何かドッカ違うからナントナク見当つけて訊いてみた、

「おまえ、好きになりそうな男でも出来たんだろ?笑」

たぶんソウイウコトで呼びだしたんだろな?
なんて推定にフロントガラスの貌ふり向いて言った、

「っまだすきになったわけじゃねーもんっそうなりそうなシチュエーションが来そうなだけだしっ、拗」

この拗ね顔なんか久しぶりだな?笑
とか思わされた貌に懐かしくてつい笑いながら言ってやった、

「ドウでもいいから前見て運転しな?危ないだろが、笑」
「あーまたそーやって無関心なんだよなあもうっさー、ああほんともう、拗」

なんて応答されて可笑しかった、
こういう拗ねる反応やっぱり面白いのが本音で、だから素直に笑ってたら公園で停められた、

「30分ならここで話そうと思うけど…飯とかどうしたい?」

遠慮がちに訊いてくれる顔はフロントガラスで泣きそうだった、
で、今日のありのまま笑ってやった、

「朝ごはんしか食べてないんだよね、30分でイイんなら帰ってから食べるけどさ?笑」
「あ、何食べたい?」

速攻ふり向いて訊いてくれる、その貌が泣笑いになってた。
こんな貌されるとホントどうしていいか正直困る、でも軽くSってやった、

「おまえ今日の昼ってナニ食べた?笑」
「え、祖母が作ってくれた天麩羅と蕎麦だけど?」
「ふうん、蕎麦屋で呑みたかったんだけど、ねえ?笑」
「…またSってるだろソレってーでも蕎麦でイイもんね俺も蕎麦好きだしさー拗×笑」
「蕎麦アリなダイニングでもイイよ?笑」

ってカンジに決まって、夜営業アリな蕎麦〆ありの店に行って、
半個室でノンアルコール×冷酒を呑みはじめたら御曹司クンが口開いた。

「あのさ、連泊で出張に行くことになりそうでさー…二人で行くんだけど、」

ソレが「そうなりそうなシチュエーション」なんだな?
って空気に訊いてやった、

「で、お相手がイケメン君なんだろ、誰?笑」
「城戸さん(仮名)だよ、」

答え聴いてナントナク納得だった、坊ちゃんクンと城戸さんは顔タイプが似ているから。
どっちも野球少年系=日焼肌×二重目×太眉凛々しいタイプ、だから納得して笑った、

「ふうん、おまえアアいうタイプの顔が好みなんだね?笑」
「…まあ否定は出来ないけどさーもうホントにさー、拗」

なんて拗ねながら応えられて、で、言われた、

「だから俺おまえは本気だって自覚させられるんだよ、おまえアアいう顔と違うタイプじゃん?」

確かに自分は全く野球少年系じゃない、
なのにコンナ好かれているのは不思議だ、で、言ってやった、

「吊橋効果っぽいよね、おまえがゲイ寄りバイだって解かっても否定しないの嬉しくて、緊張と不安が消えたコト恋愛ごっちゃにしてるカンジ、笑」

結局はそういう事なんだろう?
そんな推定に御曹司クンはノンアルコールビール呷って言った、

「そういうこと言うとかってホントSだ、もうさー…そんなに俺がおまえ好きなことって否定したい?」

やっぱソウイウコトに戻っちゃうんだ?


昨日もバナー押して頂けたのでUPします、いつも押して下さる方へ感謝にて、笑

第78話「灯僥10」+Aesculapius「Chiron智者の杜20」校了しました、
Favonius「少年時譚42」加筆校正まだします、終わったらAesculapiusの続きor短編連載を予定しています、

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第78話 灯僥act.11-another,side story「陽はまた昇る」

2014-09-23 10:00:00 | 陽はまた昇るanother,side story
confidential 無言の真実



第78話 灯僥act.11-another,side story「陽はまた昇る」

アイガー Eiger 標高3,970m

ベルナーアルプスの一峰でスイスを代表する山。
北斜面は高さ1,800mの岩壁で、グランドジョラス、マッターホルンと共にアルプスの三大北壁と呼ばれている。
初登攀は1938年、ドイツのアンドレアス・ヘックマイアーとルートヴィッヒ・フェルク、オーストリアのハインリヒ・ハラー、フリッツ・カスパレクが達成。
初登攀で辿った7月21日~24日のルートは高低差1,781m、メンバーの名前から「ヘックマイアー・ルート」と命名された。

ビル名  警視庁本部庁舎
階数   地上18階
高さ   74.3m(最高部高さ83.5m)
竣工   1980年(昭和55年)

パソコンの検索結果2つ見つめた記憶と頭脳の計算は確信を告げた。
だって83.5は1,781の約4.69%で1割も無い、金曜日の日中は凍結も無かった。
それに竣工から30年以上なら壁に経年劣化の窪みもある、そこを素手だけで登降できる男が周太に問いかけた。

