昨日の続きです。 オオムラサキの一生をたどってみようと思いますが、その前に、羽化の撮影秘話を・・・・・
夕方頃には羽化しそうなさなぎがありましたので、職員室に持ち込みました。 ビデオカメラをセットして今か今かと待ちかまえましたが、いっこうにその気配がありません。 夜になり、仕方なくカメラを回したまま退室しました。 警備員に「撮影中ですので電気を消さないでください。」と張り紙までして。
テープは45分か60分か忘れましたが、長くは撮れません。 1時間半たって学校に来たけれど変化無し。 再びカメラをセットして帰りました。
次の朝見たときはもう蝶になっています。 さて、うまくカメラに収められたのでしょうか。
早送りで見てみるのに、いつまでたってもさなぎが写っているばかり。 いよいよテープが終わりに近づいた頃、わずかにさなぎが動いたような気がしました。 テープの表示はあと1分。
はやく、はやく・・・・
あっ
さなぎが大きく一揺れしました。
やった 出る!!
その瞬間・・・・・・・ 画面が切り替わって青一色に。 そして「テープがなくなりました」の文字が。
なんと、カメラは羽化の瞬間を写さずに時間切れとなってしまったのでした。
ねえ、見て、見て
それでもわたしは、自慢げにみんなに見せてまわりました。
ええ~っ
なにー、これ きたいしたのに~
もちろん、ブーイングの嵐
きのうの写真は次の年かその次の年かにようやく成功したものです。 それも日曜日、たまたま市内のPTA行事があって出勤しているときのことでした。
成虫になったオオムラサキは、自然界ではクヌギの樹液を飲みます。 飼育する場合は人口のえさを作ります。 ベースはなんとカルピス。 それに焼酎を少々。 この液を日なたにおいて発酵させます。 オオムラサキはこの匂いに惹かれて飲みに来るのはずなのですが、実際は、なかなか気づいてくれません。 そこでガーゼに浸したえさを、オオムラサキの口のそばまで持って行ってやります。 すると、匂いに気づいたオオムラサキは吻をのばして液を吸います。 人間が手に持っていてもいっこうに逃げません。
えさのそばに腐りかけのバナナやパイナップルを置くのも効果的でした。 果物が発酵して出る液や匂いが好きなようです。 そのうち自分でえさの所に集まるようになります。
一カ所に集まってきたオスとメスの蝶。 羽化してしばらくたつとこのようにパートナーを求めて集まるようになります。
先日の蛾の群れで思ったのですが、4,5匹ではなかなか気に入った相手を探すのは難しいのではないかと思います。 メスは毎年卵を産みましたが、無精卵のことが多く、産卵に成功したのは4年間で2匹だけでした。 もっとたくさん成虫が多ければ成功率は高まると思いますが、そのためにはたくさんの幼虫を育てなければならず、 大量のエノキの葉が必要です。 小さな小屋の中で鉢植えのエノキを並べただけでは4,5匹が精一杯でした。(途中で死んでいくのも多いのです)
写真を見てわかると思いますが、成虫の羽はボロボロです。 近くにいるオス(メス)を引きつけるためか、猛スピードで羽ばたきを繰り返し、網にぶつけてしまうからです。
成虫は8月には力尽きたように死んでいきます。 ボロボロの羽は、1年という短い時間を懸命に生きたあかしです。 それを見るたびに、この狭い小屋の中で死なせていくのをすまなく思ったものです。
ー 続くー