水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

反モラル力

2013年02月09日 | 日々のあれこれ

 『教師力ピラミッド』の堀先生が、新聞には載らなかったこんな発言があると、ブログに書かれている。

 ~ 記者:堀先生は教師力ピラミッドの各能力で言うと、どのようなタイプの教師ですか?
堀:そうですね。父性型指導力、友人型指導力、研究力、教務力は割とあるかもしれませんね。先見性・創造性も割とある方だと思います。
 記者:なるほど。逆に自信がないところは?
 堀:モラルですね。
 記者:……? ~

 これは、若い女性記者を前にしてちょいワルぶったわけではなく、本音のところでそう言ったのかなと思う。
 『教師力ピラミッド』には「夜更かしや徹夜、遊びすぎや深酒」はいけないと書いてあるし、「『学校より友情』といった考え方も、仕事には通用しません」ともあるが、類推の範囲だが堀先生は飲むときは相当飲まれるし、義理人情は何にもまして優先してしまう方と思うのだ。
 教師というより文学の人と時々感じてしまうことがあるのは、そのへんだろうか。
 人としてきちんと生活できることが、教師力のベースであることは論をまたないと思う一方で、品行方正、一点の曇りもない日々を過ごすことがマストだとも言えない部分もあるのではないか。

 最近読んだ『ガキ教室』というマンガはおもしろかった。
 主人公は24歳イケメンの教師。中学1年生の担任だ。
 大学を出たあと、ホストクラブの雇われ店長になるも、オーナーの借金を背負って失業してしまう。 
 前に晶の里親だった人が、民間人校長として運営する中学校に誘われて働くことになったのだが、最初の自己紹介で「今日から桃山中のみんなと勉強することになりました片桐晶です。年上のボインちゃんが好みの25歳です!」といい、生徒をどんびきさせる。
 授業が始まれば好き勝手に騒ぎ出す生徒に「オレは … ガキが大っ嫌いなんだよ!特にお前らみたいな中房!!」と叫んでしまう晶。
 いつまでたっても、あいさつは「オアザース!」だし、先輩教師にたしなめられるときの謝罪は「サーセン」だ。 ところがそんなありようが幸いしてか、クレーマー扱いされているヤーさん風の保護者と打ち解けたり、不登校の生徒とのコミュニケーションに成功したり、女子には人気だったりする。
 教師らしくない教師が、教師らしくないがゆえに教師らしさを発揮する物語は多々あるとはいえ、久しぶりに読み出したら止まらないマンガだ。
 そろそろ5巻(最終刊?)が出てるはずだから、はやく買わなきゃ。
 片桐晶の風貌、元ホストの若者らしく、イケメン、細身で、髪の毛も今風で、ラフなジャケットを身につけている。この不良性、つまりモラルあふるる教師とは真逆の存在感が、晶を魅力的にさせている。

 堀先生自身も、父性型指導力を発揮することが求められるキャラクターであるからこそ、ひげをはやしたクマのようなたたずまいを自覚的にとっているはずだ。
 ただし見た目を変えても、生徒は中身までかなりの程度見抜いてくる。
 どんな人生を送ってきたかは、やはりじわっと表面に出てしまうものだから、若いときにやんちゃしたとか、修羅場をくぐった経験なんていうのは、教師力ピラミッドのベースの、さらに見えない下部においていいのかもしれない。
 目の前のこの大人は何か得たいのしれないものを持ってるかもしれないと、生徒に思わせる力。
 そういう意味では「異形力」といってもいいような何かが、教師にはあっていい。
 それは父性型指導力の重要な構成要素になると思う。

 理想的、民主的、生徒第一主義だった金八先生が、髪型だけはあの長髪だったことは、彼の教師性の奥深さを象徴するものだったといえる。
 なるほど、自分に足りないのは、そこかな。品行方正すぎることかな。

コメント
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