「そんなこと訊いて良いのか周太、金曜日は周太が本庁に居たって言ってるのと同じだよ?俺に話していいのか、守秘義務だろ?」

綺麗な低い声が訊いてくれる「守秘義務」は暴露も誘ってしまう。
それくらい自分も解かっている、だからこそ今夜に全て懸けるまま問いかけた。

「僕が話したら英二も話してくれるでしょ、だから…英二、どうして本庁の壁をスーツ姿でクライミングしていたの?」

英二はヘックマイアー・ルートを完登している、それも記録的な短時間だった。
クライミング歴1年でヘックマイアールートを踏破した男、そして素手の登攀技術はボルダリングで磨いている。
普通なら専用シューズを履くところを英二は硬い登山靴のまま登っていた、スピードも速くて警視庁山岳会長も褒めていた。
あれから半年経った今はもっと技術力は上がっているはず、アイガー北壁すら超える実力と度胸には庁舎の壁など問題にならない。
そして「目を逸らした一瞬で消える」ことも可能だ、途中の階の出入りが出来ることを英二ならきっと知っている。

そんな全てを問い質したい、それなのに君はなんてずるいんだろう?

「俺に尋問するために今夜は一緒にいてくれるんだ、周太?」

ほら訊き返すその貌その声さらした肌もなんて君はずるいんだろう、こんなに綺麗で傷だらけだなんて?

白皙なめらかな肌の肩あわい擦過傷はザイル痕、警察学校の山岳訓練で滑落した自分を背負ったザイルが食いこんだ。
濡れた髪かきあげた額の生え際は小さな刺し傷、巡回していた鋸尾根の雪崩まきこまれ転落したときヘルメット割れた痕。
左腕の皮膚かすかな引き攣れは火傷、訓練の奥多摩山中に落雷した樹の発火元に濡れたウィンドブレーカーごと腕突っこんだ。
そして上気した時だけ現れる頬の傷、積雪期富士の救助中に雪崩から飛んだ氷塊が切りつけた。

『最高峰の竜の爪痕だな、俺の御守だよ?』

そう君は笑ってくれた、そんな全ては自分の為でもある。
だって君が山岳救助隊になったのは肩のザイル痕、自分を救けてくれたことが始まりだ。

『山の警察官っているのかな?』

そう訊いてくれた君に山岳救助隊を教えてしまったのは自分、そして君は山の世界を選んだ。
この選択は山への憧憬も大きくて、そのために無数の傷だらけになりアイガーも完登した。
けれど山に生きる根本は自分が植えたのだと本当は自負している、だから止めたい。

だって英二、あなたが山で笑う瞳も顔も大好きだ、だから山だけに生きて?

「本庁の壁でクライミングなんて真面じゃないな、でも周太は見たのか?」

ほら訊いてくる声も瞳も哀しげに自嘲する、こんな貌するのは山じゃない場所の所為だ。
都心の真中コンクリートの壁なんか登るからこんな貌になってしまう、いまビジネスホテルの一室も君に狭すぎる。
もっと広い空の場所、白銀の山に駈けた笑顔あんなに眩かったのに陰翳ばかり昏い貌が哀しい、その痛みに尋ねた。

「英二、僕の見間違いだって言うの?」
「金曜は俺、本庁に居たよ、」

綺麗な低い声で答えてくれる顔は端整なまま美しい。
けれど頬ひとつ薄紅あわい傷うかんでくる、そして傷だらけの素肌を気づかせる。
スラックス履いた脚は隠されて、けれど向きあう上半身の素肌に傷きらめかせながら美しい微笑は続けた。

「山岳警備隊の研修会があったんだ、午後は警視庁のメンバーでミーティングだったよ。吉村先生も救急法の講師でいらしてた、」

きれいな低い声が答えてくれる、これは事実ありのままだろう。
そして「答え」なんて本当は言っていない、だって「居た」だけでクライミングの有無は無視している。
こうして事実のまま隠匿して嘘を吐く、この美しい謀略者を崩したくて尋ねた。

「後藤さんと光一もだよね、後藤さんは山岳救助の技能指導官で警視庁山岳会長、光一は山岳レンジャーの小隊長だし。他は誰がいたの?」
「原さんがいたよ、所轄の山岳救助隊の代表で、」

また事実を答えて綺麗な眼差し微笑んでくれる。
これも嘘じゃない、それでも隠そうとする核心を見つめ尋ねた。

「他には?…所轄も関わるから原さんがいたんでしょう、それなら所轄の上の人は?」

山に生きる君の笑顔が好き、だから全て話して秘密を止めて?

大雪のニュース画面のなか救助活動する君は眩しかった、だから尚更に君の秘密も危険も止めたいと願う。
雪けぶる青い登山ウェアの笑顔はどこまでも明るく綺麗だった、その変わらない笑顔に宝物だと思い知らされたから穢れないで?
あなたの笑顔が護れるのなら自分は孤独で構わない、この唯ひとつの想い綺麗なまま抱かせていてほしい、だからどうか全て話して?

「地域部長の蒔田さんもいらしたよ、周太のお父さんの同期だって言ってた、」

綺麗な低い声がカードひとつ捲ってみせる、その貌は優しい微笑に深い。
この言葉も事実だろう、そして「父の同期」であること曝け出した意図がある。

きっと英二のアリバイの鍵は「蒔田」だ?

