学年だより「意志力3」
「やりたいこと探し」をしなくていいという話を繰り返してきた。
じゃあ、何をするべきなのか。やりたいことが見つかったとき、やりたいことだとわかったとき、もしくは何かをやりたいことにしようと思った時、それをやりきれる自分になるエクササイズだ。
人間の意志力を科学的に解明しようとしたチームが行った実験では、「利き手ではないほうの手で歯磨きをする」「汚い言葉はつかわない たとえば『うん』とは言わずに『はい』という」というトレーニングをした。
二週間のトレーニングだったが、衝動的欲求に従う脳から、立ち止まって考える脳に変化していく変化があきらかにみられたという。これは「やらない力の強化」というトレーニングだ。
さらに、毎日何かを継続する「やる力の強化」トレーニングもある。
「毎日母親に電話する」「毎日5分瞑想する」「毎日捨てるものを一つみつける」といった具体例があげられている。なんだ、そんなことでいいのか? と思いませんか。
意志力を鍛えるのは、実は小さな行動の積み重ねなのだ。
机に向かって勉強するという行動は、上記のトレーニング内容に比べれば、かなりグレードが高い。それを1年、2年と続けられる人は、自己コントロール筋がもりもりになってくるのだ。
これは単語を覚えた、公式を覚えたといった勉強そのものの成果以上にすごいことではないか。
毎日元気にあいさつすること、自分のものを整理しておくこと、眠くなっても我慢すること … 。
学校で求められている細かい行為は、それ自体がみんなの根本を育てるエクササイズになっていたとわかり、あらためて最近の科学の成果はすごいと思う。
「やらない力の強化」「やる力の強化」に加えて「自己監視の強化」というトレーニングがある。
~ ふだんはとくに注意を払っていないようなことについて、きちんと記録をつけてみる。何にお金を使ったか、何を食べたか、インターネットやテレビをどのくらい見ていたか、などでもいいでしょう。特別なテクノロジーなど必要ではありません 紙とエンピツで充分です。 ~
これも、何の勉強をどれくらいしたか、に置き換えてみればいい。
毎日机に向かって勉強をし、何をしたかを記録していくこと。何の変哲もない、何の工夫も目新しさもないこういう行為が、人間そのものを鍛えていく。
~ 私たちにはすべてをコントロールすることはできないけれど、自己コントロールを強化するには限界を伸ばすしかありません。筋肉と同じで、意志力も「使わなければ駄目になる」ようにできているのです。 … 頭のよいアスリートのように、限界を少しずつ超えながらも、ある程度のペースを守ってトレーニングを行うのが課題です。 (ケリー・マクゴニガル『スタンフォードの自分を変える教室』大和書房) ~