水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

下克上受験(2)

2017年01月11日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「下克上受験(2)」


 世の中はやり直しがきかない、塾に通わせて中学受験させたいという桜井さんに、奥さんは反対した。娘はちゃんと勉強する子だから、私たちと違って高校には普通にいけると。
 ちがう、高校で終わりじゃない、大学を出て「エリート」になると、何かちがう世界が待っているようなんだと話す。娘には、彼女の「人生表」を書いて見せ、ここ数年がんばることで、全くちがった人生が開けてくると説明した。
 ではどこの塾に通わせたらいいのか。夏休み中にいくつかの塾に足を運んでみたが、返ってきたのは、がんばれば「そこそこの」進学はできるという話ばかりである。人生を変えたい、流れを変えたいという思いに答えてくれる塾はない。香織さんが受けた入塾テストも悲惨な結果だった。
 逆に、塾に通わずに親子でがんばってみるか?


 ~「香織……父さんの話をよく聞きなさい。 … 父さん、色々調べたんだ。
  塾で習う問題集や参考書は全部手に入る。父さんも5年生からやるよ。やり直すよ。
  佳織のためじゃない。実は父さんもやり直したいんだ。
  父さんちょっと油断してた。佳織はよくできる子だから油断してた。
  気が付くともうこんなに差がついていたなんて思わなかった。
  でも謝らない。その代わり一緒に追いかけようぜ。
  父さん自信満々だぜ。父さんもし勉強していたらさあ、頭よかったんじゃないかと思うんだ。
  父さんと佳織の脳ミソは同じだろ。だったら可能性も同じだよ。
  やってみるか佳織。こんな人生を目指してみるか?
  やるなら2学期の最初からだ。9月1日からだ。
   … もしやるなら、その日から佳織は楽しみがひとつだけになるんだ。
  友達と遊びに行く。テレビを観る。お出かけする。いつまでも寝る。
  これ全部なくなってひとつだけになるんだ。
  1年5カ月後の世界を夢見ること、それだけが楽しみになるんだ。
  もちろん父さんも同じだ。 … 日曜日もない。お休みなんてないよ。
  どんなに辛くても頑張るっていうんじゃない。
  わくわくどきどきした1年5カ月なんだ。」 ~


 娘の香織さんが小学校5年生の夏のことである。
 そして、どうせ目指すなら最高を目指そうと考えて目標にしたのは、桜蔭学園だった。
 一学年が240名。うち60名~70名が東大に進学する。中学入試の偏差値は70~75。わかっているとは思うが、北辰の70とは全く性質が異なる。男子で言えば、麻布、開成に匹敵するだろう。小学校の低学年のうちから、日能研やSAPIXに通い続けて入学する子が大半だ。
 受験のプロなら間違いなく「無謀」というこの目標に向かい、親子は取り組んでいく。

コメント
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