「…蒔田さんと英二、親しいの?」

どうか本当のこと話してほしい、そして危険はもう止めて?
そんな願い見つめるソファは狭くて傷痕まばゆい白皙の肌は近い、まだ濡れた髪はランプに雫きらめかす。
林檎ひとつと向き合う上半身裸の肌から石鹸くゆらせて深い森の香ほろ苦い、この香に幸せな夜たちは懐かしい。
その記憶の最初はこの部屋だった、それから見つめ続ける唯ひとりは美しい笑顔で告げた。

「青梅署で何度かお会いしてるよ、奥多摩交番に勤めている時にお父さんと話すこともあったって言ってた、」

ほらまたカード1枚捲ってみせる、こうして核心から逸らすつもり?
そんな意図が見えてしまうから哀しい、そして示された過去に推測が時を遡る。

『奥多摩にも桜は咲くよ、』

そう教えてくれた笑顔は泣いていた、あのときも桜は頭上に満開だった。
あの花に泣いていた男の輪郭あざやかになる、やっぱり自分と話していたのは蒔田徹警視長だ?

―地域部長があのひとなんだ、それならお父さんのことも知って、

蒔田警視長は父を知っている、それなら父の死も探しているかもしれない。
あのとき笑顔は泣いていた、あの涙は真実だと自分は知っている、そして言葉に想ってしまう。
あのひとは父のこと本当に好きだった、そして後悔していた、そう辿らす納得から問いかけた。

「英二、なぜ蒔田さんの執務室からボルダリングする必要があったの?」

父の友人がいる部屋に何の目的があったのか?
そんなこと解かりきっている、きっと「あの男」観碕征治に関わる何かを英二は掴みに行った。
だって蒔田なら観碕も探れる立場にある、ノンキャリアから警察官僚に昇った男の実力ならそれくらい容易い。

そして、そんな男すら操るかもしれない笑顔が今この目の前に座っている。

「蒔田部長の部屋には行ったよ、でも何しに行ったと周太は思うんだ?」

また綺麗な低い声が訊き返す、その眼差し穏やかに深く美しい。
この瞳に見つめられたら誰も信じてしまうだろう、だから確信できるまま答えた。

「お手伝いとか英二はあるよね、そのメンバーなら、」

後藤副隊長、吉村医師、原巡査部長、国村警部補、そして蒔田警視長。
このメンバーでは英二が階級から年次まで一番下になる、それは雑務を引受けると同義だ。
雑務を引受けるなら行動の機会も多い、そうして生まれる「自由」に綺麗な低い声が笑いかけた。

「俺がいちばん下っ端だから?」
「コピー取るとか飲み物を買いにとか…動ける機会たくさんあるよね、英二は、」

想ったまま答えながら願ってしまう、もう正直に話してほしい。
解りきってしまう前にすべて話してほしい、だって話してくれることは信頼なのに?

―だって英二、僕も男なんだよ?自分でなんとかしたいプライドは僕にもあるんだ、

男なら自分の始末くらい自分でしたい、それが誇りだ。
だから父のこと追いかけるのも自分で遂げたい、そう願うのは高望みだろうか?
そんな想いと見つめる真中で父そっくりの眼差しは瞬いて、穏やかな低い声きれいに微笑んだ。

「コピー取りに蒔田さんの部屋に行ったよ、コーヒーも買いに出たけど。俺は普通に廊下を歩いてエレベータに乗ったよ、周太?」

微笑んで答えながら濡れた髪から雫こぼれる。
ダークブラウン艶やかな髪なまめかしい、白皙端整な貌は穏やかに笑っている。
どこまでも華やかで深い美貌は惹きこます、この笑顔は「あの男」観碕も崩すのだろうか?

こんなふう何も答えないで沈黙の嘘吐いて、そして置き去りのまま。

「英二、明日も訓練があるんでしょう?」

微笑んで問いかけた真中で切長い瞳ひとつ瞬かす。
きっと意外な言葉だったろう、そんな不意打ちの貌すぐ綺麗に笑った。

「あるよ、雪山の登攀訓練に行くんだ、」

雪山の君の笑顔、見たいな?

この本音そっと呑みこんで鼓動から軋みだす。
こんな時まで想ってしまうなんて自分は盲目だろう、そして結局は片想いだ。
だって結局この人は自分を信じてくれない、男として対等に認めてくれないから何ひとつ話してくれない。

―でも僕は好きなんだ、英二ばかり見つめて…どうして、

どうして自分はこんなに唯ひとりを想うのだろう?
この人は自分を信じていない、解かってくれない、そして一人危険に駈けていく。
そうして置き去りにされる哀痛なにひとつ解かってくれない、それなのに自分は今日すべて懸けて来てしまった。
だって置き去りにされる哀しみ誰より知っている、だから唯ひとり想う人に同じ苦痛を教えたくなくて黙秘と微笑んだ。

「もう寝ないと…僕も寝るね、」

見つめて微笑んで林檎そっと手を放す。
掴まれた右手するり解けて放される、もう動き妨げるものはない。
そんな想いごとソファ立ち上がりカーディガン脱いで、たたんで椅子に置くとベッドもぐりこんだ。

「…っ、」

ほら、ブランケットの温もりに涙もう零れる。
カットソーの袖ぎゅっと握りしめて瞳つむって、けれど涙あふれてシーツに融ける。
こんなふう自分は泣いてしまう、これは寂しさと悔しさと、それから護りたい唯ひとつの願いだ。

―英二、僕が今日どうして来たのか本当のこと話したら話してくれるの?

