ふつうにしてるだけできれいなのに、その存在だけで充分に多くの人の心をつかみ、満足を与えられる女優さんなのに、その位置には飽き足らないのか、ひたむきに演技する女優さんだ。
しばらく前、コクーンでの「盲導犬」というお芝居で、はじめて生の宮沢りえさんを観た。その女優力たるや、すさまじいものがあった。旧態依然とした脚本と手垢のついた演出に辟易としながら、いや、だからこそかな、彼女の圧倒的な存在感に心打たれた。
「紙の月」を観てみてあたためて思う。宮沢りえさんは、お芝居が好きで、大切でたまらないのだ。
そのお仕事「によって」何かの成果を残したいという感覚ではなく、ただただ与えられた役を心をこめて演じようとしているのにちがいない。
こういうお仕事ぶりを誠実という。
見習いたいと思う。
最初から最後までこんなに緊張感をもって目を話させない女優さんは、なかなかいない。
演技力という点では一分の隙も無い小林聡美さんは、すごみのあるお芝居をし、アイドルくささをもうみじんも感じさせない大島優子さんは、大女優への道を歩んでいると思うほどに、リアルな女性像を演じていた(男目線なのかな)。
それに比べて、男性陣が演じた役柄が、やや類型的だったのではないかとも思ったけど、ま、男ってわかりやすい生き物だから、ほどよいかな。
今年の邦画を代表する作品であることは間違いない。