「いい文章があるよ」と教えてもらってて読みたかった文章がある。
さいたま新聞に載った、鴻上尚史氏が新成人に贈った文章だ。
なぜか該当号と思われる新聞が職員室の箱に見つからなかったがネットは便利だ。すぐ見つかった。
~ 「本物の孤独と出会おう」
成人、おめでとう。でも、大人とはなんでしょう。賢いあなたは、年を重ねることと、大人になることは何の関係もないと見抜いているんじゃないですか?
あなたの周りには、二十歳をとうに過ぎているのに、少しも大人じゃない人が何人もいるはずです。
大人と子供の違いはなんでしょう。二十歳を過ぎると、実にやっかいな問題にぶつかります。解決不可能な、どちらの結論を選んでも、間違っているんじゃないかと思えるような、正しい解決策が見えない問題です。
でも、人生の問題とはそういうものです。大学入試まで、子供は「問題には必ず正解がある」と思い込まされていますが、もともと、人生の問題には、完全に正しい解答なんてありません。
そういう時、子供は、自分で考えることをやめて、親や誰かのアドバイスや言いつけに従います。そうすれば楽ですし、責任も生まれません。子供とは、いつも誰かに手を引いてもらっている存在なのです。
そして、二十歳を過ぎてもそうしている人は、絶対に孤独になりません。
成人式でお酒を飲んで暴れている若者が、毎年話題になりますが、彼らは、本当の意味で一度も孤独になったことがない人達だと思います。
孤独には、「本物の孤独」と「偽物の孤独」とがあります。
一週間、誰とも話さなかったから孤独なのではありません。
誰とも話さなくても、メールをやりとりし、インターネットで会話していれば、それは孤独ではありません。
孤独とは、「一人で自分と向き合う」ことです。例えば、あなたがすてきなアドバイスを受けたり、役に立つ本を読んだりしても、一人でかみしめる時間がなければ、それはあなたのものにはなりません。今聞いた役に立つ情報を、右から左に伝えるだけでは、あなたのものになっていないのです。
二十歳を過ぎて出会う解決不可能な問題は、親に判断を任せない限り、自分で解決するしかありませんが、「偽物の孤独」しか経験してない人は、アドバイスしてくれる人を求めて、ウロウロさまようのです。
ただ「本物の孤独」の時間を持った人だけが、うんうんとうなりながら問題に取り組むことができるのです。
もし「本物の孤独」を経験したいと思ったら、あなたは、携帯電話の電源を切り、パソコンやテレビから離れて、あなただけの時間を持つ必要があります。その時間が長ければ長いほど、あなたは「本物の孤独」と出会い、自分自身と会話を始められるのです。
「本物の孤独」はしんどいですが、あなたに暗闇を進んでいく勇気をくれます。終わりが明確でない暗闇を一歩一歩、歩く時、あなたは初めて大人になるのです。(鴻上尚史) ~
「新成人に」というより、大人みんなが噛みしめるべき言葉かもしれない。
鴻上氏が言うように、生物年齢的には大人でも、全く大人になってない人はいる。
いっぽうで、高校生でもずいぶんと大人に感じる子もいる。
十数年も生きてくれば、「正解のある問題」ばかりでなく「人生の問題」にもぶつかっているからだろう。
そういう時、親や先生の指示に純粋に従ってきた子もいれば、悩んだり考えたりしながら自分で決めてきた子もいる。何にも従わず、かといって何も決めずに逃げてきたと言わざるをえない場合もあるかもしれない。
たとえば高校や大学を選ぶことは「人生の問題」に該当するだろう。そこに正解はないから。
A高校とB高校のどっちにいくのが正しいのかは誰にもわからない。
選んだことを、そしてそこから生まれた結果を、誰のせいでもなく自分の責任として引き受けられるようになったとき、大人への一歩を踏み出しているということだ。
それは二十歳になったから自然にうまれるものではない。
たとえば第一志望ではなく本校に入学する子もたくさんいるが、事実をしっかり受け止めて自分で歩こうとする子は、顔が大人びてくる。
高校受験や大学受験が人を成長させることが多い理由はここかな。
見守ってくれる親がいて、声をかけてくれる先生がいて、悩みをきいてくれる友もいて、でも目の前の問題に向かうのは自分しかいなくて、その結果を受け止められるのは自分しかいない。
自然と孤独と向き合わざるを得ない状況になる。
自分の能力やら才能やら性格やら可能性やらに、目を背けてばかりはいられなくなる。
「受験なんてものに束縛されたくない」などと言って、自分から目を背けている人には見えないものが見える。
「孤独になれ、自分の世界に入り込め」と次の学年だよりに書こうと思っていたが、間違ってなかった。
ふうっ、またいいこと書いちゃった。
ちょっと自分にも向き合ってみようかな … 、だめだ、何もない。
おぞましい欲望やら虚栄心やら楽していい結果を手に入れたいという思いで一杯だ。
なんとか封印して目先の仕事を一生懸命やってごまかしておこうっと。