謹慎処分を破って今日ここに来てしまった、この事実を告げたら君は真実を話すだろうか?
今ここにいる覚悟を告げたなら君は自分を認めるだろうか、置き去りにされる痛み気づくだろうか。
そんな想いに涙ひとつ零れてシーツ青く染みてゆく、ただ静かに染まってゆく雫の時に物音たち聞えだす。

林檎を置く音、皿を重ねる音、ハンガーにタオル掛ける音。
低く高く、ちいさく大きく、音たち様々に身じろいで大好きな人の気配くゆらせる。
この空気ずっと感じていたい、そんな願いまた呟いた心ため息吐いて、気づいた物音に唇が言った。

「ちゃんとベッドでねたら?」

今ソファをサイドベッドに支度しようとしてたでしょ?
そんな物音に言葉つい出てしまった、だって自分だけベッドで眠るなんて申し訳ない。

『雪山の登攀訓練に行くんだ、』

そう教えてくれたから疲れ残させたくないと願ってしまう。
そして予定たち考えだす、たしか公園の電話で光一に言っていた。

『明日の朝7時には戻ります、』

明日7時に戻ってから訓練に出かけるのなら、たぶん現地一泊はするだろう。
それは雪中のビバークかもしれない、訓練というなら宿泊施設など使わないだろう?
そんな予定を想うとベッド独り占めなど出来ない、それ以上に寄りそいたい願いに足音が来た。

「入るよ、周太?」

綺麗な低い声が告げて衣擦れ近づく、ほらブランケット持ち上げられる。
背中まだ向けたままで貌は見えない、けれど隣に横たわった温もり抱きしめてこないから解かる。

―僕が怒ってると想ってるんだ、だから抱きしめないでいる、

自分がつっけんどんな言い方してしまった、だから距離すこし置いてくれている。
そんな気遣いが今は哀しい、だって今夜が明けたら再会は解らないのに?

「…ん、」

カットソーの袖で頬ぬぐい涙はらう。
かちり、スイッチの音にルームライト暗くなる、これなら泣顔も口許の痣も気づかれない。
だから今このベッドに向きあっても何も見つけられずに済む、その安堵ひとつ溜息くるり隣に向いた。

「…周太、こっち向いてくれるんだ?」

ほら薄闇に大好きな声が呼んでくれる、あわい灯りに笑ってくれる。
この笑顔に逢いたくて今日は来た、だから最後まで見つめていたい傍にいたい。
ほんとうは確かめて止めたかったこと多すぎて、けれど今ひと時の幸せに笑いかけた。

「ん…せっかくいっしょにいるから、ね、」

ああ僕ったらやっぱり話し方から照れてる。
こんなだから男として認めてもらえない、そんな含羞に綺麗な声ほころんだ。

「周太の顔見られるの俺も幸せだよ、周太、」

またそんな口説いてくれるんだから?

だけど今もう抱きしめてくれない、この距離感は遠慮だろうか。
そんなにも自分は隔てる態度してしまった、そんな想い哀しくなるけど安心もする。
だって今夜このままベッドのなか抱きしめられてしまったら?その想像ごと安堵と羞恥に微笑んだ。

「…あの、今日はお昼なに食べたの?」
「五目丼と中華そばだよ、あの店に行ってきたんだ、」

綺麗な低い声が答えてくれる、その言葉は日常が懐かしい。
あの店でいくど自分は食事したろう、その全てに温かだった俤に笑いかけた。

「ん…おやじさん元気だった?」
「元気だよ、周太のこと久しぶりに会いたいって言ってた、今度は一緒に行こうな周太?」

ほら他愛ない約束に笑いかけてくれる。
ふたりベッドひとつ横たわって向きあう暗がり、大好きな笑顔は日常ありふれた約束をくれる。
この約束を今の自分は頷けないと解っている、それでも今だから約束したい、どうかいつか叶えばいい。

「ん、一緒に行こうね英二…僕もおやじさんに逢いたいな、」

明日ここを出たら解らない、だから尚更に約束ひとつ今ほしい。
この大好きな人とあの笑顔に逢いに行く、その約束を今この時だから抱いていたい、杖にしたい。
そうして約束に再会はあるのだと希望を抱けたなら今ここで泣かないで済む、そんな願いごと笑いかけた。

「英二、公園の他はどこか行ったの?」
「花屋も行ったよ、周太が大好きなあの花屋、」

切長い瞳が微笑んで教えてくれる場所また日常だ。
だから気づけてしまう、こんなふうに自分を探し歩いてくれたのだろうか?
そんな相手だから嘘も秘密も何もかも赦してしまいたくなる、そう想える唯ひとり見つめて微笑んだ。

「ん…おはなやさん元気だった?」
「周太に逢いたいって言ってたよ、また二人で来て下さいって伝言だよ、周太?」
「ん、また一緒に行きたいな…ベンチに座って、ラーメン食べてお花屋さんに行って、」

微笑んで見つめて約束を紡ぎあう、そのどれも日常ありふれた場所でいる。
けれど今の自分から遠い場所、それでも他愛ない日常に今夜を満たして幸せでいたい。

いまは明日なんて遠くていい、この願いに他愛ない話で唯ひとり見つめさせていて?



