「天使か … 」と口にしてしまいたくなる女性はいる。
天使のような女性を設定するとしたら、やはりビジュアルの美しさはほしい。
もちろん、見た目はそんな感じではないのに、ストーリーの展開とともに、天使に見えてくることもある。
彼女のふるまいが神すぎるときだ。
そこまで許してくれるのか、そこまでつくしてくれるのかと頭の下がる所行を目にしたとき。
「さよなら歌舞伎町」は、新宿歌舞伎町のラブホテルを拠点にした一日を描き、登場人物たちの人生ドラマがうかびあがる群像劇だ。
達者な役者さんばかりだったが、なかでもデリヘル嬢を演じた韓国の女優、イ・ウンウさんは神だった。
天使としか言いようがなかった。
ラブホの清掃職員役、南果歩さんは、指名手配から遁れる松重豊さんをかくまいながら、まもなく時効になる日を待っている。パートで彼を養いながら、絶対に外に出ないように毎日釘をさし、食べ物のゴミさえも調べられて複数が住んでいることを疑われないようにと気を配る。思えば、松重さんの天使が南果歩さんだ。
家出少女を演じた我妻三輪子さんが、ホスト風の男に連れられてそのホテルにやってくる。
一週間も風呂に入らず、ろくにものも食べてないのをひろってもらい、風俗店に売る目的で連れてこられたことにも気づかず、ひたすらその男に感謝し、自分の身の上を語る。そのあまりの純粋さに心うたれた男は、足を洗う決心をし、けじめをつけにいき、リンチを受けたあとホテルにもどってくる。我妻さんも天使だった。
警官役で、上司との不倫でホテルを訪れた河合青葉さんは、おしげもなくその魅力的な裸体をさらしてくれて天使だった。
前田敦子さんの印象は、インパクトのある他の女優さんに比べるとやや弱い。でもお芝居は上手になる一方だし、存在感も申し分ないから、ここはがっつり天使化して殻をやぶってみてほしいと思う。
日曜午後のテアトル新宿は、七割ぐらいの入りだろうか。せつなさあふれた佳品に、盛況が続いている。