(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚218

2014-09-23 00:48:01 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚218

歯医者と呑んだ翌々日かつ花サンと夕飯した翌日の土曜、
昼寝して起きた夕方に御曹司クンからメール→電話きた、

「おはよ…迎えに行っていい?俺が車出すから、」

で、考えてても仕方ないからトリアエズ返事した、

「横浜で待ち合せる?」

ってワケで待ち合せた横浜駅、何度めかの御曹司クン車が停まっていて、
助手席のドア開けて乗ってシートベルトしたら運転席が笑った、

「あーほんと来てくれたー…ありがと、」
「来ないって想ってた?笑」

たぶん不安がってたんだろな、
そんな貌に笑ったらエンジン掛けて御曹司クンは言った、

「当り前だろ、ずっとメールとか3回に1回くらいしか返事くれなかったしさー…ほんとに怒ってるの解かってるし、」

そんな頻度だったんだ?
なんて考えながら少し困った、だって頻度こんなふう言われること自体もう解かりやすい。

「おまえ回数わざわざカウントしてたわけ?笑」
「そりゃ気になるだろーそういうのってなんか、好かれてるのかとかバロメーターだし…」

応えてくる声がなんとなく元気ない、
その元気ない理由なんとなく解かるから言ってみた、

「おまえ昨夜のこと変な想像してるんだろ?笑」

たぶんソレで凹んでるんだろな?そう想ったまんま言ったら言われた、

「っ、変な想像とか言うな当たり前だろこんなのおまえらどうせ朝まで一緒だったんだろが」
「朝ごはん作ってあげたけどね、ソレがなに?笑」

ありのまま応えた隣、フロントガラス睨んだ横顔が泣きそうになった。

「…やっぱ朝帰りだったんだ、朝飯まで作って、さー…」
「いつもソウだからね、笑」

いつも泊ったら朝ごはんくらい作る、自分も食べたいから。
そんな習慣に笑ったらフロントガラスの貌が振り向いた。

「いつもそうって、そんなに田中さんよく泊ってるのかよ?」
「ここんとこ週末は多いよ、ちゃんと前見て運転しな?笑」

笑って応えた隣、素直に運転また始めて、
だけど泣きそうな貌のまま御曹司クンは言った、

「ソレって付合ってるのと同じじゃん、前からそうなのかよ?」
「ここんとこ頻度は高いね、おまえの所為でさ?笑」

ありのまま答えて笑った先、泣きそうな貌がこっち睨んだ。

「俺のせいって、俺が田中さんにしたことが原因だって言いたいのかよ?」
「ソレ以上かな、笑」

また笑って答えながら昨夜の会話を想い出して、
そんな隣の「?」って貌に言ってやった、

「おまえさ、本気で花サンに愛されたらどうしたい?」


なんだか眠いので短いですがUPします、バナー押して頂いたので、笑

第78話「灯僥10」+Aesculapius「Chiron智者の杜20」読み直したら校了です、
校正ほか終わったら第78話の続きor短編連載を予定しています、

この雑談or小説ほか面白かったらバナーorコメントお願いします、続けるかのバロメーターにもしてるので、笑

取り急ぎ、



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第78話 灯僥act.10-another,side story「陽はまた昇る」

2014-09-22 22:00:00 | 陽はまた昇るanother,side story
examination 命運の問い 



第78話 灯僥act.10-another,side story「陽はまた昇る」

ダッフルコートのポケットから林檎ひとつ、それから父の形見のナイフ。

ランプの灯に紅い実きらめく、この果物を父はよく剥いて食べさせてくれた。
医者いらずだよ?そう笑って切り分けてくれる笑顔は自分の世界を幸せにしてくれた、大好きだった。
そんな全て他愛ないありふれた日常で、けれど自分には宝物のまま抱きしめているから今日も持ってきた。
この林檎、父が剥いたように切り分けたようにしたら喜んでくれる?そんな思案に皿ふたつテーブルに置いて周太は微笑んだ。

「でも…うさぎさんリンゴは笑われちゃうかな?」

うさぎさんにしてあげるよ?
そう言って父は器用にかわいい切り方してくれた、あの長い指の手が懐かしい。
あの手がくれた幸せを自分も今夜は贈ってみたい、だけど今この手にそんなことは叶うだろうか?

だって自分は今日、人を撃ってしまったのに?

―殺さなくても傷つけたんだ、手も足も…でもお父さんのリンゴもごはんも僕は幸せだった、あのベンチも、

人を傷つけた手で作ったものは、幸せ?

そう考え始めてすぐ父の手仕事たち思いだす、そして父の想い辿られる。
いつも休日には料理して菓子も焼いていた父、庭のベンチも勉強机も本棚も父が手作りしてくれた。
なんでも作りだす器用で綺麗な父の手が大好きで今も誇らしい、けれど父の手は「援護射撃」の命令に従っていた、それでも好きだ。

『人を殺した手で人を養う飯作るなんて変だろ?だから家族にばれたくない、食ったモノ吐かれたら辛いからな…そういう秘密が自分で赦せない、』

父と同じ立場にいる人はそう言った、あの想いもう今は経験で解かる。
自分も同じ道を踏みこんだ、そして解かってしまう、きっと「殺した」と傷つけたの差は大きい。
命ひとつ消してしまった重みと痛みは苦しい、哀しい、だから人は苦痛から逃げたくて方法さまざまに選ぶ。

―だから勝山さんは自殺しようとしたんだ、お父さんも…だから伊達さんは手首を切って、生きてるって確かめて、

同じSAT狙撃員たちは皆、誇りと苦痛もろとも抱いている。
そんな矛盾を弱いという人もいるかもしれない、けれど矛盾を抱けなかったら人では無くなるだろう。
だって命が命を傷つける、そこに苦痛も哀しみも見つめられなかったらもう、命という存在すら食いつぶした空っぽだ。
だから命が命に泣いていい、矛盾を抱えて苦しんで泣けばいい、苦しいからこそ生きて笑うために手を動かすことはだから綺麗だ。

『この傷、一本に見えるが何度も切ってある。殺した現場を思い出して今ここが現実か解らなくなる、だから痛みで現実だって確めてほっとするんだ、』

そう伊達が告げたとおり「今」を確かめなかったら苦しい、辛い、不安で解らなくなる。
だから伊達は傷なんども抉っては痛覚で確かめていた、そんな方法は自裁の自殺と同じで苦しみ繰りかえすだけだ。
それなら父のように大切な人の日常で他愛ない幸せに手を動かすほうがずっと良い、そう解かるから今日、林檎ひとつ持ってきた。

「おとうさん、僕も英二のために手を動かすね…うさぎりんご英二もよろこぶかな?」

見つめる林檎に微笑んでナイフの刃を開く。
このアーミーナイフで父は山の時間を楽しませてくれた、あの遠い慕わしい時間が映りこむ。

『周、うさぎさんリンゴ食べたらね、山のうさぎさんが来てくれるかもしれないよ?』

ほら、優しい声と涼やかな眼差しが笑ってくれる。
あの笑顔と笑いあえた山の時間はすべて幸福だった、そう想い出させてくれた人が今傍にいる。
いま同じビジネスホテルの一室かすかな水音は響く、このシャワー浴びてる人は笑顔もうじき見せに来てくれる。
そんな湯上りのひと時に果物があったら嬉しいだろう?そのとき見せてくれる笑顔を想いながら林檎に刃をあてかけ呼ばれた。

「周太っ、なにしてるんだやめろ!」

なぜやめるの?

言われたこと驚いて訊こうとして、けれど手首がっちり掴まれる。
逞しい握力に掌開かれてナイフ離れてしまう、からりテーブル落ちた刃きらめいて遠退く。
どうしてこんなことするのだろう?ただ解らなくて驚いたまま白皙の肩は近づいて、水滴ひとつ頬ふれ抱きしめられた。

「なんで周太、なんで俺が離れた隙にするんだよ?やるんなら俺も一緒にやるから独りでやるなっ、」

りんご、そんなに一緒に剥きたかったのかな?

そんなこと考えながら驚いて途惑わされる、一体どうしたのだろう?
ただ解らないまま抱きしめられる素肌にカーディガン透かして熱い、額ふれるダークブラウンの髪から雫ふりかかる。
湯から上がってそのまま抱きしめてくれている、そんな腕も懐も肌まとわす石鹸の香は深い森の馥郁ゆらがせ、抱きこめ言った。

「お願いだ周太、俺の知らないところで死のうとかしないでよ?逝くなら俺も一緒に逝くから、だから独りでやるな周太お願いだから、」

ああ自分は死のうとしてるって想われたんだ?

そう言葉から納得して状況やっと解りだす、きっとナイフの刃に誤解させた。
いま考えていた記憶の言葉と手首の傷、あのままを自分に重ねて見せてしまったらしい?

「周太、なにがあっても俺は周太の傍にいくよ?俺には周太しかいない、もう解ってよ…光一だって代りにならないの認めて、もう諦めて周太?
もう俺から離れられないって諦めてよ、こんな勝手な俺だけど全部で護るから離れないで…勝手にどこかいかないで周太、なんでもするから傍にいて」

頬よせてくれる肌は石鹸の香と湯に濡れている。
本当にシャワー浴びてすぐ出て来てくれた、そんな人の想いには父のことも重なっている。
だから解ってしまう、この人は本当に自分が誰かを殺したのだと想っている、だから今夜を誘ってくれた。

きっと自分が殺人を犯し自殺するのだと心配している、だけど違う現実と誇りに微笑んで周太は見あげた。

「あの…えいじ?ぼく、りんごむこうってしただけなんだけど…ね?」

自分は死ぬために今ここにいるんじゃない、あなたを幸せにしたくて隣にいる。
そして真実を話してほしくて今夜一晩を懸けに来た、その願いに切長い瞳ひとつ瞬いた。

「え、?」
「あの、りんご、」

見あげ告げながら身じろいだ手に濡れた素肌ふれて熱い。
湯上りの白皙なめらかに薄紅あわく艶めかす、その素肌に幸福な夜たちの記憶が恥らってしまう。
こんなときこんなこと考えてしまう自分の本音なおさら恥ずかしい、そんな恋慕ひとつ紅い実ごと差出した。

「家からひとつ持ってきたんだ、コートのポケットに入れて…英二、寮生活だとりんご食べるとき無いでしょ?りんごは医者いらずだから、」

離れていても、何があっても、あなたのこと想っている。

こんな恋慕ひとつ信じていてほしい、解かっていてほしい、そして時折は想い出してくれたら嬉しい。
もう今夜が明けたら再会は解らなくなる、二度と逢えないかもしれない、それでも自分の恋愛は真実だと信じていてほしい。
そんな本音と現実を隠したまま微笑んだ林檎に切長い瞳ゆっくり瞬いて、きれいな笑顔は幸せに咲いた。

「ありがとう周太、周太のポケットに入ってたリンゴならすごく甘いだろな、」

ほら、またこんなこと言ってくれちゃうんだから?
こんなふうに顔見れば口説いてくれる、ただ素直に嬉しくて羞んだ。

「ふつうにあまいと思います…りんごむくから手、放して?」

右手を放してくれないと林檎が剥けない。
それなのに左手まで長い指の手重ねられて端整な唇が林檎ふれた。

かしり、さくっ

涼やかな音に果実くだけて甘い香ひろがる。
白皙の喉かすかに動く、林檎ひとかけ呑みこんで綺麗な唇が微笑んだ。

「甘いよ周太、ありがとな、」

綺麗な低い声が笑ってまた口つける。
ふわり芳香あまやかに香って薄紅の唇を濡らす、その口許が綺麗で見惚れてしまう。
そして意外ついてしまわれる笑顔が懐かしい、ただ幸せな想い笑いかけた。

「丸ごとかじっちゃうなんて英二、ちゃんと剥いてあげるのに?」
「このままで美味いよ、周太もほら、」

綺麗な笑顔が添えた掌ごと赤い実しめしてくれる。
その白い噛みあと眩しい、そこに口つけること気恥ずかしくて途惑ってしまう。
それに今大きく口を開けたら傷痕また開くかもしれない、そんな思案の途惑いに綺麗な低い声が笑った。

「それとも周太、口移しで食べさせてほしい?俺がかじってあげるから、」

かしり、

ひとくち齧った薄紅の唇そっと近づいてくれる。
この唇に贈られてきた記憶が慕わしい、いま素直に接吻けられたら幸せだろう?

―でもキスしたら口のなかの傷に気づかれる、ね、

殴られた傷痕きっと気づかれる、それが怖い。
だって今この傷を知られたら幸せな一夜すら消えるだろう、それが哀しい。
もう明日から再会も解らなくなる、だから今夜に全てを懸けたい願いに周太は口開いた。

「英二、僕は誰も死なせていないから」

このこと一番まず信じてほしい、自分は命を護った。

手も足も傷つけてしまった、傷害を遺してしまうかもしれない、それでも命は奪われない。
あのとき傷害か死しか選べなかった、どちらもリスクは高くて、それでも救えた誇りに切長い瞳が微笑んだ。

「周太、誰も死なせていないって、どういう意味で言ってくれてるんだ?」

今、言ってくれた言葉もういちど聴かせて?

そんなふう見つめてくれる眼差しに遠い懐かしい俤重なってしまう。
穏やかな真直ぐな深い瞳やっぱり似ている、この眼差しに血縁も約束もすべて融けこむ。
そして想いまた深くなる、どうしても自分は唯ひとり想ってしまう、この唯ひとつの笑顔に答えた。

「そのままの意味だよ、僕は誰ひとり死なせていないから…英二のおかげだよ?」

あなたのお蔭で自分は救えた、そして救われた。
傷害か殺人か、生か死か、この分岐点に迷わず選べたのは自分だけの力じゃない。
あなたが贈ってくれたファイルと逢わせてくれた一人の男、父の殺害犯の今を見せてくれたから傷害と生を選べた。

人は生きていたなら償える、罪人も幸せを生める、そう教えてくれた君だからどうか綺麗なまま笑っていて?

―だから危険なこともう止めてほしいんだ英二、そのために今夜は話して?

あなたがいるから自分は救われる、だから危険なこと止めてほしい。
自分のために傷ついてほしくない、綺麗な笑顔のまま生きていていほしい、それが相応しい人だから。
そして望むなら高潔な人生も名誉もすべて贈られる人でいる、そこに自分が寄りそえなくても幸福すべて受けとってほしい。

そう願っている、だから最期かもしれない今夜の願いに綺麗なひとは笑ってくれた。

「俺の救急法ファイル、実戦でも実践できたんだな、周太?」

実戦、実践、同じ音の言葉、けれど意味は違う。
この同音異義語ふたつ重ねた質問は、もしかして笑わせようとしてくれている?

「あの、えいじ?もしかしてその…それオヤジギャグとかいうやつなの?」

訊きながら困ってしまう、今、どんな反応したら良いの?
いま自分はいろんな覚悟を見つめていて、それなのに笑わせてくれるつもりだろうか。
そんな気遣いごとなんだか困ってしまう、けれど何か嬉しいようで途惑うまま綺麗な笑顔が答えた。

「前に黒木さんが言ったんだ、周太、こういうのは面白がってくれる?」

ほら、面白がらせようとしてくれた。
こんなふうに笑わせて肩の力抜いてくれる、その優しさに笑った。

「ふっ…ちょっと面白いかな、だって黒木さんがそんなこと言うなんて…それ冗談のつもりで言ったのかな、それとも真面目に言ったの?」
「黒木さんが言ったってこと自体が面白いだろ?土曜の大雪のとき言ったんだよ、七機に戻ってミーティングしてる時にさ、」

楽しそうに答えてくれる笑顔にまた嬉しくなる。
このまま今夜を他愛ない話で過ごせたら良いのに?そんな願いごと笑いかけた。

「そんなオフィシャルな場で言っちゃったの、黒木さん…光一にツッコまれちゃったんじゃない?」
「嬉しそうにツッコンだよ、実戦で実践なんてアッチの時も使えそうだねって絡んだから黒木さん、怒ったみたいな貌で真赤になってた、」

綺麗な笑顔の言葉に笑って、でも解らなくて立ち止まる。
この解らないも今日きちんと知りたくて素直に問いかけた。

「ん、あっちのとき…?」

実戦で実践なんて「あっちの時」とは何の時だろう?
こんな単純なことも解らない自分すこし恥ずかしい、けれど尋ねた相手は顔よせ耳打ちした。

「周太も知ってるだろ?夜のベッドで愛しあう時だよ、それこそ実戦で実践だろ?」

だから今こんなときまでえっちなこというなんて?

こんなこと恥ずかしい困ってしまう、だって今それどろころじゃないのに?
だけど本当は願ってしまっている本音が首すじ熱くする、だって今見つめる相手は半裸だ。
薄紅いろ上気した白皙の素肌は艶やかで濡れたダークブラウンの髪が誘惑する、そんなふう見ている自分こそえっちだ。

「そ、そんなことまたっ…えいじのえっちばかちかんっ、」

ああごめんなさい自分こそ今ほんとうはえっちです。

そう心で謝ってまた逆上せだす、きっと頬も額も赤い、もう真赤だろう。
こんなに反応過敏だなんて今日の現場で興奮しているのだろうか?そんな自分に冷静すこし戻ってくる。
今日あの現場から知った現実からこの笑顔を護りたい、そんな願いに大好きな笑顔は楽しげに言った。

「これくらい24歳の男なら普通の会話だよ、周太?ほんと相変わらず周太は初心だな、そういうとこ大好きだよ、」

またそんなこと言ってくれる、だから離れたくないと願うのに?
もう離れてしまう時が来る、それでも想い離れられない本音が微笑んだ。

「ほんとえいじばか…でも、ありがとう英二、」

ありがとう、本当に全て愛してる。

この人は嘘吐き、自分の幼馴染に恋して抱いてしまった裏切り者。
そう責めてしまう自分こそ本当は嘘つきだと解っている、だから尚更に愛してしまう。
こんな自分でも大好きだと笑ってくれる、救ってくれる、この唯ひとりの恋愛に伝えたい願い笑いかけた。

「ありがとう英二、英二のお蔭で僕ほんとにね…ありがとう、救けてくれて、」
「周太、俺こそありがとう、もう何度もファイル使ってくれたんだろ?」

綺麗な低い声が微笑んでくれる、この問いかけだって事実そのまま応えられない自分こそ嘘吐きだ。
こんなふうに嘘いくつも隔てられてしまう、それでも色褪せない恋慕は目の前の笑顔あざやかになる。
この笑顔ひとつ自分の幸せ、だから護りたい願いに問いかけの初め微笑んだ。

「ん…それで英二、聴きたいことがあるんだけど、」
「応急処置のことか?」

訊き返してくれる笑顔の切長い瞳が深くなる、きっと頭脳のファイル捲ってくれる。
けれど自分の質問はそうじゃない、その現実を林檎と見つめる相手に問いかけた。

「英二、なぜ金曜日は本庁でボルダリングしてたの?」

どうか君この質問に応えて、そして綺麗な笑顔のまま生きて?


(to be continued)

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山岳点景:秋空薄暮

2014-09-22 21:00:00 | 写真:山岳点景
夕空、河原より



山岳点景:秋空薄暮

昨日の日没@相模川河川敷より。
このポイントは結構キレイな空が撮れて好きです、笑

BEST23ブログトーナメント



Aesculapius「Chiron智者の杜20」加筆まで終わりました、雅樹と光一@眠れない夜話です。
第78話「灯僥10」読み直したら校了です、周太と英二@ビジネスホテルにて続篇。
読み直し終ったら短編かなんか掲載したいんですけど、眠いです、笑

雑談ぽいやつ昼にUPしました、
ソレや小説ほか面白かったらバナーorコメントお願いします、続けるかのバロメーターにもしてるので、笑

取り急ぎ、



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